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最終章 ドラゴンとの生配信バトル
第59話 この戦いが終わったら……
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「よろしいのですか、マスターツヨシ? 戦闘データを取りに来たのでは、ないのですか?」
ワラビの頭は、常に戦闘モードに最適化されているらしい。今回の水族館デートも、戦闘データ採取のつもりだったのだろう。
「今日は、ただのデートだよ。肩の力を抜いて、海の生き物たちを鑑賞していればいいんだ」
ダンジョン攻略のことは、脇においておく。
「心得ました。マスターツヨシ」
ワラビは常に、ボクの役に立つ方法を考えてくれている。
でも、今日はもういいんだ。
「いつもありがとう、ワラビ。今日はさ、頭を空っぽにして、水族館をお散歩しようか」
「はい、マスターツヨシ。実にリラックスした時間を、過ごさせていただいています」
最後は予約したレストランで、夕飯を食べる。モンスター同伴OKのレストランなんて、初めて見たよ。
「本日のメインは、サバとリゾットのテリーヌでございます」
お魚を見に行ったのに、メインがお魚になっちゃった。
「お肉だったはずですよね?」
ボクは、ウエイターに質問をする。
「申し訳ございません。メインで出すはずのお肉が、お取り寄せできなくなりまして」
急な予定が入ったらしく、メインの肉料理はそちらに回ったらしい。
なんとも気まずい空気が、ボクとヒヨリさんの間に漂う。
「こういうときも、ありますよね?」
明るい声で、ヒヨリさんがフォローを入れてくれた。
「そうですよ。気にせず食べましょう」
シケた考えは、やめだ。ヒヨリさんと、ディナーを楽しむ。
「夜景が、キレイですね」
ヒヨリさんが、窓の向こうの景色を見つめていた。
街の明かりが、散りばめた宝石みたいだ。
「月も、あんなに丸く。まるで、ワラビみたいだ」
ボクは、ワラビと見つめ合う。
「マスターツヨシ、『月がきれい』という言葉は、本来想い人に送る言葉でして……」
「解説はいいよ。いつも、ありがとう。頼りになるよ、ワラビ」
「お役に立てて光栄です。マスターツヨシ」
帰る時間となり、ボクはヒヨリさんを家の近くまで送った。
「あの、ツヨシさん。ドラゴンとの戦いが終わったら」
「ヒヨリさん、やめましょう。それって死亡フラグなんで」
「そう、そうですよね! やめましょう」
苦笑いを浮かべながら、ヒヨリさんが家まで駆けていこうとする。
「あの!」
ボクは、ヒヨリさんを呼び止めた。
ヒヨリさんが、振り返る。
「どんなことがあっても、ボクの気持ちは変わりません」
「ありがとう、ツヨシさん」
「では、明日またダンジョンで」
「はい。またダンジョンでおちあいましょう」
翌日以降、決戦の時まで、ボクらは高難易度のダンジョン「七層」を往復した。アイテムドロップのためだ。
場所は、水族館からも近い遺跡である。
朝早くダンジョンへ赴いては、ヒヨリさんたちの力を借りて探索を繰り返す。
主に戦闘技術の向上と、防御面の強化のためである。
「てやあ!」
ボクはヒヒイロカネの剣をふるい、グレーターデーモンの首をはねた。
「マスターツヨシ、後ろにもう一体」
「ワラビ、任せた!」
ボクはワラビに指示を出し、グレーターデーモンの攻撃を誘う。
ワラビがカウンターで、デーモンの魔法攻撃を跳ね返す。ワラビもヒヒイロカネで強化されているため、最上位デーモンの攻撃魔法も意に介さない。
高威力の魔法とはいえ、デーモンには通じなかった。
「肉弾戦だ、ワラビ!」
「承知」
短く返答をして、ワラビが刃の形に変わる。ヒヒイロカネの刃と化したワラビが、袈裟斬りでグレーターデーモンを切りつけた。
両断されたデーモンが、アイテムをドロップしてチリとなる。
ヒヒイロカネの剣は、たしかに切れ味が鋭い。しかし、持ち手がボクではどうしてもポンコツ化してしまう。強力な防具が必要だ。盾ではなく、全身を包むヨロイが。
なので、強いモンスターが出てくるダンジョンを頻繁に訪れ、モンスターの素材をゲットしていく。
素材を加工しては、ヨロイへ改造するのだ。
メイヴィス姫も、グレーターデーモン相手に激闘を繰り広げた。
「七層が通過点だなんて、当時のあたしたちでは考えられなかったわね」
もはやメイヴィス姫も、コンラッドと同化せずに上位デーモンを打倒できる。
「お見事です、姫様」
「あんたほどではないわ、コルタナ」
「ですが、ドラゴンなどに勝てる気が、どうしても湧き出てきません」
「やるしかないわ。ひたすら、自力をつけるのよ」
デーモンから手に入れたアイテムを、ギルドへ持ち帰る。
とはいえ、劇的に強くなっていくのはセンディさんたちばかり。
「悪いな。いい素材をオレたちに回してもらって」
「構いません。ボクにはワラビという、最強の壁役がいますから」
七層程度のアイテムでは、ボクやワラビにとって強化に値しないのだ。
「申し訳程度の、強化にしかならないわね」
コルタナさんも、危機感をあらわにする。
ボクは防御を、ほとんどワラビに頼っていた。それが、今になって深刻になっている。
相手はドラゴンだ。魔王さえ一撃で消し飛ばす苛烈な攻撃を、ワラビだけで防ぎきれる保証はない。
ボクが強くなる必要があるのだ。
とにかく決戦の日まで、やれるだけのことをする。
「八層に向かいましょう」
メイヴィス姫が、提案をする。
ワラビの頭は、常に戦闘モードに最適化されているらしい。今回の水族館デートも、戦闘データ採取のつもりだったのだろう。
「今日は、ただのデートだよ。肩の力を抜いて、海の生き物たちを鑑賞していればいいんだ」
ダンジョン攻略のことは、脇においておく。
「心得ました。マスターツヨシ」
ワラビは常に、ボクの役に立つ方法を考えてくれている。
でも、今日はもういいんだ。
「いつもありがとう、ワラビ。今日はさ、頭を空っぽにして、水族館をお散歩しようか」
「はい、マスターツヨシ。実にリラックスした時間を、過ごさせていただいています」
最後は予約したレストランで、夕飯を食べる。モンスター同伴OKのレストランなんて、初めて見たよ。
「本日のメインは、サバとリゾットのテリーヌでございます」
お魚を見に行ったのに、メインがお魚になっちゃった。
「お肉だったはずですよね?」
ボクは、ウエイターに質問をする。
「申し訳ございません。メインで出すはずのお肉が、お取り寄せできなくなりまして」
急な予定が入ったらしく、メインの肉料理はそちらに回ったらしい。
なんとも気まずい空気が、ボクとヒヨリさんの間に漂う。
「こういうときも、ありますよね?」
明るい声で、ヒヨリさんがフォローを入れてくれた。
「そうですよ。気にせず食べましょう」
シケた考えは、やめだ。ヒヨリさんと、ディナーを楽しむ。
「夜景が、キレイですね」
ヒヨリさんが、窓の向こうの景色を見つめていた。
街の明かりが、散りばめた宝石みたいだ。
「月も、あんなに丸く。まるで、ワラビみたいだ」
ボクは、ワラビと見つめ合う。
「マスターツヨシ、『月がきれい』という言葉は、本来想い人に送る言葉でして……」
「解説はいいよ。いつも、ありがとう。頼りになるよ、ワラビ」
「お役に立てて光栄です。マスターツヨシ」
帰る時間となり、ボクはヒヨリさんを家の近くまで送った。
「あの、ツヨシさん。ドラゴンとの戦いが終わったら」
「ヒヨリさん、やめましょう。それって死亡フラグなんで」
「そう、そうですよね! やめましょう」
苦笑いを浮かべながら、ヒヨリさんが家まで駆けていこうとする。
「あの!」
ボクは、ヒヨリさんを呼び止めた。
ヒヨリさんが、振り返る。
「どんなことがあっても、ボクの気持ちは変わりません」
「ありがとう、ツヨシさん」
「では、明日またダンジョンで」
「はい。またダンジョンでおちあいましょう」
翌日以降、決戦の時まで、ボクらは高難易度のダンジョン「七層」を往復した。アイテムドロップのためだ。
場所は、水族館からも近い遺跡である。
朝早くダンジョンへ赴いては、ヒヨリさんたちの力を借りて探索を繰り返す。
主に戦闘技術の向上と、防御面の強化のためである。
「てやあ!」
ボクはヒヒイロカネの剣をふるい、グレーターデーモンの首をはねた。
「マスターツヨシ、後ろにもう一体」
「ワラビ、任せた!」
ボクはワラビに指示を出し、グレーターデーモンの攻撃を誘う。
ワラビがカウンターで、デーモンの魔法攻撃を跳ね返す。ワラビもヒヒイロカネで強化されているため、最上位デーモンの攻撃魔法も意に介さない。
高威力の魔法とはいえ、デーモンには通じなかった。
「肉弾戦だ、ワラビ!」
「承知」
短く返答をして、ワラビが刃の形に変わる。ヒヒイロカネの刃と化したワラビが、袈裟斬りでグレーターデーモンを切りつけた。
両断されたデーモンが、アイテムをドロップしてチリとなる。
ヒヒイロカネの剣は、たしかに切れ味が鋭い。しかし、持ち手がボクではどうしてもポンコツ化してしまう。強力な防具が必要だ。盾ではなく、全身を包むヨロイが。
なので、強いモンスターが出てくるダンジョンを頻繁に訪れ、モンスターの素材をゲットしていく。
素材を加工しては、ヨロイへ改造するのだ。
メイヴィス姫も、グレーターデーモン相手に激闘を繰り広げた。
「七層が通過点だなんて、当時のあたしたちでは考えられなかったわね」
もはやメイヴィス姫も、コンラッドと同化せずに上位デーモンを打倒できる。
「お見事です、姫様」
「あんたほどではないわ、コルタナ」
「ですが、ドラゴンなどに勝てる気が、どうしても湧き出てきません」
「やるしかないわ。ひたすら、自力をつけるのよ」
デーモンから手に入れたアイテムを、ギルドへ持ち帰る。
とはいえ、劇的に強くなっていくのはセンディさんたちばかり。
「悪いな。いい素材をオレたちに回してもらって」
「構いません。ボクにはワラビという、最強の壁役がいますから」
七層程度のアイテムでは、ボクやワラビにとって強化に値しないのだ。
「申し訳程度の、強化にしかならないわね」
コルタナさんも、危機感をあらわにする。
ボクは防御を、ほとんどワラビに頼っていた。それが、今になって深刻になっている。
相手はドラゴンだ。魔王さえ一撃で消し飛ばす苛烈な攻撃を、ワラビだけで防ぎきれる保証はない。
ボクが強くなる必要があるのだ。
とにかく決戦の日まで、やれるだけのことをする。
「八層に向かいましょう」
メイヴィス姫が、提案をする。
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