レアドロップしない男、魔法付与装備を生成できる女スライム魔王に溺愛されて、【レアアイテムを破壊する男】として覚醒!

椎名 富比路

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3-2 このエルフは、思わず殴りたくなります

また強くなったランバート また新しい仲間に洗礼

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 作業中のコナツに、アイレーナからヒューコに来てもらった。
 その際、ビョルンとのあいさつは済ませている。

「ほほう。どれも一級品じゃねえか」

 ダフネちゃんの店を見渡しながら、コナツは口笛を吹く。

「ルエ・ゾンの知恵をお借りして、具現化しているだけなのです」

 恐縮しながら、ダフネちゃんがペコペコ頭を下げた。

「どういうことだ?」
「彼女たちは、ルエ・ゾンが使役している精霊だよ」

 手が足りなくてできないことを、精霊にさせているらしい。
 その際に、ルエ・ゾンは自身の知恵を精霊に授けているとのこと。つまり、みんなルエ・ゾンの分身ともいえる。

「終始忙しくしてて気難しいルエ・ゾン本人より、ダフネちゃんと話したほうが効率がいいかもな」

 コナツも、ルエ・ゾンの性格をよく把握していた。

「よろしくです。刀も預かっているです。今性質を確かめて、どうすれば魔力の流れを制御できるかチェックしているです」

 全面的に、オレの刀はダフネちゃん自身が面倒を見るらしい。

「わかった。ジュエルの何割かは、そっちで加工しても構わねえ。その代わり、刀をよろしく頼むぜ」
「ありがとうです」

 さっそく、装飾アイテムの試作品を作ってもらうことに。

「手持ちのジュエルを見せな」

 塔で拾ってきたジュエルを数個、コナツに見せる。

「こういうとき、現地で拾ってきたジュエルを使えるっていいよ……な」

 コナツが、渋い顔になった。

「お前、またなんかやらかしたか?」

 そのジュエルは、小粒だが普段より光っている。

「どうした、粗悪品でもあったか?」

 たしかに、今回拾ってきたジュエルは、どれも小粒なのだ。

 もしかして、俺は弱体化したのかとさえ思っていた。

「粗悪品どころか、一級品だ」

 手に持ったジュエルを、コナツは俺に見せる。

「見た目が最下級のシードなのに、最上級のオーブ並の魔力なんだが?」

 ジュエルを日に照らしながら、コナツはやけにニヤニヤしていた。

「理由はなにか、わかるか?」
「よく言うぜ。お前さん、いつの間に、『ドロップと同時にエンチャントが完了したジュエル』なんて出せるようになったんだ?」

 コナツから、妙な話を聞く。

「俺は、そんな芸当なんてできんぞ」
「いや。コイツはたしかにエンチャ済みだ。お前の魔力をビリビリ感じるぜ。しかも、今までとはケタ違いだ。ジュエルの限界値を越えた量の魔力が、こんな小さい粒に詰まってやがる」

 コナツの話を聞きながら、サピィもうなずいている。

「やはり、コナツさんも気づいておられましたか。そうなのです。このジュエルからは、凄まじい魔力が検知されました。ジュエル開発当時の、全盛期すら上回ります」
「そこまでなのか、サピィ?」
「ええ。ランバート、あなたは下級とはいえ、魔王を倒しました。それによって、常人よりも遥かに高みへ到達したようです」

 俺に、そんな力が。

「まっ、ひとまずジュエルは折半ってことで。あとランバート、ちょっといいか?」
「どうしたんだ?」
「エンチャントのレベルって、下げられるか?」
「ああ。調節は可能だ」

