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第四章 新たな仲間と、姫騎士
第26話 街道作り
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ボクたちは、ナップルを連れてネイス・クルオン村に戻ってきた。
「紹介しよう。コイツはナップル・ケンフェル。三四歳で、オレっちの娘だ」
「よろしくな!」
スプルスさんに紹介されて、ナップルが親指を立てる。スプルスさんの名字は、「ケンフェル」と言うらしい。見た目は一四歳くらいなのに、ボクより五つも歳上だなんて。
「キミにもう一人、娘がいたなんてね」
「三姉妹の末っ子さ。こいつは姉妹の中で一番、頭のできが悪い。それで、鉱夫のマネごとをさせているんだよ。一応これでもモンク、つまり聖職者だぜ」
「ついでにいうと、ちゃんと処女だぜ!」
ナップルがまた親指を立てた。
それと、もう一人。
「ヴェリシモだ。ダリエンツォより派遣された、大使である。よろしく頼む」
二人の紹介を受けて、拍手が鳴る。
「姫様、ホントに大使って扱いでいいんですか?」
「構わない。大使なのは事実だし」
自身が姫様であることは、内緒にしてくれとのこと。みんなが萎縮してしまうからだとか。
「私のことは、気軽に呼び捨てでかまわないので」
「じゃあ、ヴェリシモさんで。みなさんも、かまわないよね?」
ヴェリシモさんも、ナップル共々拍手で迎えられた。
「で、アタイはなにをすれば?」
「こっちからトンネルを掘ろうと思ったんだけど、どうだろうね?」
ボクらは、ずっと邪魔だった北西の岩山まで来ている。ネイス・クルオンのすぐ側に鎮座し、行く手を阻んでいた。この岩石地帯のせいで、あらゆる通行が妨げられている。なんとかしたかった。削った岩を加工もしたかったし。
「岩の加工は可能だが、アタイらでもトンネルは難しいかな?」
「そうなのかー」
「アタイらドワーフでも、この岩は手こずっている」
「どうして?」
「岩自体に、価値がねえんだよ」
硬いだけで、特にいい素材でもないらしい。
「加工がしづらいだけで、丈夫だったり強い武器防具になるってわけでもねえし、鉱石だって取れるわけじゃねえんだよな」
掘ったとしても、貴重な魔法石やレア鉱石など手に入らないのだとか。本当に、単なる石でしかなかった。
「泥で動かしてどけた方が、王都のためになるんじゃねえのかとさえ思うぜ」
しかし、この岩は地下深くまで続いているらしい。どけたくても、どけられない。
「どうしようか、コーキ? 専門家の意見でも、岩をトンネルにしても意味ないって」
「もうひとりの専門家に、聞いてみようかと」
パロンが残念がる中で、ボクはピオナに調査を頼んだ。
ピオナが、岩にスライムを染み込ませていく。
ブツブツと、スライムが岩を溶かす。だが、途中でやめてしまった。
「ダメですね。硬いだけの岩です。高価な金属でもありませんし、調査してみても、高価な金属類は含有していません」
掘るだけ、ムダだそうだ。
「めんどくさ」
「まったくだ」
ナップルも、父親のスプルスさんも、唖然としている。
「ですが、奥にダンジョンがあります」
そこの魔物を撃退すれば、トンネルを掘っても大丈夫だという。
「また、ダンジョンの近くに水源があります。かなり地底ですが」
水を確保できれば、またこの土地もうるおいそうだ。
「ですが、迂回路という手もあります」
目的はあくまでも、流通の道をもうけること。ダンジョンは、後回しでいいだろう。
「ひとまず、街道が先決かな」
「はい。岩を削るのもいいですが、もう一つご提案が」
「なにかな?」
「岩山の上に、橋をかけちゃうんです」
なるほど。木の橋を作って囲んじゃえ、と。
「時間がかかりすぎないか?」
もっともらしい質問が、ヴェリシモさんから出た。
「大丈夫さ。ね、ピオナ」
「はい。参ります!」
ボクはピオナを伴って、木馬で岩の周辺を移動する。
岩のそばに等間隔で木を植えていく。苗木はすべて、ボクの腕から生えてきたものだ。
ヴェリシモさんと一緒に、岩を避けて木を植え続けた。
「うわうわ、早馬より、ずっと早いな。少々驚いているぞ」
木馬のスピードに、ヴェリシモさんは振り落とされそうになっている。
「木が伸びていくぞ!」
だが、ヴェリシモさんは眼前の光景に目を奪われていた。
ニョキニョキと、植えた先から苗木がみるみる育つ。
「パロンとナップルは、反対側をお願い」
「ワシも手伝おう」
「お願いします、クコ!」
パロンにも、同様の処理をしてもらう。同じように高速移動式の木馬に乗ってもらって。
「いけいけぇ!」
おっかなビックリなヴェリシモさんと違い、ナップルは楽しげだ。
木はどんどんと育ち、岩山を覆い尽くすほどに。
「これでもまだ、岩はびくともしないな」
「そう思うでしょ?」
実は、ちゃんと意味のある行動なのだ。
そうこうする間に、ボクとパロンは王都で合流する。
「帰りは、反対方向を見ていこう。王女、変化をよーく見ていてくださいね」
「うむ」
反対方向、パロンが走っていたルートで、村へと戻った。
「コーキ、なんだあれは!」
ヴェリシモさんが、岩の表面を指差す。
ピシ、と音を立てて、岩がひび割れ始めている。
