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底辺配信者とスライム 特別編
第69話 番外編その1 最古参視聴者 ヒヨリ
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ヒヨリは、ツヨシにも黙っていたことがある。
彼女は、ツヨシが動画を初めてアップした頃から追いかけているのだ。いわゆる最古参なのである。
きっかけは、ギルドにポーションを設置してもらったときのこと。
初めて作ったポーションで、自信がなかった。
実家が老舗の薬局であるためか、馴染みのポーションばかりが売れていく。試作品ともなると、誰も手に取ってくれない。
やはり、確実性のある「いつもの」が売れるのだ。
しかし、ヒヨリのポーションを手にとってくれた人が。
その人物こそ、ツヨシだったのだ。
ツヨシはヒヨリのお客さん第一号だったのである。
ヒヨリはギルドに頼んで、ポーション利用者を追跡するシステムを導入してもらっていた。
生まれて初めて自力だけで仕上げたポーションだったが、ツヨシには効いたようである。
その後もヒヨリは、ポーションを毎回買ってくれるツヨシをずっと推した。新作ポーションを買ってくれたらしく、うれしくて視聴した。
SNSで彼の活躍を拡散していたのである。
しかし、反応はほぼゼロに等しい。
視聴してくれているのは、自分の他にはギルドの石田氏くらいである。
ある日のこと。
ヒヨリは今日も、『ダンチューブ』の「ツヨシチャンネル」をつけた。当時の視聴者は自分一人だったが、今は三桁ほど流行っている。
買って即、テイムしたスライムに提供する映像が。
すごく、優しい人だ。自分で使えばいいポーションを、テイムしたモンスターにあげるなんて。
ツヨシはその後も、食べ物やフルーツを、スライムに買ってあげる。
これは、拡散すべき。ヒヨリの直感が、そう訴えかけた。
決して、自分のポーションを売り込みたかったわけじゃない。この冒険者のような優しさを、みんなにわかってほしかったのだ。
翌朝、なにげなく拡散したツヨシの動画が、ケタ違いの再生数になっていた。
「すごいバズった!」
まさか、SNSでこんなにも話題が広がるなんて。
「こんにちは、ヒヨリさん。今日も良質なポーションを、ありがとうございます」
ポーションの提供をしにきたヒヨリに、ギルド受付の石田氏があいさつをしにきた。
「ヒヨリさんの作るポーションは、二日酔いにも効くので重宝しています」
「毎回、ごひいきにしていただいて。それより、昨日の動画を見ましたか?」
「見ましたよ! 思わず酔った勢いで、コメントしてしまいました」
ヒヨリが話題をふると、石田氏が食いついてくる。
「あはは。微笑ましかったですよねえ」
「そうそう! ツヨシさんの優しさが、にじみ出ていましたね」
動画視聴者同士、会話が弾む。
「あんなスライムの子と仲良くできたら、楽しいでしょうねえ」
「ですよねぇ」
「わたしも、冒険に出られたらなあ」
「冒険者になられるんですか? なんでしたら、相談に乗りましょう」
一層程度ならそこまで危なくないので、十分だろうとアドバイスを受ける。
親からは「お前に冒険者はまだ早い」と、言われ続けた。
ここは、自分の力を両親にわかってもらうチャンスかも知れない。
親の七光りで、終わりたくなかった。早く一人前になって、両親を安心させたい。
「ビルドは、お考えですか?」
「力が弱いので、魔法で押し切るタイプにしようかなって」
ひとまず探索型がいいかな、とヒヨリは考えている。
「では、【ハーバリスト】などはいかがでしょう? 肉弾戦は不得意ですが、多少の魔法が使えます。ゆくゆくは、ソロでもなんとか戦える【シャーマン】に成長していけます」
魔物よけの薬草を身体に撒いて、敵を寄せ付けない戦法もあるとか。これなら、薬草採取だけに専念できそうだ。
「いいですね。その方向性で行きます」
スキル振りやステータス割り振りのコツを、石田氏にレクチャーしてもらう。
「もしかすると、ツヨシさん本人とエンカウントできるかもですね」
「そ、そんなわけ」
その頃のヒヨリは、思ってもいなかった。
まさか自分が、ツヨシのパーティに加わるなんて。
彼女は、ツヨシが動画を初めてアップした頃から追いかけているのだ。いわゆる最古参なのである。
きっかけは、ギルドにポーションを設置してもらったときのこと。
初めて作ったポーションで、自信がなかった。
実家が老舗の薬局であるためか、馴染みのポーションばかりが売れていく。試作品ともなると、誰も手に取ってくれない。
やはり、確実性のある「いつもの」が売れるのだ。
しかし、ヒヨリのポーションを手にとってくれた人が。
その人物こそ、ツヨシだったのだ。
ツヨシはヒヨリのお客さん第一号だったのである。
ヒヨリはギルドに頼んで、ポーション利用者を追跡するシステムを導入してもらっていた。
生まれて初めて自力だけで仕上げたポーションだったが、ツヨシには効いたようである。
その後もヒヨリは、ポーションを毎回買ってくれるツヨシをずっと推した。新作ポーションを買ってくれたらしく、うれしくて視聴した。
SNSで彼の活躍を拡散していたのである。
しかし、反応はほぼゼロに等しい。
視聴してくれているのは、自分の他にはギルドの石田氏くらいである。
ある日のこと。
ヒヨリは今日も、『ダンチューブ』の「ツヨシチャンネル」をつけた。当時の視聴者は自分一人だったが、今は三桁ほど流行っている。
買って即、テイムしたスライムに提供する映像が。
すごく、優しい人だ。自分で使えばいいポーションを、テイムしたモンスターにあげるなんて。
ツヨシはその後も、食べ物やフルーツを、スライムに買ってあげる。
これは、拡散すべき。ヒヨリの直感が、そう訴えかけた。
決して、自分のポーションを売り込みたかったわけじゃない。この冒険者のような優しさを、みんなにわかってほしかったのだ。
翌朝、なにげなく拡散したツヨシの動画が、ケタ違いの再生数になっていた。
「すごいバズった!」
まさか、SNSでこんなにも話題が広がるなんて。
「こんにちは、ヒヨリさん。今日も良質なポーションを、ありがとうございます」
ポーションの提供をしにきたヒヨリに、ギルド受付の石田氏があいさつをしにきた。
「ヒヨリさんの作るポーションは、二日酔いにも効くので重宝しています」
「毎回、ごひいきにしていただいて。それより、昨日の動画を見ましたか?」
「見ましたよ! 思わず酔った勢いで、コメントしてしまいました」
ヒヨリが話題をふると、石田氏が食いついてくる。
「あはは。微笑ましかったですよねえ」
「そうそう! ツヨシさんの優しさが、にじみ出ていましたね」
動画視聴者同士、会話が弾む。
「あんなスライムの子と仲良くできたら、楽しいでしょうねえ」
「ですよねぇ」
「わたしも、冒険に出られたらなあ」
「冒険者になられるんですか? なんでしたら、相談に乗りましょう」
一層程度ならそこまで危なくないので、十分だろうとアドバイスを受ける。
親からは「お前に冒険者はまだ早い」と、言われ続けた。
ここは、自分の力を両親にわかってもらうチャンスかも知れない。
親の七光りで、終わりたくなかった。早く一人前になって、両親を安心させたい。
「ビルドは、お考えですか?」
「力が弱いので、魔法で押し切るタイプにしようかなって」
ひとまず探索型がいいかな、とヒヨリは考えている。
「では、【ハーバリスト】などはいかがでしょう? 肉弾戦は不得意ですが、多少の魔法が使えます。ゆくゆくは、ソロでもなんとか戦える【シャーマン】に成長していけます」
魔物よけの薬草を身体に撒いて、敵を寄せ付けない戦法もあるとか。これなら、薬草採取だけに専念できそうだ。
「いいですね。その方向性で行きます」
スキル振りやステータス割り振りのコツを、石田氏にレクチャーしてもらう。
「もしかすると、ツヨシさん本人とエンカウントできるかもですね」
「そ、そんなわけ」
その頃のヒヨリは、思ってもいなかった。
まさか自分が、ツヨシのパーティに加わるなんて。
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