レアドロップしない男、魔法付与装備を生成できる女スライム魔王に溺愛されて、【レアアイテムを破壊する男】として覚醒!

椎名 富比路

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1-3 レアを作って、殴りに行きます

亜種撃退

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「ふん!」

 紙一重で、俺は前転してキックをかわす。

「くう!」

 コカトリスの爪が、わずかに背中をかすめた。

「なんだこのデカさは?」

 やたら大きい。並のコカトリスより、サイズが一回りほど違う。色も薄気味悪いピンク色だ。

「亜種じゃ! 手強いぞい!」

 騎士が足を上げた。震脚で、亜種コカトリスを封じ込めようとする。

 しかし、動きが止まらない。逆に、亜種の一体が騎士に突進した。同族であるはずの卵を踏み潰して。

「どうして卵を潰してるんだ?」
「亜種は亜種で、自分の巣があるのじゃ」

 通常の種族は、亜種にとって敵だという。

「くそ、やめさせないと……なに!?」

 両足に、力が入らない。

「コカトリスの毒か」

 爪で背中を引っかかれたとき、毒が体内に入ったか。

「ランバート殿! お嬢様!」
「お任せを!」

 俺に向かって、サピィが解毒ポーションを投げつける。
 シーデーがキャッチし、俺の手にポーションを渡す。

「助かる」

 一気に煽ると、力が復活した。

 回復の間、シーデーが威嚇射撃を放つ。

 しかし、コカトリス亜種にまったく止まる気配はない。敵対心と生存本能が、とどまることを知らなかった。

「やばい! サピィは卵を拾いまくってくれ!」
「はいっ!」

 サピィが両腕から、使い魔である同族を呼び出す。

 小型スライムがコカトリスの攻撃をすり抜けながら、器用に卵を回収していく。

 それでも、コカトリス亜種は卵をスライムごと踏み潰そうとする。

「させるか。【コールドアーマー】、おらああ!」

 俺は、バルディッシュを地面に突き刺す。広範囲を氷結させる魔法を、地上に放った。

 コカトリスの一体を、氷のフィールドが捉えた。猛烈なスピードで走るコカトリスの両足が、一瞬で凍りつく。

 走った勢いで、コカトリスの両足が根元から折れた。勢いよく、凍った地面に激突する。両足がちぎれたコカトリスが、氷の地面から逃れようともがく。

 コールドアーマーが、さらにコカトリスの側面へとへばりついた。

 コカトリスが動けなくなったところを、俺は歩み寄る。

 苦し紛れに、亜種は俺へと口を開く。毒ガスを吐く気だ。

「さっきのお返しだ。おらああ!」

 バルディッシュを、コカトリスの首に突き刺す。

 どうにか、コカトリス亜種の一体は倒した。

 だが、別個体はデーニッツと一対一に。
 
 猛毒の爪を以て、コカトリス亜種がエーニッツを蹴り飛ばそうとした。

 デーニッツは直剣の方で受け止め、側面へ流す。

 亜種は反転し、今度は体当りしてきた。

「おほほい! 力比べとな! 面白い!」

 剣を交差させて、デーニッツは亜種と首相撲に。巨体を相手にしているのに、騎士は揺るがない。

 コカトリス亜種の眼が、恐怖で震えだす。
 ノドを固定されている。これでは、ゼロ距離でブレスを履けない。
 攻撃を全部、見透かされていた。


 デーニッツの身体が、反転する。一瞬、コカトリスが首相撲に競り勝ち、打ち上げたのだと思った。違う。デーニッツが力をそらしたのだ。

 亜種コカトリスが、バランスを失ってつんのめる。
 その首を、デーニッツは両手の剣で挟み込む。

「ええ声で鳴けよっ! 斬!」

 コカトリス亜種の首を、騎士がはね飛ばした。

 ドン、と、俺の足元にコカトリスの頭が落ちる。

「次は、俺たちか?」

 骸骨剣士は「フン」と鼻を鳴らした。

「いや。お目当てのアイテムは見つかったわい」

 コカトリスの死骸から、虹色の羽が見つかる。

「これを求めていた。レアアイテムの【猛毒の羽】なり」

 羽こそコカトリスの毒の源であり、中でも虹色の羽は毒性がより強い。一振りしただけで、毒ガスが辺りに充満するとか。

 そんな危険物を、デーニッツは素早くアイテムボックスにしまった。手甲の指部分が、わずかに溶けていた。



「我が名はデーニッツ。南エリア出身のバーバリアンなり」
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