225 / 302
3-4 ダイキ VS LO【ハメルカバー】 リアル魔リカー対決!
ダスカマダ王との約束
しおりを挟む
ダスカマダ古戦場跡を舞台にした、レースがいよいよ始まろうとしている。
天空にあるレース会場には、続々と魔王たちが集まっていた。モンスタートラックやドラゴンなどもいれば、小型バイク一台という漢らしい乗り物も。ラリーの最終種目と言うだけあって、みんなの気合が違う。数々の経験を経て、顔立ちも勇ましい。
LOらしきモンスターたちも、各々のマシンを駆って参戦していた。
「ダイキ、あそこ」
スキンヘッドの男性の隣に、ククちゃんとヨアンさんが窮屈そうに座っている。あのスキンヘッドさんが王様だろう。
ククちゃんが、こちらに気づいた。席を立ち、王を連れてこちらに来る。
「あなたが、ダイキ様と、魔王チサ・ス・ギル様ですか。ダスカマダ国の王です」
「どうも。チサ・ス・ギルです」
ボクたちは、共に挨拶をした。
立ち話も疲れるだろうからと、特別スペースを用意してくれる。
「セーラさんと、ソーまで」
ソーがパンケーキを、セーラさんは紅茶と焼き菓子をつまんでいた。
「おう。いつにも増して勇ましい顔になっとるな!」
機械生命体なのに、体のどこに入るのかと思う。
「えっと、そちらの方は、はじめましてですね」
ヨアンさんを数倍大人にしたような美しい女性が、立って頭を下げた。
「どうも、ヨアンの母、オーシャです」
やはり伝説の歌手である。オーシャさんは声まで美しい。
ボクらにもお茶が出されたが、手を出せる気分じゃなかった。
いくら食いしん坊といえど、チサちゃんも同じ気持ちなのだろう。
だんだんとお茶は冷めていく。
「それで確認です。ボクたちが負けたら、二人はハメルカバーの」
「はい。伴侶となっていただく」
王が言うと、オーシャさんは悲しい顔になった。
「なぜです? こう言ってはなんですが、止められないのですか?」
「はい。そもそも私は、娘ヨアンが魔王候補になること自体、反対なのです。この条件は、そのペナルティでもあるのです」
「そんな!」
あまりにも、二人がかわいそうだ。
「王よ、あなたはソーたちの味方?」
チサちゃんの問いかけに、王は唇を噛みしめる。
納得しているわけではないようだ。
「敗北した条件は、それだけではないのです。ハメルカバーには、この世界も明け渡すことになっています」
「なんですって⁉」
責任が、さらに重くなった。一大事じゃないか。
「本来なら、もっと早く言うべきだったのですが、私にはもう、封印されたハメルカバーを抑える力がありません。娘のヨアンに期待したのですが、彼女には力が備わっていなくて」
破壊神を抑え込んで街を守るため、ヨアンさんとククちゃんをイケニエとして差し出すしかないらしい。
「ソー、セーラさん、なんとかならないのかな?」
二人共、首を横に振った。
「ワシらとのレースに勝つ以外、ハメルカバーを消滅させることはできんのじゃ。ワシらも本気じゃけん、これは譲れん」
彼らも、神に世界の実権を握ってほしいと思っている。LOから返り咲くため。
「ハメルカバーとは本来、一言でいうと自然現象だ。特定の形は持ち合わせていない」
便宜上、二人が合体した姿をハメルカバーと呼称しているだけらしい。
「言うことを聞かせたくてものう、言葉自体が通じんのじゃ。ワシら天使の声でさえ届かん」
これでも、譲歩した結果だという。
「ワシらは棄権も考えたんじゃ。仲良くしましょうやって。ありえん、って返されたわい」
「手を抜いたら、すぐに発覚してしまう」
誇り高き種族なら、体一つで勝負せよと。
「本当はちゃんと管理者がいたんだが、その人物も行方不明で」
ハメルカバーと亜神が戦った時、いなくなってしまったらしい。
「チサちゃんのお父さんって、やっぱり激しい戦いをするんだね」
「すごい」
ボクとチサちゃんが、あらためて【亜神 ラヴクラホテップ】の強さに感心した。
だが、ソーは首を振る。
「いんや。ワシラの神ハメルカバーを封じたんは、ラヴクラホテップじゃないけん」
「そのとおり。別の亜神だ。ずっと昔の話なので、姿形どころか、名前も言い伝えられていないが」
そうなの? てっきり、チサちゃんのパパさんかなって思ったんだけど。
ずっと昔、ハメルカバーがこの地に降り立った時、カオスロリトとダスカマダは協力して撃退した。
この地を治めていた亜神と共に。
亜神は、暴走したハメルカバーの力を維持していた。自分の身を挺して。
「とにかく、いまはその亜神が施した、封印の力が弱まっとる。ワシらも天界側である以上、手加減できん」
「真剣勝負を、我々は所望する」
セーラさんとソーの両者は、一歩も譲らない。
「ボクとチサちゃんが、勝つしかないんですね?」
「申し訳ございません。ムチャな約束なのは重々承知しているのですが」
「ボクたちに任せてください。必ず勝利します」
もう、やるしかないんだ。
「よっしゃ。レースで待っとるで、ダイキ」
「本番、楽しみにしている」
食事を終えたソーとセーラさんが、出発する。
最後に、ヨアンさんが席を立つ。
「どうかご無事で。もしものことがあったら、私たちには構わないで」
「見捨てないよ」
ボクは、チサちゃんとうなずき合う。
「うん、わたしたちは、絶対に二人を見捨てない」
天空にあるレース会場には、続々と魔王たちが集まっていた。モンスタートラックやドラゴンなどもいれば、小型バイク一台という漢らしい乗り物も。ラリーの最終種目と言うだけあって、みんなの気合が違う。数々の経験を経て、顔立ちも勇ましい。
LOらしきモンスターたちも、各々のマシンを駆って参戦していた。
「ダイキ、あそこ」
スキンヘッドの男性の隣に、ククちゃんとヨアンさんが窮屈そうに座っている。あのスキンヘッドさんが王様だろう。
ククちゃんが、こちらに気づいた。席を立ち、王を連れてこちらに来る。
「あなたが、ダイキ様と、魔王チサ・ス・ギル様ですか。ダスカマダ国の王です」
「どうも。チサ・ス・ギルです」
ボクたちは、共に挨拶をした。
立ち話も疲れるだろうからと、特別スペースを用意してくれる。
「セーラさんと、ソーまで」
ソーがパンケーキを、セーラさんは紅茶と焼き菓子をつまんでいた。
「おう。いつにも増して勇ましい顔になっとるな!」
機械生命体なのに、体のどこに入るのかと思う。
「えっと、そちらの方は、はじめましてですね」
ヨアンさんを数倍大人にしたような美しい女性が、立って頭を下げた。
「どうも、ヨアンの母、オーシャです」
やはり伝説の歌手である。オーシャさんは声まで美しい。
ボクらにもお茶が出されたが、手を出せる気分じゃなかった。
いくら食いしん坊といえど、チサちゃんも同じ気持ちなのだろう。
だんだんとお茶は冷めていく。
「それで確認です。ボクたちが負けたら、二人はハメルカバーの」
「はい。伴侶となっていただく」
王が言うと、オーシャさんは悲しい顔になった。
「なぜです? こう言ってはなんですが、止められないのですか?」
「はい。そもそも私は、娘ヨアンが魔王候補になること自体、反対なのです。この条件は、そのペナルティでもあるのです」
「そんな!」
あまりにも、二人がかわいそうだ。
「王よ、あなたはソーたちの味方?」
チサちゃんの問いかけに、王は唇を噛みしめる。
納得しているわけではないようだ。
「敗北した条件は、それだけではないのです。ハメルカバーには、この世界も明け渡すことになっています」
「なんですって⁉」
責任が、さらに重くなった。一大事じゃないか。
「本来なら、もっと早く言うべきだったのですが、私にはもう、封印されたハメルカバーを抑える力がありません。娘のヨアンに期待したのですが、彼女には力が備わっていなくて」
破壊神を抑え込んで街を守るため、ヨアンさんとククちゃんをイケニエとして差し出すしかないらしい。
「ソー、セーラさん、なんとかならないのかな?」
二人共、首を横に振った。
「ワシらとのレースに勝つ以外、ハメルカバーを消滅させることはできんのじゃ。ワシらも本気じゃけん、これは譲れん」
彼らも、神に世界の実権を握ってほしいと思っている。LOから返り咲くため。
「ハメルカバーとは本来、一言でいうと自然現象だ。特定の形は持ち合わせていない」
便宜上、二人が合体した姿をハメルカバーと呼称しているだけらしい。
「言うことを聞かせたくてものう、言葉自体が通じんのじゃ。ワシら天使の声でさえ届かん」
これでも、譲歩した結果だという。
「ワシらは棄権も考えたんじゃ。仲良くしましょうやって。ありえん、って返されたわい」
「手を抜いたら、すぐに発覚してしまう」
誇り高き種族なら、体一つで勝負せよと。
「本当はちゃんと管理者がいたんだが、その人物も行方不明で」
ハメルカバーと亜神が戦った時、いなくなってしまったらしい。
「チサちゃんのお父さんって、やっぱり激しい戦いをするんだね」
「すごい」
ボクとチサちゃんが、あらためて【亜神 ラヴクラホテップ】の強さに感心した。
だが、ソーは首を振る。
「いんや。ワシラの神ハメルカバーを封じたんは、ラヴクラホテップじゃないけん」
「そのとおり。別の亜神だ。ずっと昔の話なので、姿形どころか、名前も言い伝えられていないが」
そうなの? てっきり、チサちゃんのパパさんかなって思ったんだけど。
ずっと昔、ハメルカバーがこの地に降り立った時、カオスロリトとダスカマダは協力して撃退した。
この地を治めていた亜神と共に。
亜神は、暴走したハメルカバーの力を維持していた。自分の身を挺して。
「とにかく、いまはその亜神が施した、封印の力が弱まっとる。ワシらも天界側である以上、手加減できん」
「真剣勝負を、我々は所望する」
セーラさんとソーの両者は、一歩も譲らない。
「ボクとチサちゃんが、勝つしかないんですね?」
「申し訳ございません。ムチャな約束なのは重々承知しているのですが」
「ボクたちに任せてください。必ず勝利します」
もう、やるしかないんだ。
「よっしゃ。レースで待っとるで、ダイキ」
「本番、楽しみにしている」
食事を終えたソーとセーラさんが、出発する。
最後に、ヨアンさんが席を立つ。
「どうかご無事で。もしものことがあったら、私たちには構わないで」
「見捨てないよ」
ボクは、チサちゃんとうなずき合う。
「うん、わたしたちは、絶対に二人を見捨てない」
0
お気に入りに追加
99
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜
みおな
ファンタジー
私の名前は、瀬尾あかり。
37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。
そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。
今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。
それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。
そして、目覚めた時ー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる