レアドロップしない男、魔法付与装備を生成できる女スライム魔王に溺愛されて、【レアアイテムを破壊する男】として覚醒!

椎名 富比路

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1-4 ダンジョンの闇を、殴りにいきます

第七区画《セグメント・セブン》

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「派手に参りましょう!」

 早撃ちによって、キンバリーは魔物たちの眉間を撃ち抜く。

「受付嬢に、お触りは禁止ですので!」

 モンスターは、キンバリーに近づくことさえできない。

「おお、やるね」

 一瞬で魔物を蹴散らしたキンバリーの腕は、本物だ、さすがハンターギルドの役員である。

「では、私はここで待機しておきます」

 キンバリーが、銃を収めた。ここで待つという。

「いや、あんたらは帰ってくれ。問題が起きたら、連絡をする」

 彼女たちにまで死なれたら困る。

「この機動馬車は、救護者運搬も兼ねています。それに、ゴブリン程度なら処理できます」
「わかった。ムチャはするなよ?」
「心得ています。ではお気をつけて」

 
 俺たちは、【第七区画セグメント・セブン】へと脚を踏み入れた。

 構造自体は複雑ではない。ほぼ一本道である。しかし、奥へ進めば進むほど、瘴気が濃くなっていくのだ。

「このトンネルは、人類が魔導エネルギーを取り出そうとする以前から存在していたみたいですね」
「ああ。まだ電力が発達していた時代の産物らしい」

 化石燃料の枯渇問題が本格化した時代、世界は「魔」という元素があることを発見する。無限とも思われた「魔」のエネルギーは強力で、人類は髪に近い力を得た。

 しかし、人類には過ぎた代物だったのである。たちまち異形たちは自分たちの元素が別世界に吸われていることを察知して、回収に向かった。

 人類は抵抗するも、魔の力にほとんど抗えなかった。

「先代落涙公から、聞かされています。私たち魔物は、人類と手を組み、人類を守ったと。それが、魔族にとっては気に食わなかったとも」
「あんたらが人間側に付いたのは、魔族側の横暴な政策が原因だったと聞いている」

 魔物は魔族の下に位置しているのだから、魔族の盾になって死ぬべきという考えが、末端にまで浸透していたらしい。
 末端従業員扱いのレッサーデーモンどころか、小悪魔のインプまで、魔物を見下していたそうな。

 魔物の奮起は、下剋上が目的だった。

「まさしくそのとおりでした。ですが、結局文明は崩壊してしまいました」 

 その現状がコレである。ほとんどの文明は退化し、危うく人の住めない星に変わるところだった。

「来るぞ。大コウモリと、ガーゴイルだな」

 デーモンタイプの敵が、翼を携えて急降下してくる。

「ランバート殿、コナツ殿によって強化された我をご覧いただこう」

 シーデーが、ライフルを両手に持って突撃した。

 ガーゴイルの群れを、シーデーがライフル攻撃によって駆逐していく。

 ではこちらも、イクリプスの試し切りと行くか。

「いくぞ【ディメンションセイバー】! オラア!」

 黒い剣を乱暴に振り回す。

 黄色と黒が混ざった炎が、衝撃刃となってガーゴイルの翼を断つ。ルビーをはめているから刃が火炎の形をしているだけだ。実際は、万能属性の光である。

【ディメンション・セイバー】は、俺の定番スキルとなっている。「魔法使いなんだから、遠距離で魔法を使え」というヤツもいるだろう。しかし、ディメンション・ソードの利点は、「詠唱しないで発動できる」点にあった。

 サピィやシーデーも戦陣に加わって、モンスターを蹴散らしていく。

 大コウモリが、衝撃刃の余波で切断されていく。アイテムを落とさなかった。魔物ではなく、自然生物だったらしい。

「オラぁ!」

 落下したガーゴイルに、俺は刃の先を突き刺した。近接の相手には、炎のエンチャントを食らわせる。

 サピィも同様に、風の魔法でガーゴイルの軌道を狂わせた。洗濯機のように回転する魔物へ向けて、シーデーが指マシンガンを放つ。光の弾丸が、ガーゴイルを蜂の巣にした。

 ガーゴイルが、豆状のダイヤを落とす。一粒だけだが、助かった。

 俺はコナツから分けてもらったジュエル用工具を取り出す。防具の空きソケットに、ダイヤを仕込んだ。これで、コナツの鍛冶屋まで戻らなくてもジュエルを有効活用できる。

「ふう、一気に魔力を削られるな」

 とはいえ、白いダイヤジュエルのおかげで魔力が回復していった。

「調査隊の姿がないな」

 先へ進むと、調査団の屍があちこちに。
 モンスターたちが、死体の肉を食らっていた。
 弔いのため、シーデーが魔物たちを指マシンガンで蹴散らす。

「これだけ上等な装備に身を包んでいても死ぬとは。かなりの相手か」
「ハンターと比較しても、信用できる方たちですのに」
「ああ。それだけ敵が強いということだろう」

 彼らが潜って、時間が発ちすぎたらしい。魔物の数が減っていなかった。

「急ぎませんとな」
「そのようだ。もうボスか」

 現れたのは、翼の生えたアナコンダ、『ジャージャー・デビル』である。この細い通路にふさわしい、大型ボスだ。

「あのヘビの後ろを見てください! 道があります!」

 よく見ると、大蛇は壁に空いた穴を守っているらしかった。このフロアというより、あの壁を塞ぐように配置されたのだろう。


「おお、例の石もあるぞ」

 黒い石の塊も、発見した。あれを壊せば、ここも少しはマシになりそうだ。

 明らかに、ダンジョンとは別の意思が働いている。
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