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3-5 堕天使を殴りに行きます 前編
堕天使は、同担拒否
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俺とサピィは、リュボフのいる修練場にいた。
ヨガのトレーニング場のような所で、神秘的な建物と、どこまでも続く石畳の広場がある。
トウコ、フェリシアと共に、リュボフは禅を組んでいた。
「同担拒否ってなんだ?」
「ファン同士の交流を、嫌う人のことよ」
禅をしたまま、トウコがフェリシアに聞く。
「堕天使は、神が他の種族を愛するのを強く拒絶して、種族を攻撃した結果で堕ちたのよ」
「つまりペトロネラは、『神を愛しているのは自分だけ』と主張したいのよ。あたしのような聖女が『神の代弁者』を気取っているのが、気に食わないの」
フェリシアの後に、リュボフが会話を引き継いだ。
「めんどくさい女だなー。そういうヤツを、世間はメンヘラっていうんだよな」
「そうね。あいつは特別メンヘラと言っていいわ」
リュボフが呆れ果てる。
「神も神で、自分の分身をつかわせてエルフと交配して、子どもを作ったらしいわ」
地上で行動できるアバターとして、その子を運用しているらしい。
「神ラブ勢のペトロネラを差し置いて、エルフとねんごろかー」
「そんなことをするから、余計にペトロネラは嫉妬してしまったのよ」
座禅を組みながら、トウコとフェリシアが腰の曲げ伸ばしをした。
「ペトロネラと肉体関係を持つと、今度こそめんどくささが加速すると思ったんでしょうね」
あたしが神でもそうするわ、とはリュボフは言う。
「今も、そのアバターとやらは現役で活動しているのか?」
俺が聞くと、リュボフは首を振った。
「知らないわ。そこまで詳しくは教えてもらえないの」
「聖女なのに、そのアバターを守れと指令はくだらなかったんだな?」
「ひとことで聖女って言っても、役割は地上の管理くらいだから。神も、自分の身は自分で守れると思っているのではないかしら?」
そもそも、神とは実態があるのだろうか?
「神を見たことはあるか? 魔王のように、実体があるとか」
「ないわよ。夢の中とかで漠然と現れる、光る物体みたいな感じね。地上にも、なんの影響力も与えられないみたい。ヘタに関わると、天変地異が起きるんですって」
だから依代をつかわせて、子をなすのだという。
その子たちは人間として生きることもアレば、たいていエルフやドワーフなどの亜人種となるそうだ。
いい環境下だと【勇者】や【聖女】と呼ばれる存在に、悪しき環境に育てば、モンスターへと変わる。
「堕天使からすると、たまったもんじゃないのよ。いつでも受け入れOKにもかかわらず、抱いてくれないのだから」
それは、嫉妬するというもの。
「で、具体的に聖女をどうするつもりなのだろうな」
「直接手を下すか、閉じ込めておくつもりじゃないかしら、神を脅す手段としては、最適にして最悪の方法よ」
ひどい。
「あんたは俺たちが必ず守る」
「ありがとう。頼りにしているわ」
その後、俺はたまりにたまったジュエルをエンチャントし続け、スキルレベルが一〇〇を超えた。
【エンチャント】のスキルは上限がない分、使い続けるうちに消費マナも抑えられる。
ダイヤのジュエルで回復しながらなので、作業も余裕でこなせた。
戦闘はしていないが、エンチャントだけでほぼレベルが上がってしまっている。
サピィとシーデーは、ルーオンたちの修行に同行した。万が一、強い敵にあたってしまった場合に備えて、護衛するという。
一週間が過ぎた。
コナツとダフネちゃんの作業が終わったらしい。
俺たちは、コナツの工房に同席している。
「完成したぜ。アーマーと同時開発だったから、手間取っちまった」
コナツはすっかり、汗びっしょりだ。
