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第四章 新たな仲間と、姫騎士

第22話 はじめての依頼人

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 ツリーイェンの受付嬢が、ここのギルマスになってくれるだなんて。

「腕の心配かい? あんたのトーテムに頼らなくても、魔物はやっつけてきたよ」

 手土産として、ギンコさんは魔物の素材を大量にくれた。

「どうして? 手が早いじゃないか」

「察しがいいね、パロン。実は、早い話が監視対象になってる」

 ツリーイェンから持ってきたお酒を囲み、ギンコさんはパロンと語らう。

「この村が?」

「違う。コーキが、だ」

 どうも、ボクはとんでもない大活躍をしていたらしい。

「で、怪しい動きがないか監視しろってさ」

「王都が、動いたんだね?」

「そういうこった。どっちかっていうと、『見守ってやってくれ』ってニュアンスだったけどね」

 ボクが変な組織や国家に利用されないよう、見張っていてほしいと。

「アタシも同感だ。コーキは、お人好しだからさ」

「言ってるそばから、なにか厄介ごとが来たよ」

 息を切らせて、中年の男性が息を切らせて走ってきた。

「なにがあった?」

「村が、流行り病に!」

 これは、のんびりしていられない。
 依頼人が言うには、村はツリーイェンと王都の近所にあるという。
 到着したものの、村には活気がない。みんな衰弱している。
 もう村人の三割は、病の犠牲になってしまったそうだ。

「ありったけの毒消しを持ってきたけど、効くのかな? 数も心配だよ」

 村は、想像していた以上の危険度だった。「治療ならお任せあれと」意気込んでいたパロンが、弱音を吐くほどに。

「とにかく、診せてもらおう」

 みんな、顔に斑点があった。

「く……」

 パロンが、苦い顔をする。

「この人たちは、長くないかも」

「ええ!?」

 村に広まった病は、パロンの薬でも延命処置しかできないそうだ。

「そんな。ここに来た意味が、ないなんて」

 なにもできずに、帰ることになるとは。

 苦しんでいる少女が、ノドの渇きを訴える。
 しかし、水が汚染されているために、飲料水を取ることができない。
 ポーションでごまかすが、子どもは余計に咳き込んだ。苦いためだ。

 せめて、甘いものを。でもグミだと、飲み込みづらいかも。ノドに炎症を起こしているから。

「待ってて」

 自分の身体からツタを伸ばし、ボクはブドウを生成する。

「ボクから伸びてきたブドウを、お食べ」

 子どもに、ブドウを食べさせてみた。
 抵抗するかなと思ったが、子どもは喜んで口にする。

「お、おおおおお!」

「コーキ見て!」

 少女の顔から、斑点がなくなっていく!

「治った! ウソみたい! 長寿のハイエルフさえ恐れる、大災害級の病なのに!?」

 これ、治ったんだ。ボクにも役に立つことができた。
 この調子で、ボクはどんどん自分からブドウを育てる。

「はやく、ブドウをみんなに」

 ブドウを食べた人々は、次々に体調がよくなっていく。

「ありがとうございました! なんとお礼を言っていいやら!」

「礼には及びません。もしよければ、我々と交流を」

「はい! ぜひ! うちは海が近いので、海産物などをご提供できます!」

 海か! 海の幸なんて、最高だ! それだけで、十分だよ。大収穫だ。
 しかし、やっておかなければならないことが。

「この病の発端は、わかりますか?」

「それが」

 村長によると、よくわからないという。

『コーキさま、わたしに診させていただけませんか』

 肩にいるピオナのゴーレムから、そう提案が。
 ピオナなら、わかるというのだろうか。

「やってみよう」

 最後の患者を、検査する。直後にブドウを食べさせて、元気にした。

『わかりました。この海岸沿いにある岩山に、毒を持ったイソギンチャクが生息しています。その魔物を倒さなければ、大繁殖してしまうでしょう』

 よし、ではイソギンチャク退治だ。
 魔物は、岩山にダンジョンを作り、繁殖していたようである。

『コーキさま、あそこです!』

 毒々しい紫色のイソギンチャクが、ウジャウジャと巣を作っていた。

「うわ。これが人に寄生していたのか」

 本来なら、動物に取り憑いて数を増やすという。この世界では火葬文化があるから、そう大量発生は防げていた。しかし、刺されたら三日と持たない。その上に、接触感染までするという。

 空気感染しないことが、せめてもの救いか。そうでなければ、我がネイス・クルオン村も危なかった。

「仕留めるよ! 【サンダーソード】!」

「【アタック・トーテム】!」

 ボクとパロンの連携で、魔物を無事に倒す。
 他に残っている毒素や、残存している魔物はいないか確認した。どうやら、大丈夫らしい。

「どこから、沸いてきたんだろう?」

「わからない。でもまだ世界には、こんな怖い魔物がいるのかも」

「なんか、物騒だね」

「いや。アプレンテス地方周辺くらいだよ。ヤバイ魔物が出るのは。それよりも、ワタシたちだけで対処は難しいかも」

 ボクたちに足りないのは、戦闘力だもんね。

「冒険者ギルドができたのは、ちょうどよかったかも?」

「そのようだ。まずはギンコに頼んで戦力をよこしてもら……」

 パロンが言いかけて、ボクたちは悲鳴を聞いた。

「女性の声だね」

「なんか男らしい声だけど!」 

「村の向こう側だ!」

「よし」

 急いで、声のする方角へと走る。

「うわあああ!」

 赤と黒の軍服を着た女性が、モンスターに襲われていた。
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