58 / 71
最終章 ドラゴンとの生配信バトル
第58話 水族館デート
しおりを挟む
ボクとヒヨリさんは、駅前で待ち合わせをした。
車を使って、一緒に行ってもいい。が、それだとヒヨリさんにばかり負担がかかる。今から乗る電車は常時空いているから、リラックスできるだろう。
「お待たせしました」
いつもと違うヒヨリさんの服装に、ドキリとなる。
クリーム色のコートに、スカートスタイルだ。
シャーマンだからか、アジアンな感じのブレスレットやネックレスをしている。
こころなしか、手のひらサイズのピオンもツヤツヤだ。
「リップクリームを塗ってほしいと、せがまれました。どうせ、成分を吸収してしまうのに」
「ああ、ワラビもです!」
二人でアハハと笑う。
ボクの肩に乗っているワラビも、ピオンと一緒に笑っていた。
「じゃあ、行きましょうか。ヒヨリさん」
「はい。ツヨシさん」
電車に三駅分乗って、水族館のある場所へ。
「先に、お食事しましょう」
「そうですね。もうお昼時になりますし」
出発は、割と遅めにした。今から行く水族館は、夜からの催しが見どころだからだという。
お昼は、たこ焼き屋さんにした。自分で焼くスタイルである。
「うまくできるかな?」
「できないから、いいんじゃないですか」
お互いぎこちない動作で、たこ焼きを作った。焼けるまで、からあげとポテトで繋ぐ。
「めちゃめちゃヘタクソですね。ボク」
「かわいくていいじゃないですか」
ボクが焼いたたこ焼きを、ヒヨリさんが率先して食べる。
ヒヨリさんが焼いた方は、ボクがいただいた。
「おいしいですね」
「生地がいいんでしょうね。上手に焼けなくても、おいしいです」
ワラビやピオンにも、食べさせる。
「身体がたこ焼きになりそうです。マスターツヨシ」
「ほかほかー」
二体のスライムたちも、楽しそうだ。
ずっと焼いていると、だんだんと手慣れてくる。
「なんだか、ここまで来ると、戦いのヒントが得られそうですね」
ワラビが、ボクの手際を観察しながら言う。
「どうなんだろうねえ」
たこ焼きの焼き方なんて、剣術に応用できるのかなぁ。
そう意識してしまうと、ますます下手くそになっていく。
「ボク、ダメダメですね」
「とんでもありません。こういうのって、みんな上手じゃなくていいじゃないですか」
うまくいかなくても、ヒヨリさんは楽しそうだ。
「わたしは、薬学をやっています。お客さんに出すお薬に、失敗は許されません。ですが、それまでには多数の試行錯誤があります。とんでもない大失態をして、研究所が何度吹っ飛んだか」
ウフフと、ヒヨリさんが笑う。
笑えるくらいだから、大事には至らなかったのだろうけど。
「でも、そんな思いをしてきたからこそ、安全なポーションを提供できるんです」
ヒヨリさんが、そんな体験をしていたとは。
「最初はみんな、下手っぴなんですよね。調薬も、冒険も」
「はい。ボクはワラビと出会うまで、ドジばっかり踏んでいました」
周りに迷惑をかけてはいけないと、ソロプレイにこだわりすぎていた。
「わたしも冒険者としてやっていけるか、ずっと不安でした。ツヨシさんに導かれて、やっとここまで来られたんです」
「ヒヨリさんが強くなったのは、ヒヨリさんの努力のたまものです」
ワラビがいなかったら、こんな出会いもなかっただろう。ヒヨリさんを助けようとしても、共倒れになっていたかもしれない。
「ありがとうございます、ツヨシさん。この調子で、デートもちょっとずつうまくなっていきましょうよ」
「はい。ヒヨリさん」
ヒヨリさんのこういうところ、ホント好きだ。
お腹もいっぱいになったことで、メインの水族館に。
ペンギンの飛び込みを、見ることができた。
「ここのメインといえば、ジンベエザメですよね」
「うん。大きいねぇ」
巨大なサメが、水槽内で泳いでいる。今にも、見ている子どもをすっぽりと食べてしまえるのではないか? それくらいの、迫力がある。
「あんなに大きいのに、歯が小さいんですよね。主食も魚ではなくて、プランクトンですし」
「うん。人は見かけによらないね」
そう考えると、ドラゴンってもっと獰猛な生物だとばかり思っていた。
「ごめんなさい、ヒヨリさん。守ってあげられなくて」
「わたしも、申し訳なく思っています。ヒヨリさん」
ボクとワラビで、ヒヨリさんに謝罪する。
「いいえ。ツヨシさんのせいじゃありません」
悪いのは魔族の方だと、ヒヨリさんは言ってくれた。
「ドラゴンのお宿、たのしかったー」
まあ、ピオンが一番、堪能していたよね。
