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第四話 暗黒城攻略リアル・タイム・アタック はーじまーりまーすわ

上に落ちる痴女 -時計塔-

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 人質を解放し、先に続く道を探す。

「くううう! ここまで五分ももたねえなんて! しかし、今度の相手はそううまく殺せないぜ! とっておきの手下が守ってくれているからなぁ! ヒャハハハーッ!」

 最強ボスのうち二体を撃破されたというのに、この余裕はどこから来るのか。

「とにかく急ぎましょう」
「エレベーターがありますよ」

 洞窟の中に、地上まで続くエレベーターを発見した。
 時計塔の真下に続く滝壺に設置してあり、その間を通しているらしい。

「コレに乗っていけばいいのですね?」
「この先にあるのは、時計塔ですね」

 地下から一気に、時計塔まで繋がっているようである。

「遅いですね」

 降りてくるのが、長過ぎだ。

「もういいです。空洞のようですし、一気に上へ向かいましょう」

 拳を作ってミレイアはしゃがみ込む。直後、地面に拳を打ち付けた。
 同時に、飛行ユニットを展開する。

「まただあああああ!」
 王子が悲鳴を上げた。


 はるか上空へと、ミレイアたちの身体が「落ちて」いく。


『上に落ちる痴女』『エレベーターより、ずっとはやい!』
 モニターのコメントも、変態度を増していった。

「なんでこんなにもスピードが出るんです⁉」
 悲鳴を上げながら、王子が問いかけてくる。

「この城は、異次元から無理やり現実世界に具現化していますわ。よって、壁や床に致命的なバグが生じているのですわ」

 バグの隙間を縫えば、このような高速移動も可能なのだ。
 

「む?」

 空洞を覆っていたガラスを突き破り、鋭利な刃物が回転しながら襲いかかってくる。上下に三日月状の刃がついた剣、双刃刀だ。

「小賢しいマネを!」
 高速移動しながらも、ミレイアは双刃刀をかわす。

 双刃刀はエレベーターを破壊してもなお、勢いが止まらない。

 もしエレベーターに乗っていたら、対処できたかわからなかった。視界を遮られた状態で、無傷で勝てる相手ではない。

「まだなにか来ます!」

 今度は、足場が狭まってきた。エレベーターが壊れるのも構わずに、人間大のブロックがミレイアめがけて突撃してくる。

 まったくスピードを落とさずに、ミレイアはブロックをかわす。

 こんなブロックごとき、ミレイア単体ならどうってことない。とはいえ、ヘタに止まると王子に当たってしまう。

 一気に時計塔を抜けきって、相手に挑んだほうが早い。そう、ミレイアは判断した。

 足場を砕き、双刃刀が襲いかかる。

 ミレイアが、ムチで弾き返す。

 双刃刀が、時計盤に突き刺さった。

 蒼い肌をしたダークエルフが、双刃刀を引っこ抜く。顔半分をローブで覆い、正確な容姿はわからない。声や筋肉の付き具合から、男性のようである。

「やはり、魔王の手下が手を貸していたようですわね」
 王の間と時計塔を繋ぐ橋に、ミレイアは降り立った。

「そうなの。オレっちはルドラ。盟友アエーシェマがやられたと聞いてね。興味があったんで張っていた」

 宙に浮いたままの状態で、ダークエルフのルドラが語りかけてくる。

「まさか、こんなにも楽しませてくれる大物がいるとは」
「死神を操っていたのも、あなたですね?」

「軽くひねってやろうと思ってた程度だが、大して活躍できなかった。あんた、相当強いな」
 ルドラが双刃刀を弓のように構えた。刀の柄に光が集まってくる。

「まずは小手調べだ」
 光が弓から放たれ、ミレイアに直撃する。

 ミレイアは橋から落下しそうになった。身体をムチで絡ませて、どうにか橋と繋ぐ。

「そんな状態で、オレッちと戦うわけ? ナメられたもんだ」
「これくらいのハンデは差し上げますわ」
「言ったな。オレっちは、アエーシェマのようにはいかんぜ」

 双刃刀が、ブーメランのように飛んできた。

 ムチによって宙吊りになりながら、ミレイアは軽々とブーメランを避ける。

「なぜだ、魔女アジ・ダハーカ! 【太陽より尊き者オーバー・ザ・サン】と呼ばれ、魔王直近に世界を支配していたお前が、どうして勇者なんぞに寝返った?」

 ここにきて、魔女の正体が明らかになった。

「【太き者オバサン】。あなた、魔王直属の部下だったのですね」

 強いとは思っていたが、こんなに大物だったとは。

『せやで。大陸の三分の一は、我の領土やってん』
「それがなぜ、裏切ったのです?」
『はあ? 我は、最初から魔王になんか従ってへんで』

 ミレイアもだが、戦っているルドラさえ絶句している。

「んだと? テメエ、何を言っているのかわかったんのか⁉」
『ナメた口抜かしてんのはおまえや、ルドラ。あんなぁ、真の支配者は我や。魔王のほうが頭下げんかいっちゅうねん』
「魔王によって生み出されておいて、その口のきき方はなんだってんだ⁉」

『子が親を越えて、当然やんけ。何がおかしいねん?』
 さも当たり前だといわんばかりに、オバサンは語った。

 親と不仲という辺り、ある意味ミレイアと組むのは必然だったのかもしれない。

『あんたこそ、悔しかったら自分で魔王になったるとか宣言してみんかい。親のスネかじってんと』

「もう許さん! 死ね」
 ルドラが、怒りの弓を放つ。

 しかし、その弓が届くことはなかった。腕が飛行ユニットによって切断されたから。

「ぎゃあああ!」

「油断しましたわね。飛んでいる姿を見ていたはずなのに、お話に夢中でワタクシがユニットを脱いだことに気づかないなんて」

 ルドラと対峙した時、ミレイアはこっそり飛行ユニットを外していたのである。
 自動操縦にして、ルドラを油断させた。

 ミレイアはブランコのように、ムチを揺らしてしなる。
 自らをパチンコの球みたく、バウンドした。

「小細工なしでも勝てましたが、絶望していただきたかったので」

 ルドラの胸板に、ミレイアは拳を突き出す。

 胸に穴が開き、ルドラは絶命した。身体が消滅していく。 
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