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第二章 領地開拓 新駅長はネコ獣人
第9話 スラムでチンピラに囲まれるも……
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メンディーニ領地内にあるこのハンメルの街は、鍛冶技術が発達している。その技術を活かして、鉄道による交易も盛んだ。
しかし、オレたちがサーベルタイガーを撃退したナマゾ地帯は、さすがのドワーフたちでも持て余す土地だったらしい。
ギルドで報告を終えた後は、念願の新装備だ。
「よお。鹿の人」
鍛冶屋のジャコモが、ナタリーナに声をかけてくる。通い詰めていたので、すっかり名前を覚えてしまった。この
そういえば、ナタリーナは認識阻害フードを被っているんだったっけ。
「ペペル、お前には【鹿の人】が、どう見える?」
「鹿の人でしょ? 有名ですよ」
なるほど。彼女にはナタリーナの姿がマッチョおじさんに見えるらしい。
「今日はキョウマと、獣人族を連れているのか?」
枝の人ってのは、オレのことだ。
「うん。新素材を持ってきた」
「おお、いい素材じゃねえか!」
ジャコモが【黒い牙】を手に、うなる。
「こいつは有機物なのに、金属質なんだ。これで、すげえ武器が作れる。メンディーニ王国の領土じゃあ、めったにお目にかかれないぜ」
「キョウマが取ってきた」
「すげえな。そちらのハーミットもすげえが、鹿の人の日頃の行いがいいからだろうな」
オレも、そう思う。
「数日待ってくれ。いい武器を作るよ」
前金をもらって、ジャコモが素材を受け取る。
「ナタは、そのまま使いな。新装備ができたら、そいつを潰して新武器の素材にするから」
「よろしく。あと、頼んでおいた例のものは?」
「できてるよ。外へ出な」
オレたちは、鍛冶屋の外にある庭まで案内された。
雨よけの屋根の下に、大量の金属が。
「レールだ!」
鉄道に使う線路が、ズラッと並んでいた。
他には、トロッコである。魔法で動き、線路での移動が可能だ。
「しかし、これを全部運ぶのか」
一人二人でやったら、大変だ。
「心配いりません。弟妹たちも元気になったので、手伝わせます」
ペペルが、手伝いを買って出た。
「ありがたい。な?」
「うん。ありがと」
ナタリーナは、片手で線路を担いでいる。
しかし、オレはペペルの手を借りてやっとだ。
ハンメルの街外れには、放棄された廃線がある。そこへ、第一号の線路を引いた。
「あ、ちょっとまってくれ。商業ギルドとか役所には、ちゃんと届けているのか?」
「話はつけてあるけど?」
「一応、確認させてくれ」
口約束の可能性もある。オレたちはひとまず、商業ギルドなどに話をしに向かった。
「この鹿の人が線路を引きたいって言っているのだが、許可はいただけるか?」
「構いません。破棄されたナマゾ行き線路といえど、復活すればまた需要が生まれましょう」
隣でナタリーナが、ドヤ顔をしている。「フフーン」と、クソムカつく顔で。
「ですが……」
ギルド職員が、口ごもる。
「鹿の方にも申し上げましたが、ちゃんと機能するかどうかは、保証しかねます」
「ナマゾって、そんなに危ない地域なのか?」
「いたるところにダンジョンがあって、強いモンスターは出る、気候の変化が激しい。かつての戦場跡なので、ゾンビも湧く。あまりオススメはできません」
他の国も、ナマゾエリアの開拓をあきらめたらしい。それだけ、大変な地帯だったのか。
「サーベルタイガーでさえ、ナマゾ地帯では小物に過ぎません」
『縄張りを追われて、あの廃駅にたむろしていた』、という報告があるらしい。
サーベルタイガーがザコかよ。
「それだけあそこの開拓は大変です。しかし土地は肥沃なので、農地としては優秀なんですよね」
人が住まなくなっただけに、土地が活気づいたのか。ちょっと皮肉めいているな。
「鹿の方なら、信頼できます。なにか助けが必要でしたら、いつでも申してください」
「ありがとう。助かる」
オレたちは、スラムへと戻っていく。
「ペペルたち家族には、オレたちの領地に住んでもらう。トロッコが通れるようになれば、街への行き来も楽になるはずだ」
「ありがとうございます。助かります」
「ただ、それまではスラムから通いになるぞ」
「構いませ……ん?」
スラムに向かう途中、ガラの悪い男女に囲まれてしまう。
これは、チンピラ撃退イベントか?
