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2-3 贋作の製造元を、殴りに行きます
枸櫞《くえん》の魔女 ソーマタージ・オブ・シトロン
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サドラーはペールディネの真下だ。
しかし、ペールディネ大陸が広くて、なかなか辿りつけない。
「フェリシアさん、あなたはかつて、魔女に育てられたと言っていましたね?」
「そうよ。雷の魔法が得意だったわ」
「雷使いの魔女と言うと、『枸櫞の魔女』こと、【ソーマタージ・オブ・シトロン】ですよね?」
サピィが、国王に質問をする。
「よくご存知ね?」
「伝説だけは。千年近く生きているエルフだそうで。かつて、魔王ダミアーニ公も手を焼いたと」
人と魔族との争いに知恵を貸し、何度もダミアーニ側の作戦を潰したそうだ。
「何より、魔導占術師という理論を打ち立てた、第一人者ですから」
「ということは、彼女も魔族の血を引いている?」
「はい。彼女はエルフであり、魔族です。いわゆる、ダークエルフですね」
天使に近いものをエルフ、魔族に近い存在をダークエルフというらしい。
クエンの魔女は魔族側でありながら、人間に手を貸していたのか。
「中康の立場だったのです。人と魔族のバランス重視ですね」
人間の味方をする魔族たちに、魔導占術師というジョブを与えたという。
「具体的には、どんなジョブなんだ?」
「隠された秘宝や情報を探ったり、敵の弱点や隠れ場所を見つけたりですね」
魔族は狡猾だ。正攻法で勝てる相手ではない。
からめ手を使う輩を相手にする。
そのため、クエンの魔女はマギ・マンサーというジョブを作ったのだ。
「理由がすごくて、『それくらいないと、人間は勝てないだろうから』って」
魔族の中でも、相当の変わり者だったらしい。
「そんな伝説の人物と、よくツテがあったな?」
「ペールディネは、激戦区だったらしいから」
以前の文明が残っているのも、ペールディネの軍事力が高かったからだそうだ。
「だから、フェリシアはあんなにも強かったのか」
「このハンドキャノンは、そのとき手紙とともに託されたものよ」
フェリシアが見せてくれたのは、リボルバータイプの拳銃だ。
といっても、規格外に大きい。
陶芸品のような光沢の銃身に、金色の装飾が施されている。
魔力が微量ながら流れているようだ。
「銃の名前は、福音というの。神様の教えを雑音呼ばわりなんて、あの人らしいわ」
フェリシアが苦笑する。
俺は、ハンドキャノンを触らせてもらった。
敵意がないため、秘宝殺しは発動しない。
片手で持つのがやっとの重さだ。
「大きいな。それにこれは、アーティファクトじゃないか」
「でも、動力がわからないの」
たしかに、薬室に弾が入っていない。
というより、弾丸を入れる場所がなかった。
「この手の銃って、魔法を込めるんじゃないのかー?」
「試したわ」
トウコが聞くと、フェリシアはそう答える。
「でも、ダメだった。魔力を注ぎ込むタイプじゃないみたいなの」
なにか、薬室にモノを入れるのだろう。
それがなんなのか、わからないが。
「悔しいわね。認めていないって意味なのかしら?」
銃を手で叩きながら、フェリシアは考えを巡らえているように見えた。
「魔女に直接、聞かなかったので?」
「もういなくなった後だったし。手がかりも何一つ残さず、キレイサッパリ行方をくらましたわ」
ちょうど、今のルートを辿れば跡地に着くという。
「あそこよ」
窓から顔を出し、フェリシアが指をさす。
草原の中に、小さな森があった。
異様なのが、俺にもわかる。
この環境下で、その森は明らかに不自然な発生の仕方をしていた。
ドーム型の透明な半円で覆われているのもおかしい。
「生えている木が、外とぜんぜん違うぞー」
「動物も、違っているようですな」
トウコとシーデーが、同じような感想を述べる。
