懐古主義オッサンと中二病JKは、無双しない

椎名 富比路

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第三章 領土拡大と、崖の下の難関ダンジョン

第37話 デートでは、ビルドの相談を

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「クニミツどう? 似合ってる?」

 目をそらしつつ、モモコが尋ねてくる。

「いやあ、いいんじゃないか? オレの提案を蹴ってまで選んだ意味はあると思う」

 なるべく、褒めてみた。でないと、いたたまれなくて。

 モモコはオレとし線を合わせず、身体を腕で隠し続けている。 

「めっちゃ恥ずい」

 だから言ったのに。

「クニミツ以外にも、人がいるんだもん」

 ワントープの海岸は割と賑わっていて、多くの人たちが遊んでいた。

「パレオつけたままでいい?」
「いいよ。ラッシュガード的なものも、着とけば?」
「なかった」
「じゃあ、待ってろ」

 オレは、海の家の衣類コーナーへ。濡れてもいい素材のGパンとTシャツを買って、モモコに着せた。

「ごめん。帰ったら……」

 Tシャツを着たモモコが、オレにささやきかける。

「……クニミツだけに見せたげる」

 心臓がバクン、と跳ね上がった。

「お、お前、破壊力ありすぎだろ!」
「そんなに悦んでもらえるって思ってなかったし! 夫婦なんだから」

 とにかく、気持ちを落ち着かせよう。

「屋台で魚介を焼いてるぞ。食おう」
「いいねー。私、ラムネ欲しい」

 オレたちはラムネ二本と、エビを購入した。瓶は、ポーションのモノを代用しているのか。

「いただきます」

 エビの皮をむいて、モモコはわっしわっしとかぶりつく。

「熱いが、平気か?」
「大丈夫。想像以上においしい」

 あとは焼きそばを頼んで、テーブルに座る。

 テーブルに、シーフードの塩焼きそばが置かれた。

「言葉にならない。塩焼きそばって、シーフードが入ると化けるみたい」

 衝撃的なうまさに、モモコの顔もほころぶ。

「クニミツとちゃんとデートしたのって、これが初めてじゃない?」
「かもしれんなぁ。オレたちらしいといえば、らしいが」

 よく考えると、ずっと冒険をしていた気がする。

「すまんな。せっかくのデートなのに焼きそばとか」

 もっとシャレた店のほうが、よかっただろうに。

「こういうのがいい。海が見えて、おいしいラムネと焼きそばがあって、適度に涼しい。案外いい感じ」

 モモコはデートの形式に、あまりこだわっていないようだ。

「二人でいたら、まあいいんじゃない?」
「そうだな。焼きそばもうまいし」
「ねえ」

 そこで、会話が途切れる。

「デートって、何を話せばいいんだ?」

 オレたちはどっちも、砂浜でビーチバレーなんかやるような陽キャではない。かといって、砂でお城を作るようなタイプでもなかった。アウトドアとは、無縁なのである。

 モモコも、日陰から出ようとしていない。

「さあ。ビルドの相談でもする?」

 ゲーム脳なオレたちの会話は、結局そっち方面へ進んだ。

 このところ領地拡大やワントープのダンジョンで手こずり、バタバタしていた。おかげで、スキル振りをサボっていたのである。

 冒険者用の端末を出して、スキルの項目へ移動した。

「色々アンロックされてるな。あとはポイントを振るだけか」

 レベルアップの際に手に入れたポイントを振ると、スキルが使えるようになる。原理はわからないが、「自分の経験値をスキルに注ぐ」と思うことにした。

 高いレベルに位置するスキルに、一つだけポイントを振るだけでもいい。低レベルでアンロックされているスキルも、ポイントを大量に振ると化けたりする。

「消去法からいこう。まず、【オーラ・スマッシュ】には振らないぜ」
「同じく」

 剣から衝撃波を出す技だ。たしかに、強力な技である。ほとんどの近接系冒険者が、ビルドしているそうである。とはいえ、これがあってはなんのために銃を開発したかわからなくなる。

「その後は、どうするか」

 固くするか、攻撃力を上げていく方向性へ向かうか。

 スキルの振り直しは、いつでもできる。

 エンジョイ勢としては、いろいろ試しながら、どうやって構築していくか考えてもいい。

 とはいえ、ガチ攻略用のビルドも視野に入れないと。こちらが足を引っ張っては、仲間のためにならない。

「盾役はルイがいるから、そこまで気にしなくてもいいかな」
「リジェネ系のスキルが常設されているから、自分自身の守りはそこまできにしなくても」 
「よし。【カバー】だけは取る。仲間が増えたからな。カバー役がルイだけでは、負担がかかりすぎる」

 カバーに、スキルポイントを振った。

 モモコは攻撃とカウンター系スキル、あとはスピード系に振る。

「やられる前にやる」「仲間に被害が及ぶ前に敵を倒す」スタイルを確立していく。
「続いて、銃スキルだが」

 オレは武器を、徐々にキャノン系へと移行しつつあった。オレが鈍足な分、範囲攻撃を持ちたい。

「だったら私は、レーザー系を取ろうかな」
「ピエラのスキルを見て、欲しくなったろ?」
「うん。実は」

 包み隠さずに、モモコは言う。

 二丁拳銃にして、片方はレーザー系の装備にするかと思案している。

「ごちそうさまでした。どうしよう、泳ぐ? それとも日焼けする?」
「ビルドも決まったことだし、この辺でダンジョンでも」

 オレたちが立ち上がった時だ。

「やめてください!」

 向こうの方で、女性の声がする。

 ふんわりしたタイプの金髪縦ロールの女性が、ヤンキー風の男たちに囲まれていた。
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