「まずはアーマーだな。今までの技術を結集して作ってある」
最初に出てきたのは、やや赤黒いプロテクトアーマーである。各所に、光るシード型ジュエルがはめ込まれていた。
「これは、作っていてテンション上がったぜ。今考えうる限り最強のヨロイだ。ランバートのイメージカラーに合わせて、赤黒くしてある。サピィちゃんと、対照にしてみたんだ」
「布地の部分が多いな」
「ダフネちゃんと共同開発と、光るジュエルによって、軽量化に成功したんだ」
たしかに、プロテクターは金属部分だが、他は布になっていて軽い。
「サムライと言ったら具足、というイメージがあったが、これは普段着と遜色がないな」
スボンなどの黒い部分は、モンスターの素材や外殻を使用していた。これにより、さらなる軽量化を目指している。
「あと、黒曜顎を用いてもサピィちゃんの腕輪は使いたいってリクエストがあったからな。ブレスレットの余地は残してある」
手首には、ちゃんとサピィがくれたブレスがあった。
「さて、お待ちかねの刀が出来上がったぜ」
生まれ変わった黒曜顎を見せてもらう。
「おお」
「オレサマとダフネちゃんで考えた、決戦仕様だぜ」
【イチモンジ】とは対照的に、鞘が青黒い。
「刀に、金色のラインが入っているな」
「術式を込めた金属製の鉄板を、切れ味を損なわないレベルではめ込んだ。それで、パワーをセーブしているんだ」
刀と言っても、当面は「ディメンション・セイバーを撃つ杖」として活用するだろうと、切れ味には期待していないらしい。
同じ処置を、柄やツバにも施しているという。
そこまでしなければ、制御できないらしい。
「使ってみてわかったんだが、コイツは金属をも取り込むぜ」
実際、術式金属板は刀に沈み込んでいるという。
「この刀はおそらく、金属と融合が可能だ。つまり、刀と同じように加工できるってわけさ」
それがわかっただけでも、価値があるというものだ。
「ツバなのですが、ランバートの戦闘データを元にセイバーの威力を調節できるようにしたです。接近戦にも対応できるように、常に魔力を刀に帯びさせて強度を増してるです」
エンチャントの基礎的な技だが、効果的だろう。
本来のエンチャントとは、そういう使い方をする。この刀は、それを超人の次元で活用できるとか。
「レベル一〇〇エンチャントが常に展開されているのです。威力は計り知れないです」
聞けば聞くほど、危険な武器に思えた。
「いいなー。オレもそういった武器がほしいぜ」
ルーオンがヘソを曲げる。
「あんただって、ちゃんといい武器をもらったじゃん。ガマンなさい」
コネーホが、ルーオンをたしなめた。
俺以外のメンバーは、既存の装備にジュエルをはめ直している程度である。それでも、大幅にレベルアップしていた。
二人の装備も、充実したものに変わっている。コネーホのウサミミ着ぐるみは、相変わらずだが。
「これ、なんとかならないの?」
「あなたが一番、死亡率が高いです。特化型ヒーラーは、敵に狙われやすいです。いくら攻撃魔法を覚えたとしてもです。まして、死霊系にしか効かないと聞いたです」
きぐるみには、【ギャグ補正】という効果があり、死亡率が格段に下がるという。
戦闘に出ないのだからいいだろうと、ダフネちゃんは強調した。
全員の装備調節が終わり、塔へ集結する。
「あたしらは今回、力になれないかもだぜ」
メグとミューエ、ゼンは、サポートに徹するという。
「相手が、堕天使と例の暗黒騎士でしょ? 役に立てそうにないのよね」
「そうか。同行してくれるだけでもありがたい。ルーオンを頼んだ」
「任せてよ」
それぞれの役割分担を打ち合わせする中、ビョルンだけがソワソワしていた。
「どうした、恋人の聖女が危険な目に遭うから、心配しているのか?」
「ああ。まあ、そんなところ。そういうことにしといてくれよ」
ムリに苦笑いを浮かべながら、ビョルンは手をヒラヒラさせる。
「ご安心を。聖女リュボフはわたしが守りますから」
「ありがとうよ、サピィちゃん」
四層を目指し、俺たちは塔の中へ。
ヨガのトレーニング場のような所で、神秘的な建物と、どこまでも続く石畳の広場がある。
トウコ、フェリシアと共に、リュボフは禅を組んでいた。
「同担拒否ってなんだ?」
「ファン同士の交流を、嫌う人のことよ」
禅をしたまま、トウコがフェリシアに聞く。
「堕天使は、神が他の種族を愛するのを強く拒絶して、種族を攻撃した結果で堕ちたのよ」
「つまりペトロネラは、『神を愛しているのは自分だけ』と主張したいのよ。あたしのような聖女が『神の代弁者』を気取っているのが、気に食わないの」
フェリシアの後に、リュボフが会話を引き継いだ。
「めんどくさい女だなー。そういうヤツを、世間はメンヘラっていうんだよな」
「そうね。あいつは特別メンヘラと言っていいわ」
リュボフが呆れ果てる。
「神も神で、自分の分身をつかわせてエルフと交配して、子どもを作ったらしいわ」
地上で行動できるアバターとして、その子を運用しているらしい。
「神ラブ勢のペトロネラを差し置いて、エルフとねんごろかー」
「そんなことをするから、余計にペトロネラは嫉妬してしまったのよ」
座禅を組みながら、トウコとフェリシアが腰の曲げ伸ばしをした。
「ペトロネラと肉体関係を持つと、今度こそめんどくささが加速すると思ったんでしょうね」
あたしが神でもそうするわ、とはリュボフは言う。
「今も、そのアバターとやらは現役で活動しているのか?」
俺が聞くと、リュボフは首を振った。
「知らないわ。そこまで詳しくは教えてもらえないの」
「聖女なのに、そのアバターを守れと指令はくだらなかったんだな?」
「ひとことで聖女って言っても、役割は地上の管理くらいだから。神も、自分の身は自分で守れると思っているのではないかしら?」
そもそも、神とは実態があるのだろうか?
「神を見たことはあるか? 魔王のように、実体があるとか」
「ないわよ。夢の中とかで漠然と現れる、光る物体みたいな感じね。地上にも、なんの影響力も与えられないみたい。ヘタに関わると、天変地異が起きるんですって」
だから依代をつかわせて、子をなすのだという。
その子たちは人間として生きることもアレば、たいていエルフやドワーフなどの亜人種となるそうだ。
いい環境下だと【勇者】や【聖女】と呼ばれる存在に、悪しき環境に育てば、モンスターへと変わる。
「堕天使からすると、たまったもんじゃないのよ。いつでも受け入れOKにもかかわらず、抱いてくれないのだから」
それは、嫉妬するというもの。
「で、具体的に聖女をどうするつもりなのだろうな」
「直接手を下すか、閉じ込めておくつもりじゃないかしら、神を脅す手段としては、最適にして最悪の方法よ」
ひどい。
「あんたは俺たちが必ず守る」
「ありがとう。頼りにしているわ」
その後、俺はたまりにたまったジュエルをエンチャントし続け、スキルレベルが一〇〇を超えた。
【エンチャント】のスキルは上限がない分、使い続けるうちに消費マナも抑えられる。
ダイヤのジュエルで回復しながらなので、作業も余裕でこなせた。
戦闘はしていないが、エンチャントだけでほぼレベルが上がってしまっている。
サピィとシーデーは、ルーオンたちの修行に同行した。万が一、強い敵にあたってしまった場合に備えて、護衛するという。
一週間が過ぎた。
コナツとダフネちゃんの作業が終わったらしい。
俺たちは、コナツの工房に同席している。
「完成したぜ。アーマーと同時開発だったから、手間取っちまった」
コナツはすっかり、汗びっしょりだ。
「まずはアーマーだな。今までの技術を結集して作ってある」
最初に出てきたのは、やや赤黒いプロテクトアーマーである。各所に、光るシード型ジュエルがはめ込まれていた。
「これは、作っていてテンション上がったぜ。今考えうる限り最強のヨロイだ。ランバートのイメージカラーに合わせて、赤黒くしてある。サピィちゃんと、対照にしてみたんだ」
「布地の部分が多いな」
「ダフネちゃんと共同開発と、光るジュエルによって、軽量化に成功したんだ」
たしかに、プロテクターは金属部分だが、他は布になっていて軽い。
「サムライと言ったら具足、というイメージがあったが、これは普段着と遜色がないな」
スボンなどの黒い部分は、モンスターの素材や外殻を使用していた。これにより、さらなる軽量化を目指している。
「あと、黒曜顎を用いてもサピィちゃんの腕輪は使いたいってリクエストがあったからな。ブレスレットの余地は残してある」
手首には、ちゃんとサピィがくれたブレスがあった。
「さて、お待ちかねの刀が出来上がったぜ」
生まれ変わった黒曜顎を見せてもらう。
「おお」
「オレサマとダフネちゃんで考えた、決戦仕様だぜ」
【イチモンジ】とは対照的に、鞘が青黒い。
「刀に、金色のラインが入っているな」
「術式を込めた金属製の鉄板を、切れ味を損なわないレベルではめ込んだ。それで、パワーをセーブしているんだ」
刀と言っても、当面は「ディメンション・セイバーを撃つ杖」として活用するだろうと、切れ味には期待していないらしい。
同じ処置を、柄やツバにも施しているという。
そこまでしなければ、制御できないらしい。
「使ってみてわかったんだが、コイツは金属をも取り込むぜ」
実際、術式金属板は刀に沈み込んでいるという。
「この刀はおそらく、金属と融合が可能だ。つまり、刀と同じように加工できるってわけさ」
それがわかっただけでも、価値があるというものだ。
「ツバなのですが、ランバートの戦闘データを元にセイバーの威力を調節できるようにしたです。接近戦にも対応できるように、常に魔力を刀に帯びさせて強度を増してるです」
エンチャントの基礎的な技だが、効果的だろう。
本来のエンチャントとは、そういう使い方をする。この刀は、それを超人の次元で活用できるとか。
「レベル一〇〇エンチャントが常に展開されているのです。威力は計り知れないです」
聞けば聞くほど、危険な武器に思えた。
「いいなー。オレもそういった武器がほしいぜ」
ルーオンがヘソを曲げる。
「あんただって、ちゃんといい武器をもらったじゃん。ガマンなさい」
コネーホが、ルーオンをたしなめた。
俺以外のメンバーは、既存の装備にジュエルをはめ直している程度である。それでも、大幅にレベルアップしていた。
二人の装備も、充実したものに変わっている。コネーホのウサミミ着ぐるみは、相変わらずだが。
「これ、なんとかならないの?」
「あなたが一番、死亡率が高いです。特化型ヒーラーは、敵に狙われやすいです。いくら攻撃魔法を覚えたとしてもです。まして、死霊系にしか効かないと聞いたです」
きぐるみには、【ギャグ補正】という効果があり、死亡率が格段に下がるという。
戦闘に出ないのだからいいだろうと、ダフネちゃんは強調した。
全員の装備調節が終わり、塔へ集結する。
「あたしらは今回、力になれないかもだぜ」
メグとミューエ、ゼンは、サポートに徹するという。
「相手が、堕天使と例の暗黒騎士でしょ? 役に立てそうにないのよね」
「そうか。同行してくれるだけでもありがたい。ルーオンを頼んだ」
「任せてよ」
それぞれの役割分担を打ち合わせする中、ビョルンだけがソワソワしていた。
「どうした、恋人の聖女が危険な目に遭うから、心配しているのか?」
「ああ。まあ、そんなところ。そういうことにしといてくれよ」
ムリに苦笑いを浮かべながら、ビョルンは手をヒラヒラさせる。
「ご安心を。聖女リュボフはわたしが守りますから」
「ありがとうよ、サピィちゃん」
四層を目指し、俺たちは塔の中へ。
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