「魔女の館というより、実験場を思わせるな」
生態系もまるで違う。
サピィが、森の奥を指差した。
「一度、寄ってみませんか?」
しかし、ペールディネ大陸が広くて、なかなか辿りつけない。
「フェリシアさん、あなたはかつて、魔女に育てられたと言っていましたね?」
「そうよ。雷の魔法が得意だったわ」
「雷使いの魔女と言うと、『枸櫞の魔女』こと、【ソーマタージ・オブ・シトロン】ですよね?」
サピィが、国王に質問をする。
「よくご存知ね?」
「伝説だけは。千年近く生きているエルフだそうで。かつて、魔王ダミアーニ公も手を焼いたと」
人と魔族との争いに知恵を貸し、何度もダミアーニ側の作戦を潰したそうだ。
「何より、魔導占術師という理論を打ち立てた、第一人者ですから」
「ということは、彼女も魔族の血を引いている?」
「はい。彼女はエルフであり、魔族です。いわゆる、ダークエルフですね」
天使に近いものをエルフ、魔族に近い存在をダークエルフというらしい。
クエンの魔女は魔族側でありながら、人間に手を貸していたのか。
「中康の立場だったのです。人と魔族のバランス重視ですね」
人間の味方をする魔族たちに、魔導占術師というジョブを与えたという。
「具体的には、どんなジョブなんだ?」
「隠された秘宝や情報を探ったり、敵の弱点や隠れ場所を見つけたりですね」
魔族は狡猾だ。正攻法で勝てる相手ではない。
からめ手を使う輩を相手にする。
そのため、クエンの魔女はマギ・マンサーというジョブを作ったのだ。
「理由がすごくて、『それくらいないと、人間は勝てないだろうから』って」
魔族の中でも、相当の変わり者だったらしい。
「そんな伝説の人物と、よくツテがあったな?」
「ペールディネは、激戦区だったらしいから」
以前の文明が残っているのも、ペールディネの軍事力が高かったからだそうだ。
「だから、フェリシアはあんなにも強かったのか」
「このハンドキャノンは、そのとき手紙とともに託されたものよ」
フェリシアが見せてくれたのは、リボルバータイプの拳銃だ。
といっても、規格外に大きい。
陶芸品のような光沢の銃身に、金色の装飾が施されている。
魔力が微量ながら流れているようだ。
「銃の名前は、福音というの。神様の教えを雑音呼ばわりなんて、あの人らしいわ」
フェリシアが苦笑する。
俺は、ハンドキャノンを触らせてもらった。
敵意がないため、秘宝殺しは発動しない。
片手で持つのがやっとの重さだ。
「大きいな。それにこれは、アーティファクトじゃないか」
「でも、動力がわからないの」
たしかに、薬室に弾が入っていない。
というより、弾丸を入れる場所がなかった。
「この手の銃って、魔法を込めるんじゃないのかー?」
「試したわ」
トウコが聞くと、フェリシアはそう答える。
「でも、ダメだった。魔力を注ぎ込むタイプじゃないみたいなの」
なにか、薬室にモノを入れるのだろう。
それがなんなのか、わからないが。
「悔しいわね。認めていないって意味なのかしら?」
銃を手で叩きながら、フェリシアは考えを巡らえているように見えた。
「魔女に直接、聞かなかったので?」
「もういなくなった後だったし。手がかりも何一つ残さず、キレイサッパリ行方をくらましたわ」
ちょうど、今のルートを辿れば跡地に着くという。
「あそこよ」
窓から顔を出し、フェリシアが指をさす。
草原の中に、小さな森があった。
異様なのが、俺にもわかる。
この環境下で、その森は明らかに不自然な発生の仕方をしていた。
ドーム型の透明な半円で覆われているのもおかしい。
「生えている木が、外とぜんぜん違うぞー」
「動物も、違っているようですな」
トウコとシーデーが、同じような感想を述べる。
「魔女の館というより、実験場を思わせるな」
生態系もまるで違う。
サピィが、森の奥を指差した。
「一度、寄ってみませんか?」
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