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第三章 新天地の領主は、新たな転移者!?

第21話 裏ボス撃退 隠者の本気

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 モヒートの刀を、グリフォンが受け止めた。【ディフレクト】……完全防御だ。

 グリフォンは攻撃をすると、確定でディフレクトが入る。つまり、一撃目は必ず防がれるが、硬直するのだ。自身の攻撃回数を一階減らすことになる。

 対策としては連続攻撃を放つか、パーティの誰かに攻撃してもらわなければならない。

「うらあああああ」

 今のナタリーナは、モヒートとフレンドで繋がっている。

 モヒートの背後から飛び上がり、ナタリーナがグリフォンの脳天へ剣を振り下ろした。斬るというより叩きつけるという感じで、グリフォンに攻撃を叩き込む。

 頭に物理+火炎ダメージを食らって、グリフォンがうつ伏せに倒れた。

「ナイスですわ、ナタリーナさん」

「モヒートもありがと」

 女子二人が、ハイタッチをする。

「それにしても、グリフォンが大ボスって、ユルくないか?」

「ミーも、懸念しているのデース。おや?」

 グリフォンの背中に、人間サイズの虫が止まっていた。丸まって、グリフォンの背中にしがみついている。

「もう一体ボスがいるぞ!」

「予想外デース! どうやらあの虫ヤローが、グリフォンやハーピーを操っていたみたいデース」

 先行したナタリーナが、魔煌剣で昆虫型魔物の脇腹に一撃を食らわせた。
 普通の魔物なら、これで吹っ飛んでいく。
 しかし、昆虫型は浮き上がりもしなかった。
 明らかに、規格外のモンスターである。

「どういうこった?」

「人数補正ですわ!」

 こちらの数とレベルが高すぎるから、ボスも強くなってしまっているらしい。いわゆる裏ボスになっちまってるってわけだな。

「どうやら、ミーのジャスティスが火を吹く番のようデース!」

 今度は、オレたちがやるか。

「イイェア! ゴートゥーヘル!」

 ジャックが、二丁拳銃の雨を降らせる。
 しかし、虫型人間には傷ひとつつかない。

「オーウ。トクサツヒーローじみた姿は、ダテではないようですネーッ!」

 結構ヤバい状況だというのに、ジャックは笑っていやがる。

「援護する!」

 オレは後ろに下がろうとした。

 が、ジャックが背中をオレにくっつけて押し返す。

「どういうつもりだ、ジャスティス? j火力はアンタの方が上だろ。手柄はいらないか?」 

「ノー。結構デース。キョウマが倒してくだサーイ」

「オレが倒せ、だって?」

「ミーは、ユーの底力が見たいデース」

 知っていたのか。まあ、いざってときに、切り札は取っておいたのだけどな。

「やるしかねえか。【バトルオーラ】!」

 オレは、武器である杖をしまう。スキルを発動すると、白い湯気のような光が全身を包む。【オーラ】は、【モンク】職が素手で戦うときに使う闘気のことである。

「さて、ゲンコツで殴り合おうか」

 オレは、ボスの懐に飛び込んでいく。
 相手も危険を察知してか、腕をカマ状にした。オレを切り刻むつもりか。

「キョウマ!」

「心配ない。援護は無用」

 オレは、腕を延ばしてカマを受け止めた。バトルオーラの影響で、オレにカマは当たっていない。それどころか、カマにヒビが入っていた。これがレベルマックスのバトルオーラの力だ。

 相手のヒザ蹴りを受け止め、回し蹴りを受け流し、軸足を蹴って体制を崩す。

 耐性が低くなったところに、顔面へパンチを見舞った。

 ナタリーナの剛拳でさえ微動だにしなかった虫型の裏ボスが、初めてよろめく。

「そうそう。アゴへいいのをもらうと、そうなるんだよ」

 コイツはおそらく、強敵と戦ったことがない。グリフォンに取り憑いていたのも、戦闘データを回収するため。つまり、エアプのようなもんだ。コイツはそうやって、宿主の戦闘力だけを抜き取って生きてきたのだろう。

 そんなデータ主義な戦闘法では、オレには勝てない。

「指示厨をナメるなよ」

 トドメに、オレは跳躍からの直線足刀蹴りを浴びせた。

 ヤツには絶対に解読できない、非効率な技である。

 だが、これがオレの最強技なんだから仕方ない。

 予想外の一撃を浴びて、昆虫型の裏ボスは砕け散った。
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