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1-5 黒幕の配下を、殴りに行きます
【オーブ】のジュエル
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このガラクタは、さっき俺たちを避けて走って逃げたヨロイか。
見た目はたしかに、テン・リューに見えた。
だが、さきほど感じた禍々しさは微塵も感じず、表面も無残に錆びついている。
「ペールディネ付近で、テン・リューと思しき生きたヨロイを見つけましたぞ」
「なぜ、なぜこんな変わり果てた姿に!?」
「発見時、一切の魔力がなくなっておりました。この傷口から、なにかよからぬものが侵食したようですな」
「むう……この傷跡は!」
俺がつけた傷口を見て、マンティダエは戦慄した。
「……そうか、これが伝説の【秘宝殺し】、レア・ブレイクか。そうか。わかりましたぞ、この人間の謎! 一刻も早く、ジェンマ様に報告を……」
立ち上がろうとしたが、マンティダエの身体は永劫の炎にむなしく溶け落ちる。
「かような人間を味方につけるとは! おのれ落涙公、おのれええええええ……」
白骨の手はサピィへと届くことなく、崩れ落ちた。
相手の心理さえ逆手に取る、サピィの勝利だ。
サピィが、地に降り立つ。その途端に、バランスを崩した。
「いかん、サピィ!」
俺は、床に倒れそうになったサピィを抱きとめる。
「大丈夫か?」
「はい。さすがに一撃でデーモンを倒すとなると、骨が折れますね」
ですが、とサピィは続けた。
「レベルアップしました」
そうか。サピィの狙いは、これだったんだ。レベルを上げるには、自分で魔物を倒すしかない。
「これが、【オーブ】です」
スフィアよりひときわ大きい、球状のダイヤジュエルを手に掴んでいる。
「今の私が手に入れられる、最高スケールのフィーンド・ジュエルです」
オーズサイズのジュエルを作るために、サピィはデーモンと死闘を演じたのだ。
「ありがとう、サピィ。でも、もうこんなムチャはしないでくれ」
「ムチャをしなければ、ジェンマに手が届きません」
サピィの意思は固い。その思考が、死に繋がらなければいいが。
「ダメだ。お前には生きていてほしい」
俺はもう、大事な人を二度と喪いたくない。
「お前は、ジュエルを生み出すだけの道具じゃないんだ。俺たちの仲間だ! もっと自分を大切にしてくれ」
俺の背中に、サピィの手が回った。
「ランバート。ありがとう。でも……」
「でも、なんだ?」
「この体勢は、ちょっと」
サピィがずっと、顔を赤らめていた。
「どうしたサピィ? 熱でも」
さっきから、サピィの体温が高い。
「いえ、そうではなくて、ですねぇ」
よく考えたら、俺はずっとサピィを抱きしめている。
俺はやっと、自分が何をしているかに気がついた。
「おわ、すまん!」
慌てて、俺はサピィから離れる。
「いえ、いいんです。ありがとうランバー、ト」
しかし、またサピィはよろめいた。
これは、また抑えてやっていいものか。
一瞬ためらってしまう。
「うわっと。アタシが肩を貸すぞー」
同性であるトウコが、なんの気兼ねなしにサピィを抱きとめる。
サピィの丹田の辺りに、トウコは治癒魔法をかけた。
「一応、血は止まってる。けれど、これから先はアタシの力だけじゃ無理だな。腹いっぱい食べるか、エリクサークラスの治療薬を飲んでくれ」
「ありがとうございます、トウコさん」
外部から栄養を取り込まないと、今のサピィは回復しないらしい。
モンクレベルの治癒師が言うんだから、真実だろう。
ありったけのポーションを、俺はサピィに飲ませた。
トウコも、自分用の非常食をサピィへ差し出す。
「みなさん、ありがとうございます」
干し肉や乾燥パンを頬張りながら、サピィは何度も頭を下げた。
「ところでサピィ、秘宝殺しとは?」
「話せば、長くなります」
俺の問いかけに、サピィは黙り込む。
「構わん。教えてくれ。あのヨロイについた傷跡は、俺が付けたものだろ? 何か知っていることがあるんじゃないか?」
「コナツさんの元へ、戻りましょう。すべてはそこでお話します」
まずはコナツの工房へ戻り、完成した装備をもらうことに。
見た目はたしかに、テン・リューに見えた。
だが、さきほど感じた禍々しさは微塵も感じず、表面も無残に錆びついている。
「ペールディネ付近で、テン・リューと思しき生きたヨロイを見つけましたぞ」
「なぜ、なぜこんな変わり果てた姿に!?」
「発見時、一切の魔力がなくなっておりました。この傷口から、なにかよからぬものが侵食したようですな」
「むう……この傷跡は!」
俺がつけた傷口を見て、マンティダエは戦慄した。
「……そうか、これが伝説の【秘宝殺し】、レア・ブレイクか。そうか。わかりましたぞ、この人間の謎! 一刻も早く、ジェンマ様に報告を……」
立ち上がろうとしたが、マンティダエの身体は永劫の炎にむなしく溶け落ちる。
「かような人間を味方につけるとは! おのれ落涙公、おのれええええええ……」
白骨の手はサピィへと届くことなく、崩れ落ちた。
相手の心理さえ逆手に取る、サピィの勝利だ。
サピィが、地に降り立つ。その途端に、バランスを崩した。
「いかん、サピィ!」
俺は、床に倒れそうになったサピィを抱きとめる。
「大丈夫か?」
「はい。さすがに一撃でデーモンを倒すとなると、骨が折れますね」
ですが、とサピィは続けた。
「レベルアップしました」
そうか。サピィの狙いは、これだったんだ。レベルを上げるには、自分で魔物を倒すしかない。
「これが、【オーブ】です」
スフィアよりひときわ大きい、球状のダイヤジュエルを手に掴んでいる。
「今の私が手に入れられる、最高スケールのフィーンド・ジュエルです」
オーズサイズのジュエルを作るために、サピィはデーモンと死闘を演じたのだ。
「ありがとう、サピィ。でも、もうこんなムチャはしないでくれ」
「ムチャをしなければ、ジェンマに手が届きません」
サピィの意思は固い。その思考が、死に繋がらなければいいが。
「ダメだ。お前には生きていてほしい」
俺はもう、大事な人を二度と喪いたくない。
「お前は、ジュエルを生み出すだけの道具じゃないんだ。俺たちの仲間だ! もっと自分を大切にしてくれ」
俺の背中に、サピィの手が回った。
「ランバート。ありがとう。でも……」
「でも、なんだ?」
「この体勢は、ちょっと」
サピィがずっと、顔を赤らめていた。
「どうしたサピィ? 熱でも」
さっきから、サピィの体温が高い。
「いえ、そうではなくて、ですねぇ」
よく考えたら、俺はずっとサピィを抱きしめている。
俺はやっと、自分が何をしているかに気がついた。
「おわ、すまん!」
慌てて、俺はサピィから離れる。
「いえ、いいんです。ありがとうランバー、ト」
しかし、またサピィはよろめいた。
これは、また抑えてやっていいものか。
一瞬ためらってしまう。
「うわっと。アタシが肩を貸すぞー」
同性であるトウコが、なんの気兼ねなしにサピィを抱きとめる。
サピィの丹田の辺りに、トウコは治癒魔法をかけた。
「一応、血は止まってる。けれど、これから先はアタシの力だけじゃ無理だな。腹いっぱい食べるか、エリクサークラスの治療薬を飲んでくれ」
「ありがとうございます、トウコさん」
外部から栄養を取り込まないと、今のサピィは回復しないらしい。
モンクレベルの治癒師が言うんだから、真実だろう。
ありったけのポーションを、俺はサピィに飲ませた。
トウコも、自分用の非常食をサピィへ差し出す。
「みなさん、ありがとうございます」
干し肉や乾燥パンを頬張りながら、サピィは何度も頭を下げた。
「ところでサピィ、秘宝殺しとは?」
「話せば、長くなります」
俺の問いかけに、サピィは黙り込む。
「構わん。教えてくれ。あのヨロイについた傷跡は、俺が付けたものだろ? 何か知っていることがあるんじゃないか?」
「コナツさんの元へ、戻りましょう。すべてはそこでお話します」
まずはコナツの工房へ戻り、完成した装備をもらうことに。
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