懐古主義オッサンと中二病JKは、無双しない

椎名 富比路

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第一章 無双しないとダメ?

第4話 サイバーパンク世界に飛べない理由

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 オレたちがチート所有を拒否すると、女神はなぜかオレたちを気に入った。チート未満の特殊技能をオレたちに付与してくれるという。

「いいのか?」
「いいぜ。『異世界に行ける』と言われたヤツらはたいてい、やれチートだの無双だのと喚き散らすからな。その点お前らは、ファンタジー世界がチートでめちゃくちゃになってしまう、って勝手がわかってる」
「そういう意味で言ったんんじゃ、ないんだがな」

 でも、そうかも。ネット小説で履修はしているかな。

「じゃあ、死ににくい頑丈な体が欲しい」

 不死身とは言わないが、モモコと一緒に旅をするなら、彼女を守れるだけの肉体がアレばいいかな。

「何ラウンドでもできる、若さの体力は?」
「……いいね」

 モモコが「うわ」とドン引きした。

「いいじゃねえか。お前を相手にするなんて言ってねえんだから」
「ひくわー」

 なおもモモコは、後ずさる。

 妙な誤解を招いてしまったようだ。

「でも、ボーナスには至らない。パラディンを目指しな。体力自然回復機能があるから」

 頑丈な肉体の他に、体力が自動的に回復する能力を手に入るらしい。

 別の案を考えよう。

「モモコ、お前さんは?」
「足を治して欲しい」
「もうやった。ソレ以外で頼む」

 見ると、足の手術痕がなくなっているではないか。

「ありがと。これだけでいいけどね」
「ヤダっつっても、付与するから覚悟しとけ」
「オッサンが体力なら、私は魔力自然回復をもらおうかな」
「ダークナイトを目指しな。その機能がつくぜ。あと、女の子にはこれを無料で提供することにしてる」

 ちょいちょい、と女神がモモコを手招きする。

「マジ?」
「マジマジ。いいから受け取っておけ」

 何をもらったかは知らないが、モモコは赤面しながら戻ってきた。 

「じゃあ二人には、異世界に言って楽しんでもらう。お別れの前に、大事なことを言うぜ」

 なんだ? 注意事項でもあるのだろうか。

「お前らさっき、『サイバーパンクな世界に行きたい』がどうとか言っていたな?」
「ああ」
「結論から言う。ムリだ」

 強調するかのように、女神はオレたちに釘を刺す。

「正確には、行けなくて正解だ。そんな世界に、お前らは飛ばせない。どの世界の女神でもな」
「理由は?」
「チートなんかで解決できない問題が多すぎるからだ」
「あー……」

 なんか、納得した。

 発達しすぎた文明社会が抱えている問題は、チートを使ったゴリ押しなんかでは終わらない。

 政府の怠慢、企業の腐敗、埋まらない格差、環境破壊。
 それによって疲弊して、手頃な快楽に溺れる人々。

 そんな問題に介入しようものなら、ストレスがマッハで削れていく。銃や、電脳世界を触媒にした超能力を持ってしても、さらなる技術によって利用されるか、蹂躙されてしまうのがオチだ。

「あれだけ発達した技術をもってしても解決できない問題を、たったひとりの人間が解消できるわけがないのさ」
「めんどくさい、と」
「そうそう。たしかに武装は魅力的だが、行ったとしてもバトルは気持ちよくないぜ」

 政治とか警察機関との小競り合いが、メインとなってくるらしい。

「思っているより、展開は地味なんだな?」
「テーマが中世風ファンタジーみたいな、新たな世界の創造ではないからな。崩壊するのを避けられない世界でいかに自分だけが生き残るか、がテーマになってくるからよ」

 派手に魔法をぶっ放すより、策略などに注意したほうがいいという。

「せっかく遠隔武器でドカンってやりたかったんだが」
「そうだね。私も、バババってしたいよ」

 オレはモモコと相談して、ある結論に達した。

「さてさてお二人さん、何をもらうかは決まったかな」

 女神から急かされる。


 オレたちは「せーの」で、同じセリフを言う。



 銃が欲しい! と。



「そんなんでいいのか。やっぱお前ら最高だな」

 その言葉を残し、女神は消えていった。
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