「とうとう、始まったか」
木の根っこが、岩から突き出している。
コンクリートを割るほど、木の生命力は高いのだ。
「紹介しよう。コイツはナップル・ケンフェル。三四歳で、オレっちの娘だ」
「よろしくな!」
スプルスさんに紹介されて、ナップルが親指を立てる。スプルスさんの名字は、「ケンフェル」と言うらしい。見た目は一四歳くらいなのに、ボクより五つも歳上だなんて。
「キミにもう一人、娘がいたなんてね」
「三姉妹の末っ子さ。こいつは姉妹の中で一番、頭のできが悪い。それで、鉱夫のマネごとをさせているんだよ。一応これでもモンク、つまり聖職者だぜ」
「ついでにいうと、ちゃんと処女だぜ!」
ナップルがまた親指を立てた。
それと、もう一人。
「ヴェリシモだ。ダリエンツォより派遣された、大使である。よろしく頼む」
二人の紹介を受けて、拍手が鳴る。
「姫様、ホントに大使って扱いでいいんですか?」
「構わない。大使なのは事実だし」
自身が姫様であることは、内緒にしてくれとのこと。みんなが萎縮してしまうからだとか。
「私のことは、気軽に呼び捨てでかまわないので」
「じゃあ、ヴェリシモさんで。みなさんも、かまわないよね?」
ヴェリシモさんも、ナップル共々拍手で迎えられた。
「で、アタイはなにをすれば?」
「こっちからトンネルを掘ろうと思ったんだけど、どうだろうね?」
ボクらは、ずっと邪魔だった北西の岩山まで来ている。ネイス・クルオンのすぐ側に鎮座し、行く手を阻んでいた。この岩石地帯のせいで、あらゆる通行が妨げられている。なんとかしたかった。削った岩を加工もしたかったし。
「岩の加工は可能だが、アタイらでもトンネルは難しいかな?」
「そうなのかー」
「アタイらドワーフでも、この岩は手こずっている」
「どうして?」
「岩自体に、価値がねえんだよ」
硬いだけで、特にいい素材でもないらしい。
「加工がしづらいだけで、丈夫だったり強い武器防具になるってわけでもねえし、鉱石だって取れるわけじゃねえんだよな」
掘ったとしても、貴重な魔法石やレア鉱石など手に入らないのだとか。本当に、単なる石でしかなかった。
「泥で動かしてどけた方が、王都のためになるんじゃねえのかとさえ思うぜ」
しかし、この岩は地下深くまで続いているらしい。どけたくても、どけられない。
「どうしようか、コーキ? 専門家の意見でも、岩をトンネルにしても意味ないって」
「もうひとりの専門家に、聞いてみようかと」
パロンが残念がる中で、ボクはピオナに調査を頼んだ。
ピオナが、岩にスライムを染み込ませていく。
ブツブツと、スライムが岩を溶かす。だが、途中でやめてしまった。
「ダメですね。硬いだけの岩です。高価な金属でもありませんし、調査してみても、高価な金属類は含有していません」
掘るだけ、ムダだそうだ。
「めんどくさ」
「まったくだ」
ナップルも、父親のスプルスさんも、唖然としている。
「ですが、奥にダンジョンがあります」
そこの魔物を撃退すれば、トンネルを掘っても大丈夫だという。
「また、ダンジョンの近くに水源があります。かなり地底ですが」
水を確保できれば、またこの土地もうるおいそうだ。
「ですが、迂回路という手もあります」
目的はあくまでも、流通の道をもうけること。ダンジョンは、後回しでいいだろう。
「ひとまず、街道が先決かな」
「はい。岩を削るのもいいですが、もう一つご提案が」
「なにかな?」
「岩山の上に、橋をかけちゃうんです」
なるほど。木の橋を作って囲んじゃえ、と。
「時間がかかりすぎないか?」
もっともらしい質問が、ヴェリシモさんから出た。
「大丈夫さ。ね、ピオナ」
「はい。参ります!」
ボクはピオナを伴って、木馬で岩の周辺を移動する。
岩のそばに等間隔で木を植えていく。苗木はすべて、ボクの腕から生えてきたものだ。
ヴェリシモさんと一緒に、岩を避けて木を植え続けた。
「うわうわ、早馬より、ずっと早いな。少々驚いているぞ」
木馬のスピードに、ヴェリシモさんは振り落とされそうになっている。
「木が伸びていくぞ!」
だが、ヴェリシモさんは眼前の光景に目を奪われていた。
ニョキニョキと、植えた先から苗木がみるみる育つ。
「パロンとナップルは、反対側をお願い」
「ワシも手伝おう」
「お願いします、クコ!」
パロンにも、同様の処理をしてもらう。同じように高速移動式の木馬に乗ってもらって。
「いけいけぇ!」
おっかなビックリなヴェリシモさんと違い、ナップルは楽しげだ。
木はどんどんと育ち、岩山を覆い尽くすほどに。
「これでもまだ、岩はびくともしないな」
「そう思うでしょ?」
実は、ちゃんと意味のある行動なのだ。
そうこうする間に、ボクとパロンは王都で合流する。
「帰りは、反対方向を見ていこう。王女、変化をよーく見ていてくださいね」
「うむ」
反対方向、パロンが走っていたルートで、村へと戻った。
「コーキ、なんだあれは!」
ヴェリシモさんが、岩の表面を指差す。
ピシ、と音を立てて、岩がひび割れ始めている。
「とうとう、始まったか」
木の根っこが、岩から突き出している。
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