193 / 302
第三部 今度は、スタンプラリーだ! ワケあり悪役令嬢とのデットヒート! 3-1 次なるライバルは、悪役令嬢!
最強の車、ハチシャクとの出会い
しおりを挟む
ものは試しだ。ゴマトマへ。
「よく来たね。準備は整っているよ。どうぞ」
ボクたちは、ゴマトマ城の脇を通って、広い道に出た。平坦な道が、どこまでも続いている。まるで、車が旋回できそうなくらいに。
「あれは?」
広場にポツンと、一軒家が建っている。
「ウチの車両工場だよ。入って」
壁の脇にあるドアから、中を見せてもらった。
「こ、これは!」
大小様々な車が、コレクションのように並ぶ。どれも、地上で見る車に近い。ただ、やや時代がかっているような。いわゆるクラシックカーばかりだ。
「全部、ウチでつくった車両だよ。カリダカが開催されるときだけ、彼らは命を持つんだよ」
ゴマトマが車両を開発しているって話は、本当だったんだ。
「でも、どうして実用化していないの?」
「燃料の問題でね」
これだけ複雑な構造だと、魔王の魔力なしでは動かないという。ゴマトマで作っている車も、例外ではないそうだ。
そっか。この世界には、化石燃料はないもんね。どこを見ても、そんな素材は見たことがなかった。
「じゃあ、故障したら大変だよね……」
「心配ないよ。当日は、オイラもメカニックとしてサポートするからね」
話はゴマトマにも知れ渡っていたらしい。ボクたちの仲間であるオンコ姫は、すぐに車両を見繕ってくれていた。
「ありがとう。期待しているよ、オンコ」
「でね、オイラ並みに考えてみたのさ。ダイキが乗るにふさわしい車ってのをさ」
案内してもらったスペースには、数台のバイクが。
「これなんてどう? スーパー・サブっていうんだけど」
サイドカーのついたバイクである。販売総数一億台を突破し、歴代の優勝者を乗せてきた実績を誇るとか。
「このサイドカーが売りでね。狭いけど、計器類が運転席と連動していて、サポートマシンとしても有能なんだ」
サイドカーの機能こそが、「スーパーサブ」と呼ばれている由来なんだとか。
「いい感じ。ダイキ、これがいい」
へルメットを被ったチサちゃんが、サイドカーに乗ってハシャぐ。
確かに、チサちゃんの反応は抜群だ。チサちゃんを横に乗せるから、会話できるのがいいと思える。けど……。
「バイクはちょっと。免許持ってない」
原付免許があるから、乗れなくもない。とはいえ、チサちゃんの負担が大きすぎる。
「狭いし、密着できないよ。乗り心地は最初こそいいけど」
「確かに。ダイキの側にいられないのは痛い」
チサちゃんも納得したようだ。
「じゃあ、スーパー・サブは別の魔王さまに払い下げておくねー」
どうも、このバイクを欲しがった魔王がいるらしい。
買い手がつかなかった時は買い取るという。
誰が買おうとしているか、だいたい予想がついてしまうけど。
「じゃあ、これは?」
言ってオンコが用意したのは、装甲車だ。外装内装ともにギンギラギンである。
「落石があるような所でも平然と走れるよ」
「ペチャンコになっちゃうよ……」
どうにも、お目当ての車が見つからない。
「他の人って、車を使うんだよね?」
「そうとも限らないよ。手押し車もいれば、ドラゴンで移動するヤツもいるよ」
形式は、様々なんだなぁ。
「でも、ドレンに乗るのは、やめときなよ。いくら友達っつっても、セイの魔力しか波長が合わないらしいから」
セイさんが、車は自分で用意しろ、と言ったくらいだ。ドレンを貸すと言わなかったのは、それが理由なんだろう。
なにもドレンは、チサちゃんが嫌、ってわけじゃない。
セイさん以外を乗せる気がないのだ。
「速さもいらないんだよね。スーパーサブでも走破できるくらいだから」
あとは、乗り心地くらいか。運転技術が特に必要なくて、長時間の移動も耐えられるような。
「あれ?」
倉庫の隅で眠っている一台の車が。
「ああ、あれを忘れていたね」
お豆腐のように白い車が、目に飛び込んできた。
随分と、ホコリを被っている。
「ハチシャクかー。お目が高いね」
ハッチバック車のホコリを、オンコがフッと吹き飛ばす。
白かったのは、ホコリのせいだった。正しくは、白黒の三ドアハッチバックである。
全体的に円形のシルエットで、ヘッドライトとウインカーは、共に丸い。
真っ白のボディが、ボクに「乗れ」と告げてくる。
「変にピーキーでもなくて、クセもない。安定した走りを見せてくれるよ。でも、戦力としてパッとしないから、相手にされなくなったんだよね」
ボクは手で、車両を撫でた。まるで脈打っているかのように、熱が伝わってくる。
「乗っていいかな?」
「はいな」
そばにあるメタルラックから、オンコがキーを取った。ボクに向かって、放り投げる。
キーを受け取った。魔法の装飾が施されていて、このキーを伝って魔力を流し込むんだろう。このキーは、いわゆる「杖」だ。直感で、ボクは理解した。
「握りにあるボタンを押してみて。ドアが開くから」
この辺り、市販の車と遜色ない。
慣れた手付きでキーのボタンを押すと、ロックが解除された。
「あ、そうだ!」
気になって、運転席を確認する。
よかった。日本車と同じ右ハンドルだ。
「よく来たね。準備は整っているよ。どうぞ」
ボクたちは、ゴマトマ城の脇を通って、広い道に出た。平坦な道が、どこまでも続いている。まるで、車が旋回できそうなくらいに。
「あれは?」
広場にポツンと、一軒家が建っている。
「ウチの車両工場だよ。入って」
壁の脇にあるドアから、中を見せてもらった。
「こ、これは!」
大小様々な車が、コレクションのように並ぶ。どれも、地上で見る車に近い。ただ、やや時代がかっているような。いわゆるクラシックカーばかりだ。
「全部、ウチでつくった車両だよ。カリダカが開催されるときだけ、彼らは命を持つんだよ」
ゴマトマが車両を開発しているって話は、本当だったんだ。
「でも、どうして実用化していないの?」
「燃料の問題でね」
これだけ複雑な構造だと、魔王の魔力なしでは動かないという。ゴマトマで作っている車も、例外ではないそうだ。
そっか。この世界には、化石燃料はないもんね。どこを見ても、そんな素材は見たことがなかった。
「じゃあ、故障したら大変だよね……」
「心配ないよ。当日は、オイラもメカニックとしてサポートするからね」
話はゴマトマにも知れ渡っていたらしい。ボクたちの仲間であるオンコ姫は、すぐに車両を見繕ってくれていた。
「ありがとう。期待しているよ、オンコ」
「でね、オイラ並みに考えてみたのさ。ダイキが乗るにふさわしい車ってのをさ」
案内してもらったスペースには、数台のバイクが。
「これなんてどう? スーパー・サブっていうんだけど」
サイドカーのついたバイクである。販売総数一億台を突破し、歴代の優勝者を乗せてきた実績を誇るとか。
「このサイドカーが売りでね。狭いけど、計器類が運転席と連動していて、サポートマシンとしても有能なんだ」
サイドカーの機能こそが、「スーパーサブ」と呼ばれている由来なんだとか。
「いい感じ。ダイキ、これがいい」
へルメットを被ったチサちゃんが、サイドカーに乗ってハシャぐ。
確かに、チサちゃんの反応は抜群だ。チサちゃんを横に乗せるから、会話できるのがいいと思える。けど……。
「バイクはちょっと。免許持ってない」
原付免許があるから、乗れなくもない。とはいえ、チサちゃんの負担が大きすぎる。
「狭いし、密着できないよ。乗り心地は最初こそいいけど」
「確かに。ダイキの側にいられないのは痛い」
チサちゃんも納得したようだ。
「じゃあ、スーパー・サブは別の魔王さまに払い下げておくねー」
どうも、このバイクを欲しがった魔王がいるらしい。
買い手がつかなかった時は買い取るという。
誰が買おうとしているか、だいたい予想がついてしまうけど。
「じゃあ、これは?」
言ってオンコが用意したのは、装甲車だ。外装内装ともにギンギラギンである。
「落石があるような所でも平然と走れるよ」
「ペチャンコになっちゃうよ……」
どうにも、お目当ての車が見つからない。
「他の人って、車を使うんだよね?」
「そうとも限らないよ。手押し車もいれば、ドラゴンで移動するヤツもいるよ」
形式は、様々なんだなぁ。
「でも、ドレンに乗るのは、やめときなよ。いくら友達っつっても、セイの魔力しか波長が合わないらしいから」
セイさんが、車は自分で用意しろ、と言ったくらいだ。ドレンを貸すと言わなかったのは、それが理由なんだろう。
なにもドレンは、チサちゃんが嫌、ってわけじゃない。
セイさん以外を乗せる気がないのだ。
「速さもいらないんだよね。スーパーサブでも走破できるくらいだから」
あとは、乗り心地くらいか。運転技術が特に必要なくて、長時間の移動も耐えられるような。
「あれ?」
倉庫の隅で眠っている一台の車が。
「ああ、あれを忘れていたね」
お豆腐のように白い車が、目に飛び込んできた。
随分と、ホコリを被っている。
「ハチシャクかー。お目が高いね」
ハッチバック車のホコリを、オンコがフッと吹き飛ばす。
白かったのは、ホコリのせいだった。正しくは、白黒の三ドアハッチバックである。
全体的に円形のシルエットで、ヘッドライトとウインカーは、共に丸い。
真っ白のボディが、ボクに「乗れ」と告げてくる。
「変にピーキーでもなくて、クセもない。安定した走りを見せてくれるよ。でも、戦力としてパッとしないから、相手にされなくなったんだよね」
ボクは手で、車両を撫でた。まるで脈打っているかのように、熱が伝わってくる。
「乗っていいかな?」
「はいな」
そばにあるメタルラックから、オンコがキーを取った。ボクに向かって、放り投げる。
キーを受け取った。魔法の装飾が施されていて、このキーを伝って魔力を流し込むんだろう。このキーは、いわゆる「杖」だ。直感で、ボクは理解した。
「握りにあるボタンを押してみて。ドアが開くから」
この辺り、市販の車と遜色ない。
慣れた手付きでキーのボタンを押すと、ロックが解除された。
「あ、そうだ!」
気になって、運転席を確認する。
よかった。日本車と同じ右ハンドルだ。
0
お気に入りに追加
99
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる