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第一章 竜胆の騎士:ジェンシャン・ナイト
第4話 竜胆の騎士《ジェンシャン・ナイト》 シェリダン
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「もういっぺん、言ってくれるか?」
「何度でも申しましょう。我が孫娘のレクシーめをもらっていただきたく」
「は、はあ。でも、オレが彼女をここへ連れてきたのは、ご両親の元へ返すためで」
オレが言うと、長老は首を横へ振る。
レクシーの方を見ると、中年夫婦の亡骸の前でうなだれていた。手を重ね、祈りを捧げだす。
「すまねえ。オレが間に合わなかったせいで」
「いえ。あれらは率先して、レクシーを救い出そうと」
身をていし、レクシーを助けに行ったと。
「なんと、声をかければいいか」
「お気遣い感謝いたします。私めも手を貸そうと考えました。が、弱い民を守れるのが私しかおらず」
大変だったんだな。
「レクシーはお気に召しませんか? では他の女を」
「違うっての! レクシーは、ウチで引き取ります! 引き取りますから!」
天涯孤独ってわけじゃないが、レクシーはオレたちで面倒を見たほうが安全だろうな。ここは復興しても、また襲撃されるかもしれないし。
「ありがとうございます。レクシーも喜ぶでしょう」
「ただ、嫁となると話は別だ。相手の意思を尊重したい」
「意思決定が必要と。では、今からお呼びいたしましょう。これレク――」
「いやいい。もう少し落ち着いてからで」
亡き両親のもとで、そっとしておいてあげたい。
「承知いたしました。あなたは、里の英雄です。せめて、お名前を。胸の文様を見たところ、竜胆の魔女様の使いの方かと」
そうだった。名前問題がまだ残っていたっけ。
「オレの名は、モモチ。そしてこのヨロイの名は、竜胆の騎士の、シェリダンだ。オレは、シェリダンと呼んでくれ」
名前は、タイ・シェリダンから拝借した。ゲーム小説原作映画でオタクの役だったから、ちょうどいいんじゃないか? あれも、異世界転移っちゃあ転移だ。
「といっても、里のものにはナイショな」
ヒーローは、身を隠すものだろう。魔女の存在は、秘匿しておいてくれと言われているし。ヘタに目立って、また里が襲われるのもヤバい。
「承知しました。シェリダンこの里にあるものは、すべてあなたのお好きになさってください」
といっても、ボロボロじゃん。
「いいよ。悪い。ニョンゴちょっと来てくれ!」
オレは、ニョンゴを呼び戻す。長老にだけ、魔女の正体を明かした。びっくりしていたが、長老はニョン語の存在を超速理解した。さすがエルフ、非常識な存在にも即対応とは。
「カメのウロコだけど、一部だけもらっていこう。一番使えそうな部位だけいただいて、他は里にあげたい」
肉など、うまそうだし。里の食料として、提供しよう。
「そうだね。長老よ、この残骸は置いておくので、里の復興に当てるがよい」
威厳のある言葉で、ニョンゴが告げる。
長老は「ははー」と頭を下げた。
他にすることと言えば。
「ところで、住民登録ってどうやるんだ? たとえば、冒険者ギルドとか」
異世界転生して真っ先にすべきは、冒険者登録でしょう。今のレベルとか、ステータスとかも知っておきたい。他の街に行って、不審者扱いされて怪しまれるのも困る。
「はて。魔女様から聞いていたと思ったのですが」
「実はオレは、魔女が遺した人造人間でな。この世界の常識が、よくわかっていないんだ」
「では、ギルドは無事です故に、登録をなさってください。名誉市民として、歓迎いたします」
「その前に、できれば風呂を貸していただけないか? 身体が汚れてしまった」
生身の肉体の方も損傷がないか、チェックしたい。スーツは外傷は避けてくれるが、ヤケドなどを起こしているだろう。
「では、回復の泉までご案内します」
ありがたい。
乳白色の温泉まで、案内してもらう。
「あとは自分でやる。ありがとう。ヨロイも洗ってかまわないだろうか? 血まみれになっちまった」
「ご自由に。後ほど、お着替えをお持ちします」
「何から何まで、助かる」
長老が去った後、フルフェイスの兜とヨロイを脱ぎ捨てる。
「やっぱりだ。ヤケドがひどい」
身体中、赤くなっていた。皮膚もただれている。これでは、再戦は不可能だろう。あの後もう一度戦闘していたら、骨にまで影響が出ていたに違いない。
「そもそも、ヨロイと皮膚の間って、インナーを着るんだったよな?」
なぜか、シェリダンにはインナースーツがなかった。あれでは、熱や冷気がそのまま身体に伝わるし、ダメージも軽減されない。硬いものを身に着けているからといって、完璧ではないのだ。
「インナーにまで、気が回らなかったよ。改善が必要だね」
「お前さんが直接着なくてよかったよ」
オレは、ヨロイにこびりついた血を洗う。
おお、さすが回復の泉だ。手でこすっただけで、汚れが落ちていく。
よく匂いをかぐと、香りが石けんぽい。海外の泡風呂みたいな感じか?
「ところで、これなんだが。とんでもねえ性能だな」
見た目はクソだが、性能は抜群だ。操作法も、一日で覚えられた。
「でしょ? 胸部のリアクターで、魔力がほぼ無限に発動するのだよ! といっても、ワタシが側で調節しないと暴走しちゃうけどなーっ!」
一長一短あるってわけか。
「お前さんが狙われる可能性は?」
「ないよ。マスコット枠だからね。この姿は実体化しているようで、別次元につながっているから」
「オレも、その世界に入れないのか?」
「あと一〇〇年くらい努力すれば、キミのサイズで次元移動は可能だろうね。ただ入れたとしても、現実世界に干渉は一切できなくなるよ」
だったらいいや。パスで。
「それにしても、あれだけいた魔物の残骸が、あっさり片付いたな」
「ふふーん。ワタシの足の裏にある肉球型トラクタービームによって、ぜーんぶマジックボックス内に収まったよ」
「万能すぎるな、マジックボックスは」
「通常のアイテムボックスも、サイズ違いのものは入るんだ」
生きた物は入れられないが、無機物ならいくらでも入るという。
「でもアイテムボックスだと、長時間アイテムを放置していると、生肉などは劣化してしまう。その点、マジックボックスは時間を止められるんだ。すごいだろ?」
「すごいすごい」
「もっと驚いてよ! あと、こっちで加工して、ヨロイのパーツとして最適化しておくよ」
そんなことまでできるのか。万能を通り越しているな。
「デザインが微妙だったら、オレが作り直すからな」
「だったら、機能だけ備えておくよ。ビジュアルはキミが考えてよ。作り直せるようにラボを改造しておくから!」
ニョンゴが、プンスカと怒る。
「ところで、ヨロイにもレベルがあるんだな」
「そうだよ。武器や防具にはレベルが合って、使い続けるごとに性能が上がるんだ。もっとも上限があるし、改造しないと頭打ちになるけど」
オレの今のレベルは、四二だ。ヨロイは、六五もある。
「ホン……トに、ビジュアルだけだな」
「そんなにダメ?」
「駄目だ。あんな外見では、ビビっちまう」
避難所から出てきた子どもたちが、返り血にまみれたオレを見て怯えていた。
そんな泥臭いヤツは、ヒーローではない。ただの殺人鬼だ。
「まて。誰か来る」
草の動く音がした。魔物はいないと思っていたのだが。
こんなオッサンの入浴シーンをノゾキに来るやつなんていないが、一応警戒をしておくか。ヨロイが目当てかも、しれないからな。
肩に、何者かの手が触れた。
同時に、オレは相手の手首を取ってひっくり返す。
「ひゃん」
変な声を出して、下手人は倒れ込む。
泉から出て、オレは相手に馬乗りになった。
「うわっと!?」
おお、なんということでしょう。
オレの背後に立っていたのは、一糸まとわぬレクシーだったのです……。
「何度でも申しましょう。我が孫娘のレクシーめをもらっていただきたく」
「は、はあ。でも、オレが彼女をここへ連れてきたのは、ご両親の元へ返すためで」
オレが言うと、長老は首を横へ振る。
レクシーの方を見ると、中年夫婦の亡骸の前でうなだれていた。手を重ね、祈りを捧げだす。
「すまねえ。オレが間に合わなかったせいで」
「いえ。あれらは率先して、レクシーを救い出そうと」
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大変だったんだな。
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天涯孤独ってわけじゃないが、レクシーはオレたちで面倒を見たほうが安全だろうな。ここは復興しても、また襲撃されるかもしれないし。
「ありがとうございます。レクシーも喜ぶでしょう」
「ただ、嫁となると話は別だ。相手の意思を尊重したい」
「意思決定が必要と。では、今からお呼びいたしましょう。これレク――」
「いやいい。もう少し落ち着いてからで」
亡き両親のもとで、そっとしておいてあげたい。
「承知いたしました。あなたは、里の英雄です。せめて、お名前を。胸の文様を見たところ、竜胆の魔女様の使いの方かと」
そうだった。名前問題がまだ残っていたっけ。
「オレの名は、モモチ。そしてこのヨロイの名は、竜胆の騎士の、シェリダンだ。オレは、シェリダンと呼んでくれ」
名前は、タイ・シェリダンから拝借した。ゲーム小説原作映画でオタクの役だったから、ちょうどいいんじゃないか? あれも、異世界転移っちゃあ転移だ。
「といっても、里のものにはナイショな」
ヒーローは、身を隠すものだろう。魔女の存在は、秘匿しておいてくれと言われているし。ヘタに目立って、また里が襲われるのもヤバい。
「承知しました。シェリダンこの里にあるものは、すべてあなたのお好きになさってください」
といっても、ボロボロじゃん。
「いいよ。悪い。ニョンゴちょっと来てくれ!」
オレは、ニョンゴを呼び戻す。長老にだけ、魔女の正体を明かした。びっくりしていたが、長老はニョン語の存在を超速理解した。さすがエルフ、非常識な存在にも即対応とは。
「カメのウロコだけど、一部だけもらっていこう。一番使えそうな部位だけいただいて、他は里にあげたい」
肉など、うまそうだし。里の食料として、提供しよう。
「そうだね。長老よ、この残骸は置いておくので、里の復興に当てるがよい」
威厳のある言葉で、ニョンゴが告げる。
長老は「ははー」と頭を下げた。
他にすることと言えば。
「ところで、住民登録ってどうやるんだ? たとえば、冒険者ギルドとか」
異世界転生して真っ先にすべきは、冒険者登録でしょう。今のレベルとか、ステータスとかも知っておきたい。他の街に行って、不審者扱いされて怪しまれるのも困る。
「はて。魔女様から聞いていたと思ったのですが」
「実はオレは、魔女が遺した人造人間でな。この世界の常識が、よくわかっていないんだ」
「では、ギルドは無事です故に、登録をなさってください。名誉市民として、歓迎いたします」
「その前に、できれば風呂を貸していただけないか? 身体が汚れてしまった」
生身の肉体の方も損傷がないか、チェックしたい。スーツは外傷は避けてくれるが、ヤケドなどを起こしているだろう。
「では、回復の泉までご案内します」
ありがたい。
乳白色の温泉まで、案内してもらう。
「あとは自分でやる。ありがとう。ヨロイも洗ってかまわないだろうか? 血まみれになっちまった」
「ご自由に。後ほど、お着替えをお持ちします」
「何から何まで、助かる」
長老が去った後、フルフェイスの兜とヨロイを脱ぎ捨てる。
「やっぱりだ。ヤケドがひどい」
身体中、赤くなっていた。皮膚もただれている。これでは、再戦は不可能だろう。あの後もう一度戦闘していたら、骨にまで影響が出ていたに違いない。
「そもそも、ヨロイと皮膚の間って、インナーを着るんだったよな?」
なぜか、シェリダンにはインナースーツがなかった。あれでは、熱や冷気がそのまま身体に伝わるし、ダメージも軽減されない。硬いものを身に着けているからといって、完璧ではないのだ。
「インナーにまで、気が回らなかったよ。改善が必要だね」
「お前さんが直接着なくてよかったよ」
オレは、ヨロイにこびりついた血を洗う。
おお、さすが回復の泉だ。手でこすっただけで、汚れが落ちていく。
よく匂いをかぐと、香りが石けんぽい。海外の泡風呂みたいな感じか?
「ところで、これなんだが。とんでもねえ性能だな」
見た目はクソだが、性能は抜群だ。操作法も、一日で覚えられた。
「でしょ? 胸部のリアクターで、魔力がほぼ無限に発動するのだよ! といっても、ワタシが側で調節しないと暴走しちゃうけどなーっ!」
一長一短あるってわけか。
「お前さんが狙われる可能性は?」
「ないよ。マスコット枠だからね。この姿は実体化しているようで、別次元につながっているから」
「オレも、その世界に入れないのか?」
「あと一〇〇年くらい努力すれば、キミのサイズで次元移動は可能だろうね。ただ入れたとしても、現実世界に干渉は一切できなくなるよ」
だったらいいや。パスで。
「それにしても、あれだけいた魔物の残骸が、あっさり片付いたな」
「ふふーん。ワタシの足の裏にある肉球型トラクタービームによって、ぜーんぶマジックボックス内に収まったよ」
「万能すぎるな、マジックボックスは」
「通常のアイテムボックスも、サイズ違いのものは入るんだ」
生きた物は入れられないが、無機物ならいくらでも入るという。
「でもアイテムボックスだと、長時間アイテムを放置していると、生肉などは劣化してしまう。その点、マジックボックスは時間を止められるんだ。すごいだろ?」
「すごいすごい」
「もっと驚いてよ! あと、こっちで加工して、ヨロイのパーツとして最適化しておくよ」
そんなことまでできるのか。万能を通り越しているな。
「デザインが微妙だったら、オレが作り直すからな」
「だったら、機能だけ備えておくよ。ビジュアルはキミが考えてよ。作り直せるようにラボを改造しておくから!」
ニョンゴが、プンスカと怒る。
「ところで、ヨロイにもレベルがあるんだな」
「そうだよ。武器や防具にはレベルが合って、使い続けるごとに性能が上がるんだ。もっとも上限があるし、改造しないと頭打ちになるけど」
オレの今のレベルは、四二だ。ヨロイは、六五もある。
「ホン……トに、ビジュアルだけだな」
「そんなにダメ?」
「駄目だ。あんな外見では、ビビっちまう」
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そんな泥臭いヤツは、ヒーローではない。ただの殺人鬼だ。
「まて。誰か来る」
草の動く音がした。魔物はいないと思っていたのだが。
こんなオッサンの入浴シーンをノゾキに来るやつなんていないが、一応警戒をしておくか。ヨロイが目当てかも、しれないからな。
肩に、何者かの手が触れた。
同時に、オレは相手の手首を取ってひっくり返す。
「ひゃん」
変な声を出して、下手人は倒れ込む。
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