26 / 31
試験最終日 「食欲に勝てないとか、魔王として恥ずかしくないの?」「よわよわ胃袋❤」
協会長の煽り
しおりを挟む
「おい、二人とも」
「は、はいっ。なんでしょう?」
「腹減ったろ? 冷めないうちに食えよ」
シチサブローが、フリオとケットシーにてんこ盛りのお肉を差し出す。
「食べていいの?」
まだ試験が続いていると思っているのか、フリオは箸を付けようとしない。
「もうガマンしなくていい。思う存分食え。お前らなら、大丈夫だ」
「うむ。おめでと。二人は立派なバディ。これからも、仲良くして欲しい」
テルルも、小さく拍手して二人を称えた。
「ありがとうございます!」
「ありがとーっ! いっただっきまーす!」
片方のフォークで、ケットシーはフリオに「あーん」する。フォーク二刀流で、自分も肉を喰らう。
フリオも、おいしそうに肉を頬張った。
「じゃああボクも、あーん」
「ありがとご主人! もぐもぐ」
フォークをケットシーから持たせてもらい、フリオはケットシーに肉をあげる。
「終わりだ。勝者は出たぜ」
「ならん! 皿を持った時点で、フリオ・ニールセンの敗北は決定だ!」
召喚士の親たちが、ケチを付け始めた。
親に煽られ、子どもたちも「そうだそうだ」と煽り立てる。
往生際の悪い野郎共だ。ああいうお偉いさんにはなりたくない。これだから貴族は。
「あうう」
皿を持ったまま、フリオはシュンとなる。
ただ一部の子どもたちは、フリオを祝福していた。王女と友人の姫騎士たちだ。数名の上位ランカーも同様である。
とはいえ、フリオに嫌悪感を示す貴族は少なくない。
「オレに任せろ」
フリオの頭に、シチサブローはポンと手を置いた。
「なんだてめえら。往生際の悪いのはどっちだ? フリオたちは、ちゃんとガマンできたのに。お貴族様ともあろう者が、平民相手に嫉妬してしまったか?」
ここぞとばかりに、シチサブローは彼らのプライドをズタズタにする。
「どんな気持ちだ? こんな形で平民に負けた気分は? テメエらは、他人を蹴落とすことしか考えていない。あの二人を見てみろよ。清々しい勝ちっぷりじゃねえか。しかも、テメエらに一瞥もくれてない。あいつらからすれば、お前らなんて存在価値もねえ。うらやましくもなんともねえんだよ!」
邪悪な笑みを浮かべながら、シチサブローは幼き召喚士たちの心を砕く。
「しかし、皿を持った時点で敗北は決定! よって、再試験を要求する」
どうしても、彼らは再試合で決着を付けたいらしい。我が子が試練を超えられないという現実を受け入れられない様子だった。
親に賛同していた子どもたちも、さすがに呆れかえっている。まだ腐りきってはいないようだった。
「そこまでにしないかっ!」
親共がヒートアップしてきたところで、老召喚士のお出ましだ。
「此度のふがいなさ、子どもが大衆に惨めな姿をさらしたこと、ゆめゆめ忘れるではない」
本当なら、これだけオープンな場で恥をかかせることはトラウマになるだけ。ガキたちからすれば、なんの成長もない。
だから協会長は、「親たちに」言って聞かせる。
協会長が真に恥をかかせたかったのは、親たちだった。
我が子を手塩に掛けた「フリをしている」親たちを「わからせる」ために、協会長はこの大会を仕組んだ。
「貴様らは、子どもに辛抱を教えてこなかった! その結果がこれ! 無様極まりない敗北! 魅了魔法に弱いも同じだ! そんな子どもに育てたのは、貴様ら親の責任ではないか!」
「子が成果を出せないのは、親の教育のせいだというのですか!?」
「親を見て、子は育つ! 貴様らのような毒親の元で育っては、子の教育にも影響が出てしまう! 彼らはより高みを目指そうと、せっかく真剣になっているというのにだ!」
それは、シチサブローにだってわかる。
「お主たち、フリオとケットシーの二人を見て、よくわかったな?」
誰しも、答えはかっている様子だ。が、言語化ができなかった。幼さ故か。
「よく育成されているとは、思いますよ?」
召喚士の親たち、その誰かが代弁する。
「平民でありながら、よくここまで従えているかと――」
「召喚士と召喚獣は、決して主従関係などではない!」
電流が走ったかのように、子どもたちの間に緊張が走る。
「いつから召喚士は、召喚した魔物を『使役』するようになったのじゃ? いつから対等の存在ではなくなったのじゃ? 言うてみい!」
さっきの発言者が、ささっと引っ込む。
誰一人として、協会長に言い返す者はいなかった。
「あの二人を見てみろ。フリオとケットシーとの間にあるのはただ一つ。友情じゃ。共に歩み、共に生き、共に死んでいく。そんな関係こそが、今の召喚士に足りぬ要素である! お主たちに、彼らの尊さが理解できるかのう?」
