83 / 230
第二部 敵の名は、海賊版《ブートレグ》 2-1 殴りウィザード、王様に会いに行きます。
ヴァイパー族の襲撃:サピィサイド
しおりを挟む
門番にまで礼を言われ、サピロスたちはダミアーニ卿の城を後にした。
もう、こんな衣装に身を包むこともあるまい。
この服は、友を弔うために用意したもの。
用件は済んだ。
この服は、悲しい思い出を染み込ませすぎた。
早く脱いでしまいたい。
手頃な街に足を運んで、元の服に戻す。
街が騒がしい。何かあったのだろうか。
「サピロス姫、門の前に」
街の外壁を超えた先にいたのは、無数のヘビ族だった。
頭と胴体がヘビで、長い爪を持った両腕を持つ。
数名の市民が、犠牲になったようだ。
友人の葬儀を終えたばかりだと言うのに、血が流れるなんて。
「我らは、ヴァイパー族。スライムの小娘よ、死にたくなければ道を開けるがよい」
「ここより先は、グスターヴォ・ダミアーニ卿の領地ですよ?」
「知っている。だからこそ用があるのだ」
そうだった。
ヴァイパー族は、ダミアーニと対立していたことを思い出す。
「ダミアーニの最強伝説は、ここで途絶える。道を開けろ、小娘」
お山の大将を引きずり下ろして、名を挙げたいタイプの魔物か。
なんと器の小さい。
「我らが魔王であるヴァスキーは、ダミアーニと争って破れた。グスターヴォ・ダミアーニは我らが魔王の仇!」
街を囲むヴァイパー族たちが、一斉に吠えた。
大地が震えるほどの咆哮である。
「威勢だけはいいようですね」
「なんと、スライムごときが引かぬと言うか?」
「誰が、引き下がるですって?」
ダミアーニに恩を売るつもりはない。
しかし、友の葬儀の場を血で汚すのは気が引ける。
ダミアーニとて、容赦しないだろう。
「ここから先は、わたしを倒してから通りなさい」
ならば、さらなる流血は免れまい。
「全員まとめて、かかっていらっしゃいな」
ここで、すべて仕留める。
ヴァイパー族のリーダーが青筋を立てながら口角を上げた。
「舐めた口を! かかれ!」
リーダーが、号令をかける。
ヴァイパー族が、サピロス一人に照準を絞った。一斉に飛びかかる。
そのことごとくを、【マジック・ミサイル】で撃ち落とす。
それだけで、ヴァイパー族の群れは半壊した。
ヴァイパー族は回避することもできず、爆死する。
群れから分裂して街へ入り込もうとする連中も、サピロスはミサイルの餌食にした。
もちろん、街には一切被害を出さず。
「な、ばかな!?」
バカは、どちらだろうか? 誰にケンカを売ったと思っているのだ?
「街を覆い尽くすほどの勢力を、たった一人で……」
「残りは、あなただけです」
「くそ。しかし、なめるなよ小娘!」
ヴァイパー族の肉体が、盛り上がった。
ウロコから、機械を埋め込んだ形跡が覗く。
「改造手術を受けましたか」
「左様! ダミアーニ打倒のためなら、この肉体を捨てることも厭わぬ!」
「愚かな。復讐にだけ囚われて、自身を見失いましたか」
「ほざけえ!」
巨大化したリーダーヴァイパーが、口から高熱のブレスを吐き出す。
まるでドラゴン気取りだ。
実際、ドラゴンを模したのかも知れないが。
サピロスは、腕のマジック・シールドでブレスを受け止めた。
「なんだと!?」
「ブレスを吐いた程度で、勝った気にならないでください」
我々が、どれだけの修羅場をくぐってきたと思っているのか。
「もうお逝きなさい。【インフェルノ】!」
地獄の黒い業火を召喚し、巨大ヴァイパー族を火炙りにした。
「インフェルノだと!? スライム、貴様はいったい!?」
「わたしですか。わたしも【魔王】ですよ」
「そうか、ビヨンド・オブ・ワースト……おおおおおお!」
機械のボディでなんとか持ちこたえていたが、ヴァイパー族は熱に耐えきれなくなって絶命した。
まだ残党が残っている。始末するか。
だが、ヴァイパー族は銃撃によって壊滅した。
「お見事でした。あとはお任せを」
さっきの老執事が、兵を率いて現れる。
ダミアーニ卿の差し金か。
もし、ランバートに出会っていなければ、自分もああなっていたかもしれない。
復讐に心を失って。
もう、こんな衣装に身を包むこともあるまい。
この服は、友を弔うために用意したもの。
用件は済んだ。
この服は、悲しい思い出を染み込ませすぎた。
早く脱いでしまいたい。
手頃な街に足を運んで、元の服に戻す。
街が騒がしい。何かあったのだろうか。
「サピロス姫、門の前に」
街の外壁を超えた先にいたのは、無数のヘビ族だった。
頭と胴体がヘビで、長い爪を持った両腕を持つ。
数名の市民が、犠牲になったようだ。
友人の葬儀を終えたばかりだと言うのに、血が流れるなんて。
「我らは、ヴァイパー族。スライムの小娘よ、死にたくなければ道を開けるがよい」
「ここより先は、グスターヴォ・ダミアーニ卿の領地ですよ?」
「知っている。だからこそ用があるのだ」
そうだった。
ヴァイパー族は、ダミアーニと対立していたことを思い出す。
「ダミアーニの最強伝説は、ここで途絶える。道を開けろ、小娘」
お山の大将を引きずり下ろして、名を挙げたいタイプの魔物か。
なんと器の小さい。
「我らが魔王であるヴァスキーは、ダミアーニと争って破れた。グスターヴォ・ダミアーニは我らが魔王の仇!」
街を囲むヴァイパー族たちが、一斉に吠えた。
大地が震えるほどの咆哮である。
「威勢だけはいいようですね」
「なんと、スライムごときが引かぬと言うか?」
「誰が、引き下がるですって?」
ダミアーニに恩を売るつもりはない。
しかし、友の葬儀の場を血で汚すのは気が引ける。
ダミアーニとて、容赦しないだろう。
「ここから先は、わたしを倒してから通りなさい」
ならば、さらなる流血は免れまい。
「全員まとめて、かかっていらっしゃいな」
ここで、すべて仕留める。
ヴァイパー族のリーダーが青筋を立てながら口角を上げた。
「舐めた口を! かかれ!」
リーダーが、号令をかける。
ヴァイパー族が、サピロス一人に照準を絞った。一斉に飛びかかる。
そのことごとくを、【マジック・ミサイル】で撃ち落とす。
それだけで、ヴァイパー族の群れは半壊した。
ヴァイパー族は回避することもできず、爆死する。
群れから分裂して街へ入り込もうとする連中も、サピロスはミサイルの餌食にした。
もちろん、街には一切被害を出さず。
「な、ばかな!?」
バカは、どちらだろうか? 誰にケンカを売ったと思っているのだ?
「街を覆い尽くすほどの勢力を、たった一人で……」
「残りは、あなただけです」
「くそ。しかし、なめるなよ小娘!」
ヴァイパー族の肉体が、盛り上がった。
ウロコから、機械を埋め込んだ形跡が覗く。
「改造手術を受けましたか」
「左様! ダミアーニ打倒のためなら、この肉体を捨てることも厭わぬ!」
「愚かな。復讐にだけ囚われて、自身を見失いましたか」
「ほざけえ!」
巨大化したリーダーヴァイパーが、口から高熱のブレスを吐き出す。
まるでドラゴン気取りだ。
実際、ドラゴンを模したのかも知れないが。
サピロスは、腕のマジック・シールドでブレスを受け止めた。
「なんだと!?」
「ブレスを吐いた程度で、勝った気にならないでください」
我々が、どれだけの修羅場をくぐってきたと思っているのか。
「もうお逝きなさい。【インフェルノ】!」
地獄の黒い業火を召喚し、巨大ヴァイパー族を火炙りにした。
「インフェルノだと!? スライム、貴様はいったい!?」
「わたしですか。わたしも【魔王】ですよ」
「そうか、ビヨンド・オブ・ワースト……おおおおおお!」
機械のボディでなんとか持ちこたえていたが、ヴァイパー族は熱に耐えきれなくなって絶命した。
まだ残党が残っている。始末するか。
だが、ヴァイパー族は銃撃によって壊滅した。
「お見事でした。あとはお任せを」
さっきの老執事が、兵を率いて現れる。
ダミアーニ卿の差し金か。
もし、ランバートに出会っていなければ、自分もああなっていたかもしれない。
復讐に心を失って。
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!
八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。
『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。
魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。
しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も…
そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。
しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。
…はたして主人公の運命やいかに…
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
えっ、能力なしでパーティ追放された俺が全属性魔法使い!? ~最強のオールラウンダー目指して謙虚に頑張ります~
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
コミカライズ10/19(水)開始!
2024/2/21小説本編完結!
旧題:えっ能力なしでパーティー追放された俺が全属性能力者!? 最強のオールラウンダーに成り上がりますが、本人は至って謙虚です
※ 書籍化に伴い、一部範囲のみの公開に切り替えられています。
※ 書籍化に伴う変更点については、近況ボードを確認ください。
生まれつき、一人一人に魔法属性が付与され、一定の年齢になると使うことができるようになる世界。
伝説の冒険者の息子、タイラー・ソリス(17歳)は、なぜか無属性。
勤勉で真面目な彼はなぜか報われておらず、魔法を使用することができなかった。
代わりに、父親から教わった戦術や、体術を駆使して、パーティーの中でも重要な役割を担っていたが…………。
リーダーからは無能だと疎まれ、パーティーを追放されてしまう。
ダンジョンの中、モンスターを前にして見捨てられたタイラー。ピンチに陥る中で、その血に流れる伝説の冒険者の能力がついに覚醒する。
タイラーは、全属性の魔法をつかいこなせる最強のオールラウンダーだったのだ! その能力のあまりの高さから、あらわれるのが、人より少し遅いだけだった。
タイラーは、その圧倒的な力で、危機を回避。
そこから敵を次々になぎ倒し、最強の冒険者への道を、駆け足で登り出す。
なにせ、初の強モンスターを倒した時点では、まだレベル1だったのだ。
レベルが上がれば最強無双することは約束されていた。
いつか彼は血をも超えていくーー。
さらには、天下一の美女たちに、これでもかと愛されまくることになり、モフモフにゃんにゃんの桃色デイズ。
一方、タイラーを追放したパーティーメンバーはというと。
彼を失ったことにより、チームは瓦解。元々大した力もないのに、タイラーのおかげで過大評価されていたパーティーリーダーは、どんどんと落ちぶれていく。
コメントやお気に入りなど、大変励みになっています。お気軽にお寄せくださいませ!
・12/27〜29 HOTランキング 2位 記録、維持
・12/28 ハイファンランキング 3位
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる