レアドロップしない男、魔法付与装備を生成できる女スライム魔王に溺愛されて、【レアアイテムを破壊する男】として覚醒!

椎名 富比路

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4-2 復興中の街を襲ってきた敵は、殴ります

オレンジのジュエルの、本当の使い道

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「ランバート、相手をかく乱してくれ!」

「よし、おらああ!」

 俺の【ディメンション・セイバー】を追いかけつつ、【死神】ファルチェと接敵する。

 ハンドキャノン一丁で、リックは敵フォート族と渡り合っていた。『早撃ちリック』の異名は伊達ではない。
 相手が腕を振り下ろす前に、一八発撃ち込む。しかもリボルバーでだ。三回リロードして、銃撃している。

【クイックトリック】というスキルだ。

 俺でも当初は、リックのリロードが見えなかった。同じ技をクリムが持っていたから、目が慣れてきたが。

「おらああ!」

 ディメンション・セイバーを放ち、リックを援護する。

 だが、フォート族である【死神】ファルチェは、すべて避けてしまった。

 何を思ったか、リックは俺が放った衝撃波に銃弾を撃ち込む。

 セイバーが軌道を変えて、ファルチェの首を狙った。

「ちい!」

 腕を犠牲にして、ファルチェは首を守る。

 想像以上に、ファルチェも強い。リックが撃つ銃弾のすべてを受けても、再生してしまう。

「再生用のコアがあるようだな。ダメージは通っているはずなんだが、肉体が戻ってコアを防いでしまう」

 あのボディは防護用と割り切られ、コアを仕留めない限り再生し続けるというわけか。

「だが、コアがどこにあるかわからん!」

 リックの早撃ちをもってしても、倒せないか。

 しかし、対抗策はある。

「これはお前が持っていてくれ、リック!」

 オレンジ色のモノクルを、リックに渡した。

「いいのか、ランバート?」

「俺にはオニキスがある。属性を無視して貫通できるんだ」

 オニキスの武器は、属性関係なしに相手を攻撃できる代わりに、ダメージが半減する。せいぜい腕や足を切り落とす程度で、相手に再生を許してしまう。まともなダメージを与えられない。

 リックの射撃なら、ピンポイントで相手の核を攻撃できるだろう。

「頼む、リック」

 俺はリックに狙撃してもらうため、ファルチェの前に出る。

「ひ弱なウィザードごときが、勝てると思っているの!?」

 白髪を歌舞伎役者のように伸ばし、【死神】ファルチェは俺に巻き付けようとした。

「おらあ!」

 刀身の白い刀【イチモンジ】で、白髪を切り裂く。

「もういっちょ、おらあ!」

 イチモンジの柄から【黒曜顎コクヨウガク】を展開し、二刀流にする。

「ファイトスタイルを変えたのね。手を尽くしたところで、ワタシには勝てないわよ!」

「戦ってから言え! おらああ!」

 濃い藍色の【ディメンション・クロー】を伸ばす。

 飛び道具である【ディメンション・セイバー】と違い、【クロー】はリーチを伸ばすだけだ。
 その分、魔力の消費を抑えられる。

 黒曜顎は、とにかく術士の魔力を食う。
 リソースを考えつつ、大ダメージを狙う必要があるのだ。

「その技、エフェクトがカッコイイだけね! たいして戦えてないわよ!」

 俺の本職が、格闘系じゃないからな。それは仕方ない。こちらの手の内は読まれ、防戦になってしまう。機械でできたフォート族は、やはり分析力が高い。

「どけ、ランバート!」

 身体を横に向けて、リックは銃を構えていた。

 俺は身体をのけぞらせ、リックの射線からそれる。

 リックが、引き金を引いた。

 脇腹に、リックの放った銃弾がめり込む。

「くそ、こんなもの!」

 力を込めて、死神が銃弾を体外へ放出しようとした。

「させるか、おらあっ!」

 俺はすかさず、黒曜顎を脇へ指す。リックの銃弾を、さらに体内へ押し込んだ。

「ギッ!」

 甲高い声を上げて、死神ファルチェの頭が爆発した。あれだけ活動的だったフォート族が、バランスを失う。

「ふう!」

 俺は、刀を納めた。黒曜顎に吸われた魔力を、ダイヤのジュエルで回復させていく。

「やったな」

「お前の力だ、リック」

 リックと、拳を突き合う。

「これは、お前にやる。オレンジのジュエルと一緒に使え」

 敵が落としたルビーの光るオーブジュエルを、リックに差し出した。

「いいのか?」

「お前なら、光るジュエルでも使いこなせるさ」

 光るジュエルは、高レベルのハンターでしか扱えない。共に地獄を経験したリックなら、託せる。

「お前と組むとレアが出ないと言って、悪かった。こんな大事なものを、オレにくれるなんて」

「いいさ。今までの迷惑料だ」

「パートナーのところに行ってやれ」

「ああ。またな」

 俺はリックと別れ、サピィのいる艦橋へ。

「サピィ!?」

 艦橋で横になっているサピィを、抱き上げた。

「無事か? やけに疲れているようだが」

「高次元空間で、ドラゴンと戦闘になりまして」

「ドラゴンだと!?」

 相手は、ドラゴンさえ操る科学力を持っているらしい。

「お気をつけて。敵はヴァイパー族を上回るこの要塞さえ、たやすくコントロールします。追い詰めて入るようですが、油断はできません」

 呼吸を整えながら、サピィが起き上がる。

 遠くで、爆発音がした。

 艦橋から、遠くを観察する。

 たった一人で、ゾーイが別のフォート族と戦っていた。

 相手は俺が対峙した、【墓穴】のような、パワータイプだ。

 ゾーイが、コートのボタンを外す。

 コートから羽のような自律兵器を展開して、フォート族の頭部を撃ち抜いた。

 浮遊していた羽は、そのままゾーイの背中に集結し、二対の翼に変わる。

「ゾーイの正体が、天使だと?」

 あの女、どこかで見たことがあると思ったのだ。

 奴は、俺が倒した堕天使、ラムブレヒトと雰囲気がそっくりなのである。

「女王! また勝手にハンティングに出て!」

 キンバリーが、肩を怒らせながらゾーイに詰め寄った。
 さっき、キンバリーはゾーイを「女王」と呼ばなかったか?
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