 コナツは「助かった」と返す。

「なるほど。エンチャントしたジュエルのレベルが高すぎると、使い手にも高いレベルが要求されるんだったな」

 自分の装備を強くすることに固執しすぎていて、忘れるところだった。

「じゃあ、現存するジュエルにエンチャントする際、レベルをこちらが指定しても構わないか?」
「もちろんだ。俺としても、その方が助かる」

 毎回ジュエルを拾う度に、膨大な魔力をジュエルに施す作業は辛かったのだ。今ではそれほどでもなくなったが、まだキツイところではある。

「オレもテスト用に、ジュエルを持ってきた。これを三〇レベルくらいで調節して、ダフネちゃんに。こっちは二〇だ。あとは、一〇くらいでちょうどいいや」

 コナツに指示されたとおり、手頃なレベルでジュエルをエンチャントした。

 魔力を込めたジュエルを、俺はダフネちゃんに渡す。

 あと、コナツはダフネちゃんに、軽くジュエルの扱いについてレクチャーを施した。ソケットの開け方や、ジュエルの種類などだ。

「ありがとうです」
「礼を言うのはこっちさ。んじゃ、頼むぜ」
「はいです」

 コナツは商談を終えて、帰るという。

「じゃあ、メシにしようぜ。新しいメンバーも加わったことだしよぉ」

 となると、あれか。

 アイレーナへ戻ると、さっそく鍋を囲んでの酒盛りが始まった。
 ビョルンがいることで、より豪勢になっている。

「まま、ダークエルフとドワーフで、仲良くやろうぜ」
「おう、まだひよっこだが、よろしくな!」

 ビョルンとコナツは、まだ昼間なのにすっかりできあがっていた。お互いに酒を酌み交わし、語り合う。

「そうだ。コナツ、この銃と服をサピィからもらったんだが、オイラが着ちゃっていいのか?」

 ビョルンが立ち上がり、装備をよく見せるためにくるりと回った。下がスカートっぽく、中性的なデザインだ。

「いいっての! これはよぉ、トウコが着てくれなかったんだよぉ。ピチピチだし、かわいすぎるってんでさぁ。絶対似合うって思ったのによぉ」

 親バカコナツが、涙ぐむ。

「まさか男が着るとは思ってなかったが、いいんだ! 似合ってんなら、着ておけ!」
「サンキュ! これ、気に入ってるんだよ」

 ビョルンも、まんざらでもない様子だ。

「おいおい、ところでビョルンよぉ。全然、食ってねえじゃねえか! もっと腹に入れろ! 大きくなれねえぜ!」

 これだ。コナツの家では、これがある。大量のメシと酒という洗礼が。

 コナツの言う通り、ビョルンの鍋は二、三杯おかわりしただけで、減っていなかった。

 俺やサピィは、五杯も食ったというのに。

「いやいや。これ以上飲むとさ、腹が出ちまって服が着られなくなるからさ」

 うまい。どうにか言い訳をして、ビョルンは洗礼から逃れようとしている。

 フェリシアのように、「うっぷ」をムリをしない。

「踊り子だから、めちゃ運動するんじゃねえのかい? だから食うだろ」
「そりゃあ食うさ。とはいえ、限度があらあ。たんまり食えば、やっぱ脂肪になってしまうからね」
「それもそうだな! ガハハ!」

 豪快に、コナツは酒を煽る。

 ビョルンも適度に酒を飲みつつ、鍋をつまむ。文字通り、「食えない」男と言えよう。

「オヤジがここまで人と仲良くなるのは、あんまり見ないんだぞ」
「だな。コナツはただでさえ人当たりはいいが、打ち解けるまでには時間がかかるんだ」

 やはり職人なので、「相当使える人物」でなければ心を開かない。
 手の内がバレてしまうからだ。
 なので、極力警戒をする。

 連れてきてよかった。 

「ランバート、聞いてもいいですか?」
「どうした、サピィ?」
「ギルドでのやりとりから、あなたの優しさが伺えました」

 俺は、首を振る。

「ソロ狩りの大変さを、知っているからな」

 クリムのパーティを離脱した後、俺はソロ狩りの辛さを知った。

「俺はすぐに、サピィたちと合流できた。あれは奇跡だった。俺は、サピィのマネゴトをしたに過ぎないんだよ」

 サピィがいなければ、俺はまだ一人だっただろう。

 自分の持っている力にも、気づけなかったかもしれない。

「ありがとう、サピィ。俺と出会ってくれて」
「……はい」

 頬に手を当てながら、サピィはうなずく。

「よし、じゃあ、仕事に行くかな?」

 ビョルンが立ち上がった。

「これから、バーでダンスの仕事があるんだ。みんなも、見に来てくれよな」

 そう言って、ビョルンはヒューコの酒場へ戻るという。

「わたしたちも、行きましょうか。しばらくダンジョンへ潜りましょう」
「そうだな。じゃあコナツ、俺たちはこの辺で」
「おう! またな!」

 調節が必要な装備だけ渡して、俺たちはヒューコへ向かった。
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