「ドラゴンさんたち、いい方なんですけど、戦わないといけないんですよね」
「そうだね。殺し合いではないから、いいんだけど」
あくまでも、ボクたちの戦いはケンカだ。互いに、命を奪い合うわけじゃない。しかし、アクシデントはつきものだ。ルールのもとで戦っていても、命を落とす場合もある。
「心配しないで。ボクは負けないから」
「応援しています。ツヨシさん」
夜になった。メインである、クラゲの展示会が開かれる。
小さいクラゲが、人の身長以上に触腕を伸ばす。手のひらサイズのワラビより、小さいのに。
「ほおおおお」
ボクは、思わず声を上げた。
「キレイ」
密集して泳ぐクラゲに、ヒヨリさんが圧倒されている。
幻想的な光景に、ボクも思わずため息が漏れた。
「ワラビ、楽しい?」
「実に、興味深いです。モンスター以外にも、こういった動物たちを観察するのは、勉強になります」
「別に戦闘の役に立てようなんて、思わなくていいからね」
車を使って、一緒に行ってもいい。が、それだとヒヨリさんにばかり負担がかかる。今から乗る電車は常時空いているから、リラックスできるだろう。
「お待たせしました」
いつもと違うヒヨリさんの服装に、ドキリとなる。
クリーム色のコートに、スカートスタイルだ。
シャーマンだからか、アジアンな感じのブレスレットやネックレスをしている。
こころなしか、手のひらサイズのピオンもツヤツヤだ。
「リップクリームを塗ってほしいと、せがまれました。どうせ、成分を吸収してしまうのに」
「ああ、ワラビもです!」
二人でアハハと笑う。
ボクの肩に乗っているワラビも、ピオンと一緒に笑っていた。
「じゃあ、行きましょうか。ヒヨリさん」
「はい。ツヨシさん」
電車に三駅分乗って、水族館のある場所へ。
「先に、お食事しましょう」
「そうですね。もうお昼時になりますし」
出発は、割と遅めにした。今から行く水族館は、夜からの催しが見どころだからだという。
お昼は、たこ焼き屋さんにした。自分で焼くスタイルである。
「うまくできるかな?」
「できないから、いいんじゃないですか」
お互いぎこちない動作で、たこ焼きを作った。焼けるまで、からあげとポテトで繋ぐ。
「めちゃめちゃヘタクソですね。ボク」
「かわいくていいじゃないですか」
ボクが焼いたたこ焼きを、ヒヨリさんが率先して食べる。
ヒヨリさんが焼いた方は、ボクがいただいた。
「おいしいですね」
「生地がいいんでしょうね。上手に焼けなくても、おいしいです」
ワラビやピオンにも、食べさせる。
「身体がたこ焼きになりそうです。マスターツヨシ」
「ほかほかー」
二体のスライムたちも、楽しそうだ。
ずっと焼いていると、だんだんと手慣れてくる。
「なんだか、ここまで来ると、戦いのヒントが得られそうですね」
ワラビが、ボクの手際を観察しながら言う。
「どうなんだろうねえ」
たこ焼きの焼き方なんて、剣術に応用できるのかなぁ。
そう意識してしまうと、ますます下手くそになっていく。
「ボク、ダメダメですね」
「とんでもありません。こういうのって、みんな上手じゃなくていいじゃないですか」
うまくいかなくても、ヒヨリさんは楽しそうだ。
「わたしは、薬学をやっています。お客さんに出すお薬に、失敗は許されません。ですが、それまでには多数の試行錯誤があります。とんでもない大失態をして、研究所が何度吹っ飛んだか」
ウフフと、ヒヨリさんが笑う。
笑えるくらいだから、大事には至らなかったのだろうけど。
「でも、そんな思いをしてきたからこそ、安全なポーションを提供できるんです」
ヒヨリさんが、そんな体験をしていたとは。
「最初はみんな、下手っぴなんですよね。調薬も、冒険も」
「はい。ボクはワラビと出会うまで、ドジばっかり踏んでいました」
周りに迷惑をかけてはいけないと、ソロプレイにこだわりすぎていた。
「わたしも冒険者としてやっていけるか、ずっと不安でした。ツヨシさんに導かれて、やっとここまで来られたんです」
「ヒヨリさんが強くなったのは、ヒヨリさんの努力のたまものです」
ワラビがいなかったら、こんな出会いもなかっただろう。ヒヨリさんを助けようとしても、共倒れになっていたかもしれない。
「ありがとうございます、ツヨシさん。この調子で、デートもちょっとずつうまくなっていきましょうよ」
「はい。ヒヨリさん」
ヒヨリさんのこういうところ、ホント好きだ。
お腹もいっぱいになったことで、メインの水族館に。
ペンギンの飛び込みを、見ることができた。
「ここのメインといえば、ジンベエザメですよね」
「うん。大きいねぇ」
巨大なサメが、水槽内で泳いでいる。今にも、見ている子どもをすっぽりと食べてしまえるのではないか? それくらいの、迫力がある。
「あんなに大きいのに、歯が小さいんですよね。主食も魚ではなくて、プランクトンですし」
「うん。人は見かけによらないね」
そう考えると、ドラゴンってもっと獰猛な生物だとばかり思っていた。
「ごめんなさい、ヒヨリさん。守ってあげられなくて」
「わたしも、申し訳なく思っています。ヒヨリさん」
ボクとワラビで、ヒヨリさんに謝罪する。
「いいえ。ツヨシさんのせいじゃありません」
悪いのは魔族の方だと、ヒヨリさんは言ってくれた。
「ドラゴンのお宿、たのしかったー」
まあ、ピオンが一番、堪能していたよね。
「ドラゴンさんたち、いい方なんですけど、戦わないといけないんですよね」
「そうだね。殺し合いではないから、いいんだけど」
あくまでも、ボクたちの戦いはケンカだ。互いに、命を奪い合うわけじゃない。しかし、アクシデントはつきものだ。ルールのもとで戦っていても、命を落とす場合もある。
「心配しないで。ボクは負けないから」
「応援しています。ツヨシさん」
夜になった。メインである、クラゲの展示会が開かれる。
小さいクラゲが、人の身長以上に触腕を伸ばす。手のひらサイズのワラビより、小さいのに。
「ほおおおお」
ボクは、思わず声を上げた。
「キレイ」
密集して泳ぐクラゲに、ヒヨリさんが圧倒されている。
幻想的な光景に、ボクも思わずため息が漏れた。
「ワラビ、楽しい?」
「実に、興味深いです。モンスター以外にも、こういった動物たちを観察するのは、勉強になります」
「別に戦闘の役に立てようなんて、思わなくていいからね」
0
お気に入りに追加
1,197
あなたにおすすめの小説

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。
地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。
俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。
だけど悔しくはない。
何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。
そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。
ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。
アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。
フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。
※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています


【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~
WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
1~8巻好評発売中です!
※2022年7月12日に本編は完結しました。
◇ ◇ ◇
ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。
ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。
晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。
しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。
胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。
そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──
ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?
前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる