レアドロップしない男、魔法付与装備を生成できる女スライム魔王に溺愛されて、【レアアイテムを破壊する男】として覚醒!

椎名 富比路

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1-3 レアを作って、殴りに行きます

殴りウィザードと、旋回バーバリアン

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「ぬはっはっは! これは心地よいぞ! さすが魔物によって鍛えられたレアアイテムよ!」

 二本の大剣を、コマのように回転しながら振り回している。右片方を順手に、左片方を逆手に持って。

 バーバリアンの代表的なスキル、【旋風斬せんぷうざん】だ。

「聞いたことがあります。『バーバリアンだから回るのではない。回るからバーバリアンなのだ』と」


 前衛はたいてい、相手の攻撃を受け止める「壁役」のイメージが強い。

 バーバリアンは特殊で、前衛職の中でも攻撃に特化した職業だ。【二刀流:両手持ち武器】という特技があり、両手で扱うような大型武器を片手で振る。
 シーデーのようなフォート族や、ドワーフが主に担当するが、あのドクロ騎士は人間のようだ。

「我も【アサルト】ですが、あそこまで動ける前衛の人間は知りませんな」

 同じ攻撃特化職であるシーデーが、相手の動きを観察する。アサルトとは突撃兵のことで、両手で重火器を扱う前衛職を言う。 

 回転して相手を切り刻む旋風斬は、バーバリアンの代名詞とも言われていた。

 対抗するは、魔獣コカトリスである。胴体はニワトリだが人間より大きく、蛇になったシッポを持つ。
 産卵期なのか、おびただしい数で群れをなしていた。
 
 間引きする目的は増えすぎると生態系を荒らすためである。が、卵が珍味という理由もあった。


「もっとだ。もっと魔剣【チョウシュー】と【ムトー】に血をよこせ! さればこのデーニッツはもっと強くなる!」

 デーニッツと名乗るバーバリアンの歳は、四〇代くらいか。ドクロをかたどった、金属製のカブトを被っている。
 戦闘狂らしく、コカトリスの群れを秒で壊滅させていた。普通、猛毒ガスを恐れて一体ずつ倒すものだが。


 思っていた矢先、コカトリスが大きく息を吸い込んだ。猛毒ブレスを吐く気だ。

「フンガーッ!」

 足を高々と上げて、デーニッツが相撲の四股のように踏みしめる。スキル【震脚しんきゃく】を発動した。
 これにより、足の早いコカトリスがスタン、つまり目を回す。

「ぬはは! 受けてみよ、【旋風斬せんぷうざん】!」

 コマのように回転を始め、デーニッツはコカトリスの首をはねていく。

 数の多いコカトリスを撃滅できたのは、このためか。

 生き残りのコカトリスが、ブレスをデーニッツに見舞う。

 しかし、旋風斬の回転に酔って生じた竜巻によって、ブレスは霧散した。

 攻撃した相手は、仲間と運命をともにする。

「デーニッツという男。あの強さを後押ししているのは、レアアイテムですな」

 シーデーが、メモリから相手の武装を分析した。あの武器や防具は、レアリティが高いという。

「装備に取り憑かれている気もしますが、大本は彼の強さですね」

 それにしても、あそこまで執拗にコカトリスを狩るとは。なにか目的があるのか?

「こちらにも、コカトリスが来ました!」

 巣を守ろうと、コカトリスが向かってきた。

「我にお任せを」

 出番がなかったシーデーが、コカトリスを指マシンガンで撃退する。

 コカトリスは、【チップ】等級のパールを吐き出す。属性攻撃に関連するジュエルだ。

「ふむ。新手とな?」

 銃弾の音に気づいたのだろう。デーニッツが、こちらを向いた。

「同族を狩る【ハンターキラー】はギルド内で禁じられているが、このデーニッツを満足させられるか、試す程度なら」

 デーニッツは、殺気立っている。両手剣を構え、今にも旋風斬を繰り出してきそうだ。

「悪いな。狩りの邪魔をしてしまったか?」

 こちらは、武装解除した。ハンターキラーは性に合わない。

「構えを解くでない!」

 ドクロの騎士に告げた。

 俺はバルディッシュをおろしたままにする。なんなんだ。ケンカがしたいならよそへ行け。

「後ろですランバート殿っ!」

 シーデーに言われて、俺は振り返る。

 つがいのコカトリスが、俺を蹴り殺そうとした。
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