「鹿の人だな?」
「うむ」
「……ファンです! 握手してください!」
ファンを名乗るチンピラが、ナタリーナに手を差し伸べてきた。
しかし、オレたちがサーベルタイガーを撃退したナマゾ地帯は、さすがのドワーフたちでも持て余す土地だったらしい。
ギルドで報告を終えた後は、念願の新装備だ。
「よお。鹿の人」
鍛冶屋のジャコモが、ナタリーナに声をかけてくる。通い詰めていたので、すっかり名前を覚えてしまった。この
そういえば、ナタリーナは認識阻害フードを被っているんだったっけ。
「ペペル、お前には【鹿の人】が、どう見える?」
「鹿の人でしょ? 有名ですよ」
なるほど。彼女にはナタリーナの姿がマッチョおじさんに見えるらしい。
「今日はキョウマと、獣人族を連れているのか?」
枝の人ってのは、オレのことだ。
「うん。新素材を持ってきた」
「おお、いい素材じゃねえか!」
ジャコモが【黒い牙】を手に、うなる。
「こいつは有機物なのに、金属質なんだ。これで、すげえ武器が作れる。メンディーニ王国の領土じゃあ、めったにお目にかかれないぜ」
「キョウマが取ってきた」
「すげえな。そちらのハーミットもすげえが、鹿の人の日頃の行いがいいからだろうな」
オレも、そう思う。
「数日待ってくれ。いい武器を作るよ」
前金をもらって、ジャコモが素材を受け取る。
「ナタは、そのまま使いな。新装備ができたら、そいつを潰して新武器の素材にするから」
「よろしく。あと、頼んでおいた例のものは?」
「できてるよ。外へ出な」
オレたちは、鍛冶屋の外にある庭まで案内された。
雨よけの屋根の下に、大量の金属が。
「レールだ!」
鉄道に使う線路が、ズラッと並んでいた。
他には、トロッコである。魔法で動き、線路での移動が可能だ。
「しかし、これを全部運ぶのか」
一人二人でやったら、大変だ。
「心配いりません。弟妹たちも元気になったので、手伝わせます」
ペペルが、手伝いを買って出た。
「ありがたい。な?」
「うん。ありがと」
ナタリーナは、片手で線路を担いでいる。
しかし、オレはペペルの手を借りてやっとだ。
ハンメルの街外れには、放棄された廃線がある。そこへ、第一号の線路を引いた。
「あ、ちょっとまってくれ。商業ギルドとか役所には、ちゃんと届けているのか?」
「話はつけてあるけど?」
「一応、確認させてくれ」
口約束の可能性もある。オレたちはひとまず、商業ギルドなどに話をしに向かった。
「この鹿の人が線路を引きたいって言っているのだが、許可はいただけるか?」
「構いません。破棄されたナマゾ行き線路といえど、復活すればまた需要が生まれましょう」
隣でナタリーナが、ドヤ顔をしている。「フフーン」と、クソムカつく顔で。
「ですが……」
ギルド職員が、口ごもる。
「鹿の方にも申し上げましたが、ちゃんと機能するかどうかは、保証しかねます」
「ナマゾって、そんなに危ない地域なのか?」
「いたるところにダンジョンがあって、強いモンスターは出る、気候の変化が激しい。かつての戦場跡なので、ゾンビも湧く。あまりオススメはできません」
他の国も、ナマゾエリアの開拓をあきらめたらしい。それだけ、大変な地帯だったのか。
「サーベルタイガーでさえ、ナマゾ地帯では小物に過ぎません」
『縄張りを追われて、あの廃駅にたむろしていた』、という報告があるらしい。
サーベルタイガーがザコかよ。
「それだけあそこの開拓は大変です。しかし土地は肥沃なので、農地としては優秀なんですよね」
人が住まなくなっただけに、土地が活気づいたのか。ちょっと皮肉めいているな。
「鹿の方なら、信頼できます。なにか助けが必要でしたら、いつでも申してください」
「ありがとう。助かる」
オレたちは、スラムへと戻っていく。
「ペペルたち家族には、オレたちの領地に住んでもらう。トロッコが通れるようになれば、街への行き来も楽になるはずだ」
「ありがとうございます。助かります」
「ただ、それまではスラムから通いになるぞ」
「構いませ……ん?」
スラムに向かう途中、ガラの悪い男女に囲まれてしまう。
これは、チンピラ撃退イベントか?
「鹿の人だな?」
「うむ」
「……ファンです! 握手してください!」
ファンを名乗るチンピラが、ナタリーナに手を差し伸べてきた。
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