少年少女たちは、自分たちを省みている様子である。協会長に罵倒されながらも、瞳だけは未来に向かっていた。
しかし、親の目は曇っている。結果しか見ていない。
これでは、どれだけ成長したところで認めてもらえないだろう。あるいは、子どもの成果は自分の実力だと勘違いする。「召喚獣の強さを召喚士の実力と思っていた」、幼い召喚士のように。
もう、そんな勘違いをしている子どもたちは、いなかった。
「は、はいっ。なんでしょう?」
「腹減ったろ? 冷めないうちに食えよ」
シチサブローが、フリオとケットシーにてんこ盛りのお肉を差し出す。
「食べていいの?」
まだ試験が続いていると思っているのか、フリオは箸を付けようとしない。
「もうガマンしなくていい。思う存分食え。お前らなら、大丈夫だ」
「うむ。おめでと。二人は立派なバディ。これからも、仲良くして欲しい」
テルルも、小さく拍手して二人を称えた。
「ありがとうございます!」
「ありがとーっ! いっただっきまーす!」
片方のフォークで、ケットシーはフリオに「あーん」する。フォーク二刀流で、自分も肉を喰らう。
フリオも、おいしそうに肉を頬張った。
「じゃああボクも、あーん」
「ありがとご主人! もぐもぐ」
フォークをケットシーから持たせてもらい、フリオはケットシーに肉をあげる。
「終わりだ。勝者は出たぜ」
「ならん! 皿を持った時点で、フリオ・ニールセンの敗北は決定だ!」
召喚士の親たちが、ケチを付け始めた。
親に煽られ、子どもたちも「そうだそうだ」と煽り立てる。
往生際の悪い野郎共だ。ああいうお偉いさんにはなりたくない。これだから貴族は。
「あうう」
皿を持ったまま、フリオはシュンとなる。
ただ一部の子どもたちは、フリオを祝福していた。王女と友人の姫騎士たちだ。数名の上位ランカーも同様である。
とはいえ、フリオに嫌悪感を示す貴族は少なくない。
「オレに任せろ」
フリオの頭に、シチサブローはポンと手を置いた。
「なんだてめえら。往生際の悪いのはどっちだ? フリオたちは、ちゃんとガマンできたのに。お貴族様ともあろう者が、平民相手に嫉妬してしまったか?」
ここぞとばかりに、シチサブローは彼らのプライドをズタズタにする。
「どんな気持ちだ? こんな形で平民に負けた気分は? テメエらは、他人を蹴落とすことしか考えていない。あの二人を見てみろよ。清々しい勝ちっぷりじゃねえか。しかも、テメエらに一瞥もくれてない。あいつらからすれば、お前らなんて存在価値もねえ。うらやましくもなんともねえんだよ!」
邪悪な笑みを浮かべながら、シチサブローは幼き召喚士たちの心を砕く。
「しかし、皿を持った時点で敗北は決定! よって、再試験を要求する」
どうしても、彼らは再試合で決着を付けたいらしい。我が子が試練を超えられないという現実を受け入れられない様子だった。
親に賛同していた子どもたちも、さすがに呆れかえっている。まだ腐りきってはいないようだった。
「そこまでにしないかっ!」
親共がヒートアップしてきたところで、老召喚士のお出ましだ。
「此度のふがいなさ、子どもが大衆に惨めな姿をさらしたこと、ゆめゆめ忘れるではない」
本当なら、これだけオープンな場で恥をかかせることはトラウマになるだけ。ガキたちからすれば、なんの成長もない。
だから協会長は、「親たちに」言って聞かせる。
協会長が真に恥をかかせたかったのは、親たちだった。
我が子を手塩に掛けた「フリをしている」親たちを「わからせる」ために、協会長はこの大会を仕組んだ。
「貴様らは、子どもに辛抱を教えてこなかった! その結果がこれ! 無様極まりない敗北! 魅了魔法に弱いも同じだ! そんな子どもに育てたのは、貴様ら親の責任ではないか!」
「子が成果を出せないのは、親の教育のせいだというのですか!?」
「親を見て、子は育つ! 貴様らのような毒親の元で育っては、子の教育にも影響が出てしまう! 彼らはより高みを目指そうと、せっかく真剣になっているというのにだ!」
それは、シチサブローにだってわかる。
「お主たち、フリオとケットシーの二人を見て、よくわかったな?」
誰しも、答えはかっている様子だ。が、言語化ができなかった。幼さ故か。
「よく育成されているとは、思いますよ?」
召喚士の親たち、その誰かが代弁する。
「平民でありながら、よくここまで従えているかと――」
「召喚士と召喚獣は、決して主従関係などではない!」
電流が走ったかのように、子どもたちの間に緊張が走る。
「いつから召喚士は、召喚した魔物を『使役』するようになったのじゃ? いつから対等の存在ではなくなったのじゃ? 言うてみい!」
