懐古主義オッサンと中二病JKは、無双しない

椎名 富比路

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第三章 領土拡大と、崖の下の難関ダンジョン

第41話 妻との初夜

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 役所に突き出しても、貴族はなおも因縁をつけてきた。

「自分は犯人を逮捕するため、潜入捜査をしていたのだ」と。

 だが、監禁されていた人たちが、ヤンキー貴族が率先して被害を出していたと証言する。

「こんなヤツらの言葉と、貴族であるオレたちの言葉と、どっちを信じるんだよ!?」
「被害者の言葉に決まっているでしょう!」

 とんでもない大物が、取り調べの場に現れた。

 アンファンの領主、ドリスさん夫妻である。

「ド、ドリス様!」

 貴族でさえ頭の上がらない人のようで、その場全員がひざまずき、頭を垂れる。

「すごい人だったんですね、ドリスさんって」
「いえ。夫が王の弟というだけです」

 夫妻は王族と関係が深く、ワントープより力関係は上だという。

 今回の件で、ワントープの領主はドリスさんに説教を食らっていた。家族に関して、監督が行き届いていないと。

「あなたがたに落ち度がなくても、悪い心というのは環境によって芽生えます。悪事のほうが儲かるという感情は、なかなかのことでは抜けません」

 ヤンキー貴族たちは、それぞれ別の場所へ流刑に。

 ワントープの領主は責任を取らされ、領地の半分を民間業者に譲渡させた。事実上の没落である。

 漁業組合の不当な借金も、ドリスさんはチャラにした。

「えげつないな」
「どのみち、貴族は民間企業の隆盛で衰退するのです。予定が早まったに過ぎません」

 それだけ、民間の技術は進んでいるわけか。

「クニミツさんは、王都へ行きませんか?」

 王都か。それは面白そうだな。

「できれば、クニミツさんに王都へ向かってほしいのです。いよいよ魔王復活の兆しが本格的になってまいりまして」
「大変だな。王様も」
「はい。お願いできませんでしょうか?」
「わかった。やってみる」

 オレたちで王都を守れるかわからない。

 準備してから、向かうとしよう。

 領地に帰ってきた。

「おかえりモジャ!」
「ただいま、ウニボー。すぐにメシの支度をする」

 ウニボーたち仲間に食事を作って、振る舞う。久しぶりのような気分だ。

 食後、風呂に入ってゆっくりする。

「ん、モモコ?」

 バスタオル一枚のモモコが、入ってきた。

「お前、さっき入ったばかりじゃないか」
「もういっぺん、入ってみたくなった」


 モモコが、バスタオルを開く。
 その下は、前に見せてくれた布面積の少ないビキニである。


「ちゃんと見せていなかったから、バッチリ見て欲しい」
「お、ちょ、待ってくれ」

 オレは、身体をよじって後退りをする。

「クニミツ、逃げないで」
「逃げますよっ」
「隠さなくてもわかってる。クニミツがどうなっているか」

 こわばった身体をリラックスさせ、オレはモモコを湯へ招き入れた。

 モモコも、なんだか覚悟を決めたような顔になっている。ため息ばかり漏らす。

「あの、クニミツ?」
「なんだ?」
「もう危ない戦い方は、しないでほしい」
「わかってる」

 モモコが、握ってきた。どことは言わないが。

「いくら頑丈な身体を手に入れたっていっても、人間族のままだし」
「うん」
「ヤバい作戦を思いついたら、ひとまず相談だけでもしてほしい」
「わかった。そうするよ」

 オレは、されるがままになる。

「こっち見て」
「ムリだ。お前こそ下ばっかり見るな」
「さっきより固くなってきたね」
「よせ。もういいから」
「よくない」

 強めの語気を孕ませて、モモコはオレに抱きついてきた。

「私、クニミツがいなくなるんじゃないかって思ったら、身体が熱くなってきて。自分で想像していた以上に、クニミツが大切になってたんだなって」
「うん。心配させて悪かった」
「だから、今晩、お願い」
「お前、まだ一〇代だろ?」
「女神様に年齢だけ上げてもらっているから、平気」

 風呂から上がって、同じベッドに。

 しゅるしゅる、と、ヒモが解ける音がする。

 お互い裸は見慣れているはずなのに、その日はずっと恥ずかしがっていた。
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