懐古主義オッサンと中二病JKは、無双しない

椎名 富比路

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第四章 王都で、相棒そっくりの女性と出会う

第53話 真・ヴリトラと真・ルイーゼ

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 ドクドクと、ヴリトラの腹から血液が流れ出す。その血は真っ黒で、人間のものとは違う。

「クニミツ、嫌な予感がする」
「オレもだよモモコ」

 やはり、予想は的中した。漆黒の血液が、三つ首の竜へと変貌を遂げたのだ。

「わが血を触媒とし、ヴリトラの真の姿を解放するのだ!」

 竜がさらに質量を増し、街を押し潰すほどの大きさとなった。

 三つ首の竜が、街を破壊する。

 人々がなすすべなく、ガレキの下敷きに。

 スケルトンたちが救助しなければ、多くの犠牲者が出ていただろう。

「ヤロウ!」

 オレはキャノン砲を敵の首部分へ放つ。

 相手の首を折るほどの衝撃があったはずだ。

「ムダだ。この状態になった我は、もはや誰にも止められぬ!」

 しかし、ヤツの侵攻を止めることはできない。

 ミミズのように這いずり回って、ヴリトラは建物をすり潰す。城の監視塔も叩き折った。

「ヤバいな。オレたちでは押さえきれんぞ」
「任せて」

 ピエラのスケルトン兵もヴリトラの静止に向かう。だが、ひ弱なスケルトン軍団にドラゴンなど押さえられるはずがない。

「このままでは数を減らすだけだ。避難民の救助にあたってくれ」
「でも、クニミツたちだけで、アイツは止められないわっ!」

 どうすべきか、思案しているときだ。

「その血を捧げよ、ドルリーの血族よ!」
「させるか。ごおおお!」

 一人の女騎士が、ヴリトラの進撃をシールドで食い止めた。ルイである。

「今こそ、ドラゴニックの真価を発揮する時!」

 ルイのこめかみから、竜の角が生えた。

「ドラゴニックが、人族に加担するか! 我らドラゴニックは本来、魔王のシモベとして仕えてこそ名誉があるものを!」
「今更何を。人とドラゴンのいさかいなど、とうに議題にすらならん!」
「人の文化に触れて腑抜けた、愚か者が! 今こそ魔王への忠誠を誓い、存在理由をわからせてくれよう!」

 三つ首の一つが、ルイに激しく身体を叩きつける。

 自分の何倍も体格差のある首を、ルイはヒザ蹴りだけでへし折った。

 ヴリトラの首がひとつ、消滅する。

「なんと!? 人と暮らすことを選び牙をなくしたかと思えば!?」
「これが、誰かを守るということ!」

 だが、ルイもヒザをつく。脂汗をかいていた。

「脚が折れてるんだ!」

 回復魔法すら、追いついていない。

「ヤバい。助けに行くぞ!」

 銃で牽制しつつ、オレたちはルイの元へ。

「小賢しい!」

 ヴリトラが、オレたちに向けて首を振り下ろす。

「もう一本、首をもらう!」

 オレは、グレートソードを構えた。

「モモコ、頼む!」

 特大のキャノン砲を、オレはモモコに投げつける。

 モモコがキャッチして、オレの射撃武器を構えた。

「うらああ!」

 跳躍したオレは、モンスターの首に剣を叩き込む。

「ムダよ! 人間ごときに我が首をはね飛ばすことはできぬ!」

 人間の腕力なら、そうかもしれないが。

「シュート」

 モモコが至近距離で、オレの剣に発砲した。

 グレートソードの重みと、銃の反動が重なる。

 ヴリトラの首が、地面に叩きつけられた。

 剣がヴリトラの体内を滑り、首を吹っ飛ばす。

 オレの顔も、モンスターの血と銃のススとでグチャグチャになったが。

「よくも! だが、このブレスには敵うまい!」

 最後の一本が、ドルリー城に向けて光熱のブレスを吐いた。

 城壁まで登って、ルイがシールドで受け止める。

「闇の炎を打ち消す!」

 モモコが、自前のレーザー銃を放ってブレスを押し返す。

「ボクも手伝うわ!」

 ピエラが氷の光線を、モンスターの口めがけて撃ち込んだ。

「なぜだ!? たかが人間が、ドラゴンの攻撃を弾き返すとは!」
「人間をやめちまっているからな」

 オレは、ブリトラの発生源である騎士の肉体に、キャノン砲を撃ち込む。
 三つの首に邪魔をされて仕留められなかったが、今はガラ空きだ。

 キャノンから発せられたファイアーボールによって、ヴリトラが大爆発を起こす。

「おごおおお!」

 本体を爆破されて、ヴリトラも消えていった。
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