さっきの発言者が、ささっと引っ込む。
誰一人として、協会長に言い返す者はいなかった。
「あの二人を見てみろ。フリオとケットシーとの間にあるのはただ一つ。友情じゃ。共に歩み、共に生き、共に死んでいく。そんな関係こそが、今の召喚士に足りぬ要素である! お主たちに、彼らの尊さが理解できるかのう?」
少年少女たちは、自分たちを省みている様子である。協会長に罵倒されながらも、瞳だけは未来に向かっていた。
しかし、親の目は曇っている。結果しか見ていない。
これでは、どれだけ成長したところで認めてもらえないだろう。あるいは、子どもの成果は自分の実力だと勘違いする。「召喚獣の強さを召喚士の実力と思っていた」、幼い召喚士のように。
もう、そんな勘違いをしている子どもたちは、いなかった。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。
星の国のマジシャン
ファンタジー
引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。
そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。
本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。
この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!
S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る
神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】
元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。
ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、
理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。
今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。
様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。
カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。
ハーレム要素多め。
※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。
よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz
他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。
たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。
物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz
今後とも応援よろしくお願い致します。
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
ゲーム世界の1000年後に転生した俺は、最強ギフト【無の紋章】と原作知識で無双する
八又ナガト
ファンタジー
大人気VRMMORPG『クレスト・オンライン』。
通称『クレオン』は、キャラクリエイト時に選択した紋章を武器とし、様々な強敵と戦っていくアクションゲームだ。
そんなクレオンで世界ランク1位だった俺は、ある日突然、ゲーム世界の1000年後に転生してしまう。
シルフィード侯爵家の次男ゼロスとして生まれ変わった俺に与えられたのは、誰もが「無能」と蔑む外れギフト【無の紋章】だった。
家族からの失望、兄からの嘲笑。
そんな中、前世の記憶と知識を持つ俺だけが知っていた。
この【無の紋章】こそ、全てのスキルを習得できる“最強の才能”だということを。
「決まりだな。俺はこの世界でもう一度、世界最強を目指す!」
ゲーム知識と【無の紋章】を駆使し、俺は驚く程の速度で力を身に着けていく。
やがて前世の自分すら超える最強の力を手にした俺は、この世界でひたすらに無双するのだった――
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる