レアドロップしない男、魔法付与装備を生成できる女スライム魔王に溺愛されて、【レアアイテムを破壊する男】として覚醒!

椎名 富比路

文字の大きさ
上 下
145 / 230
第三部 災厄の塔に棲む堕天使 3-1 塔を支配した堕天使を、殴りに行きます

改造された戦士と魔術師

しおりを挟む
 俺たちの立つポイントは、リカオンを退治した辺りだ。

 二人組のハンターが、姿を表す。

 一体は戦士タイプで、金属ヨロイと身体を同化させていた。タワーシールドに、槍斧を装備している。

「おい、リカオンがやられているぜ!」

 ズタズタになったリカオンの死体を見て、戦士が悲鳴を上げた。

「マジかよ。オレらが埋めた石の力で、パワーアップしていたのに!?」
「こんなことができるやつが、まだいたのか」

 もうひとりは女性の魔術師で、腕を改造している。両手の配線コードが頭と直結していていた。頭にかぶっているヘルメットらしきものは、どうも補助脳らしい。

「クリム・エアハートじゃねえか?」
「バカ言え。クリムは行方不明だ。それより、さっさと済ませよう」
「命令だと、このあたりだよな?」
「ああ。早く済ませようぜ」

 騎士と魔術師の二名が、ダンジョンに何かを埋め込んでいる。

 見たところ、ふたりとも【サイバーウェア】に身を包んでいた。いわゆる「改造手術」である。

「あいつらは、元ハンターだ。修行に耐えられなくなって、魔物によって身体を改造してもらったんだ」

 今は、魔物と変わらないという。

「その魔物とは?」
「わからん。だが、ルエ・ゾンが手を焼くほどの実力者だってのはたしかだ」
「ならば、直接聞き出すまでだ」

 ビョルンが止めるのに耳を貸さず、俺はハンター崩れどもの前に。

「何をしている?」

 元ハンター崩れたちはギョッとした表情になる。しかし、すぐに我に返った。

「へっ。何をしていようがお前らには関係ねえ!」
「魔法の練習台になってもらうぜ!」

 野盗どもが、サイバーウェアを起動させる。

 戦士は筋肉が盛り上がり、魔術師は肉体の各所に強化を施した。

「フン。お前たちこそ、刀の練習台になってもらおうか」
「調子に乗るんじゃねえ!」

 戦士が、片手で槍を振り回す。

 刀で受け流し、反撃の突きを繰り出した。

 なるほど、たしかに腕は立つようだ。魔物の力を得ているのは、本当らしい。

 とはいえ、動きは乱暴だな。命のやり取りをしているはずなのに、えらく雑な攻撃ではある。弱いものとしか、戦ったことがないのだろう。しかも、確実に勝てる敵しか相手にしていまい。

「こんな奴ら、俺の敵じゃない」
「んだとぉ? オレはχの中でもダントツで腕力が高いんだぜ!」
「しかし、こんな狭い塔の中でくすぶっているようでは」
「ほざきやがれ!」

 力任せに、戦士が槍斧を振り回した。

 そこへ、術士のエンチャントが入る。

「ギャハハァ。構えているだけかよ! 潰れろぉ!」

 エンチャント魔法によって質量が数倍になった槍斧を、戦士が振り下ろした。

 槍斧が刀に触れた瞬間、俺は反射的に刀を振るう。相手の攻撃を受け流しつつ、反動を利用して旋回した。

「ぬう!?」
雷斬らいきり!」

 真一文字に、敵を切り裂く。

 戦士は、肉体を半分に両断されて息絶える。

「な、これは、デーニッツの【雷斬らいきり】じゃないか!?」

 魔術師が、俺から距離をとった。

 見よう見マネでやってみたが、うまくいったらしい。

 雷のような速さで放つ、カウンター技である。

「そんな。エンチャントの力なしで、あんな大技を。いくら【早熟】持ちでヴァスキーを倒したとはいえ、強くなりすぎています」

 サピィが、驚いた様子で俺の技を見ていた。

 エンチャントを用いない素の力でどこまで戦えるのか、試したかったのである。

「どれくらい、ランバートは強いんだ?」
「ちょっとした、デーモンロードクラスですね。魔王と肩を並べるくらいだと、思っていただければ」

 魔王の側近【デーモンロード】が相手なら、サシでも戦えるレベルか。

「いったいランバートは、どこまで強くなるというのでしょう?」

 俺は【早熟】というスキルを持っている。他人より、レベルアップが早い。

「どうした、そこまでか?」
「うるさいなぁ! デーニッツと同じ技ができるからって、いい気になるな!」

 魔術師は、両手に鉄をも溶かすほどの火炎魔力を収束させた。爆炎の魔法で、このフロアごと吹き飛ばす気だろう。頭に血が上っているのか。

「みんな、あたしの後ろに避難してっ!」

 フェリシアが大型の盾を構え、俺以外の全員を下がらせた。

「【ホーリーウォール】!」

 全員が避難したことを確認して、フェリシアが盾に魔力を込める。

 フェリシアたちの前方に、光の壁が発生した。

「あんたも早く!」
「俺はいい」

 手招きをするフェリシアに対し、俺は首を振る。

「何を考えているの!? 早く逃げないと!」
「本物のエンチャントがどんなものかを、教えてやる」

 俺は、刀を鞘へ納めた。

「バカが! 剣をしまってどうするってんだ!」

 このダンジョンを破壊するほどのエネルギーを、術士は充填完了したらしい。

「エンチャント!」

 俺は刀に、氷魔法のエンチャントを施す。俺の武器である【イチモンジ】は、相手を斬るというより「殴る」に適した武器だ。しかし、エンチャントすることによって切れ味を増す。最初から、エンチャント前提で開発された武器だ。

「なにをしても同じだ。死ねえ! 【デトネーション】!」

 自分の魔力回路すら焼き切るほどのエネルギーを、術士は放つ。

せつっ!」

 赤熱の爆炎を、俺は居合でかき消す。再度、刀を鞘へしまった。

「なあ!?」

げつっ!」

 困惑している魔術師の両手を、居合で斬り捨てて無力化する。再び刀を鞘へとしまう。

っ!」

 最後に、袈裟斬りで相手を両断した。

 ふう、と呼吸を終えて、刀を鞘へ収める。

「すっげえ。いくら落第者だっていったって、魔物クラスに強化されてやがるんだ。そんな二人を一瞬で」

 ビョルンが、口笛を吹いた。

「殺しても、よかったのか?」

 会話からして、敵はχカイの残党らしかった。情報を聞き出せたかもしれない。

「いらねえよ。こんな奴らは組織の末端だ。ろくな情報もねえ。下手に拘束しても、ギルドが危なくなるだけだぜ」

 ビョルンは、冷たく言い放つ。

「あんたも見ただろ? 爆炎の魔法。あれはおそらく、自爆用に持たせたようなもんだ。あんなもん、ギルドの牢屋でブッパされた日にゃあ」

 たしかに、危なかった。

「俺の判断は、正しかったか?」
「大正解ってやつだよ。お見事!」

 やや冷やかしっぽく、ビョルンは手を叩く。

「ちょっと待て……つまりこいつは、自身の判断で【デトネーション】を唱えていない?」
「そういうこった」

 仲間を遠隔でコントロールして、自爆させるヤツがいると。

 改造を施したのも、いざというときに操作するためか。「強くしてやる」と甘い言葉で勧誘して、自身の手足として動かしているのだろう。

「相当ヤバイ相手だぜ」
「そのようです」

 半分以上地中に埋まっていた魔石を、サピィは片手で軽々と持ち上げた。

「お嬢、これは!」

 シーデーが、魔石を見て言葉を失う。なにかあったのだろうか?

「ええ。あの女の仕業みたいですね」

 サピィが、ダンジョンに埋められた魔石を回収する。

「おいおい、素手って。チョクでそんなもん触って、大丈夫なのか?」
「平気です。わたしは魔族なので」
「ひええ。おったまげたねぇ」

 サピィの正体を知って、ビョルンが舌を巻く。

「それよりビョルンさん、ルエ・ゾンさんとの面談を早急に」

 ただならぬサピィの気配に、ビョルンは目を丸くした。

「わたしは、こんなことができる卑劣な輩に、心当たりがあります。ダンジョンで起きている異変も、我々なら解決できるかと」

 サピィの言葉を聞きながら、ビョルンはあっけにとられている。しかし、すぐに返答した。

「……わかったよ。そのデカイ魔石が、なによりの証拠だ。そいつを見せりゃあ、あの爺さまも態度を改めるだろう」

 俺たちは、災厄の塔から立ち去ることにした。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

えっ、能力なしでパーティ追放された俺が全属性魔法使い!? ~最強のオールラウンダー目指して謙虚に頑張ります~

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
コミカライズ10/19(水)開始! 2024/2/21小説本編完結! 旧題:えっ能力なしでパーティー追放された俺が全属性能力者!? 最強のオールラウンダーに成り上がりますが、本人は至って謙虚です ※ 書籍化に伴い、一部範囲のみの公開に切り替えられています。 ※ 書籍化に伴う変更点については、近況ボードを確認ください。 生まれつき、一人一人に魔法属性が付与され、一定の年齢になると使うことができるようになる世界。  伝説の冒険者の息子、タイラー・ソリス(17歳)は、なぜか無属性。 勤勉で真面目な彼はなぜか報われておらず、魔法を使用することができなかった。  代わりに、父親から教わった戦術や、体術を駆使して、パーティーの中でも重要な役割を担っていたが…………。 リーダーからは無能だと疎まれ、パーティーを追放されてしまう。  ダンジョンの中、モンスターを前にして見捨てられたタイラー。ピンチに陥る中で、その血に流れる伝説の冒険者の能力がついに覚醒する。  タイラーは、全属性の魔法をつかいこなせる最強のオールラウンダーだったのだ! その能力のあまりの高さから、あらわれるのが、人より少し遅いだけだった。  タイラーは、その圧倒的な力で、危機を回避。  そこから敵を次々になぎ倒し、最強の冒険者への道を、駆け足で登り出す。  なにせ、初の強モンスターを倒した時点では、まだレベル1だったのだ。 レベルが上がれば最強無双することは約束されていた。 いつか彼は血をも超えていくーー。  さらには、天下一の美女たちに、これでもかと愛されまくることになり、モフモフにゃんにゃんの桃色デイズ。  一方、タイラーを追放したパーティーメンバーはというと。 彼を失ったことにより、チームは瓦解。元々大した力もないのに、タイラーのおかげで過大評価されていたパーティーリーダーは、どんどんと落ちぶれていく。 コメントやお気に入りなど、大変励みになっています。お気軽にお寄せくださいませ! ・12/27〜29 HOTランキング 2位 記録、維持 ・12/28 ハイファンランキング 3位

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

処理中です...