懐古主義オッサンと中二病JKは、無双しない

椎名　富比路

文字の大きさ

大中小

19 / 62

第二章　銃と仲間をゲット！　なのに相方が聖剣・魔剣に夢中で草

第19話　ドラゴンゾンビ　VS　聖銃

しおりを挟む

「むう、ネクロマンサーは闇属性の私にとって憧れの存在だが、ああはなりたくないな！」
「憧れるのか？」
「死に魅入られるのは、闇に生きるものの必然」

　それは、人の死にあまり関わってこなかったからだろうな。

「お前、身内の誰かが死んだことないだろ？」
「なぜわかるの？」
「オレはガキの頃に、父方の祖父母が死んだからな。死への憧れなんてないんだ」

　家族が悲しむ姿を見たら、死のうとはあまり考えない。

「攻撃がくるモジャ！」

　ウニボーの声で、オレは我に返った。

　ドラゴンの首が伸びて、酸のブレスを吐く。

「やべえ逃げろ！」

　オレたちは、尖った岩に隠れた。

　岩が、アイスのように溶け出す。

　ヤバい。あんなブレスをまともに食らったら。

「わたしが盾になる！」
「よせ。死ぬぞ！」

　ルイがいくら神の加護を受けているといっても、シールドごと溶かしてしまうだろう。

「待つモジャ。あのドラゴンゾンビとネクロマンサーは、命が繋がってるモジャ！」

　どっちかをやっつければ、両方死ぬってわけか。

「モモコ、どうする？」
「クニミツはドラゴンを引き付けて。私はネクロを撃つ」
「別にやっつけても？」
「構わない！」

　オレとモモコが、二手に分かれる。

「ルイは、モモコの盾役に回ってくれ！」
「承知！　【マジックフィールド】！」

　酸のブレス対策か、ルイがドーム状の魔法障壁を作り出した。モモコごと、ドームで包む。

　ネクロが、どちらを狙うか見定めている。直接ネクロに弾を撃ち込んでいるモモコか、ドラゴンを撃ち抜こうとしているオレか。

　ドラゴンのシッポが、モモコを殴り殺そうとしている。

「させるか！　【セイントファイア】！」

　オレは根本から、ドラゴンのシッポを焼き尽くした。

　ようやくネクロも、オレたちが二手に分かれたわけ「ではない」と気づいたようだな。

　まずモモコに、敵のヘイトを向けさせる。

　相手がモモコへ攻撃をしてきたときに、オレのほうが裏へ回ってカウンターを仕掛けるのだ。

「背中ががら空きだぜ、お嬢ちゃん！」

　オレは、セイントファイアを、ネクロの背中へと撃ち込む。

　ドラゴンをオレの方へ向けさせて、酸ブレスを吐く。

　だが、それはゲロのように垂れるだけ。

「チェックメイト」

　ドラゴンゾンビの背中を伝って接敵したモモコが、ネクロ心臓に例の短剣を突き刺した。最後に、眉間を撃ち抜く。

　ネクロの身体から、黒い瘴気が溢れ出す。アンデッドの割にみずみずしかった肉体が、スケルトンよりもか細くなっていった。最後は針のようにしぼんで、灰となる。

「間一髪だったな」
「ドラゴンゾンビが、なにかを吐き出したモジャ！」

　黒く光るオーブが、ドラゴンゾンビのノドからこぼれ落ちる。手のひらサイズの小ささだが、放つ瘴気がすさまじい。

「この世界を形成しているオーブだモジャ。これを壊したら、この近くに邪悪なダンジョンはできないモジャ」
「これが、少年を苦しめていた物体の正体か？」

　オレが聞くと、ウニボーがうなずいた。

「そうモジャ！　踏み潰すモジャ！」
「よし。くそったれ！」

　勢いよく、オレはオーブを踏みつける。

　オーブが破壊され、大量のアイテムが溢れ出す。

　あれだけ大きかったドラゴンゾンビの巨体が、土へと還る。

「おお、聖剣と腕輪だ」
「こっちは魔剣！　ちゃんとロングソード！　あとはアクセ！　装備チェックがはかどる！」

　他にもルイ用の指輪や盾まで。

「あとは、少年の無事を確認するだけだな？」
「まだモジャ！　洞窟が崩れるモジャ！　脱出するモジャ！」

　そうだった。このエリアを牛耳る、世界の裏側が崩壊してしまう。

「でも出口って？」

　来た道が、崩れてなくなっているのだが？

「大丈夫モジャ！　オイラがポータルを作れるモジャ！」

　緑色の円が、地面に現れる。

「飛び込むモジャーッ！」

　オレたちは、円の中へ飛び込んだ。

しおりを挟む