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第四章 新たな仲間と、姫騎士

第20話 スライムに名付け

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 ボクが呼びかけると、スライムは飛び跳ねる。うなずいているようだ。

「コーキのそばにいたいみたいだね」

 パロンによると、そうらしいけど。

「でも、スライムと世界樹って、セットで生息しているんでしょ? 離れ離れになって大丈夫なのかな?」
「他に仲間がいるから、自分はついていかなくてOKなんだって」

 トレントは、スライムを自動生成でき、水さえあれば自然に大量発生できるらしい。
 そのため、ボクのところにスライムを置いていってくれた。
 ボクのところに残ったスライムは、我が世界樹の所有物になったという。スライムは世界樹に付着する不純物を食べて生きるので、エサには困らないそうだ。それは、ボクの身体にも言えることで。

「キミは、お友達が行っちゃって、さみしくない?」

 ボクが聞くと、スライムはまたぴょんぴょんとはねた。

「ワタシたち、というかコーキと一緒に、世界を見て回りたいんだって。この土地がどうなるかも、見届けたいって」

 パロンに、スライムの言葉を翻訳してもらう。

「そうだっ。コーキ、名前をつけてあげたら?」

 ウチに越してきたんだから、名前なしだとかわいそうだね。

「シャーマンって【ペットビルド】もあるでしょ? 仲間にしたモンスターに名前をつけてあげることで、正式契約になるんだ」

 逆に名前をつけないと、他の冒険者に名前をつけられてしまったら横取りされてしまうらしい。

「キミはもうレベルが十分上がっているから、ペットビルドを取っても大丈夫」

「そのペットを手に入れるスキルってどれ?」

「これだよ。【魔物使い】ってとこ」

 パロンが、教えてくれた。

「魔物使いは、シャーマンの人気ビルドだよ。それを取るために、シャーマンになる人だっているんだ。ほら、かわいいクマを連れていた冒険者を見たでしょ? あんな感じで、動物を連れて歩けるんだ」

「そう言われると、すごいね。夢が膨らむよ」

 ステータス表を開き、ペットビルドにポイントを振る。

「よし。取ってみるね」

 シャーマンのスキル、魔物使いを取った。
 ひとまず、ボクの方はこれでいいか。あとは、スライムの名付けだ。

「なにがいいかな?」

 好物のブドウをあげながら、スライムに聞いてみる。いろんな果物を生やしては、この子にあげてみたけど、どうも巨峰が一番好みらしい。イメージしたものを身体から生やすボクの能力って、改めて考えるとすごいね。

「よし、キミは今日から『ピオーネ』から取って、『ピオナ』だ」

 気に入ったのか、ピオナはぴょんぴょん飛び跳ねた。

「ピオーネ? どういう意味?」

「ボクの世界の言葉で、『開拓者』って意味らしい」

 荒れ地を再生させる開拓者の名前に、ふさわしいじゃないか。ただ、そのままだと果物のピオーネと混同してしまうから、ピオナにした。
 ピオナはボクに懐いて、全然離れない。気に入ってもらえたようだ。

「ワシのポジションが、パロンに戻ったようじゃのう」

 クコが、ボクからパロンの肩に移る。

「正式に名付けをしてやるがよい。そうすれば、コヤツはお主の従魔として仕えるじゃろう」

「わかった」

 クコのレクチャーに従って、正式に名付ける。

「コーキが命ずる。キミの名前は、『ピオナ』だ!」

 ボクの肩から飛び退いて、ピオナは発光した。

「本契約が始まったよ」

「いよいよじゃ……ぬな!?」

 パロンもクコも、口をあんぐりと上げる。
 ボクも同じ顔になっていただろう。
 スライムが、人の形を取り始めたのだから。
 体中にツタを巡らせた女性が、目の前に立つ。青紫色の髪をした、豊満な女性だ。背丈が、誰よりも高い。

「このたびは、契約を結んでくださってありがとうございます。スライムのピオナです」

 声まで、大人びている。どうもこのスライムは、女の子だったらしい。

「正確には、ドリアード・スライムなんですけどね」

 ピオナが、オホホと上品に笑った。ドリアードとは、木に宿っている精霊のことだ。世界樹とスライムが合わさって、人の形を取っているという。

「キミはホントに、ピオナなんだよね?」

「はい。証拠はここに」

 たしかに、少女の頭にはピオーネをかたどった髪飾りが。この少女がピオナなのは、間違いないだろう。

「この髪飾りが、わたしとコーキさまとの契約の証となります」

「他の魔物やシャーマンたちには、ボクとピオナとの関係がわかるようになっているんだね?」

「はい。相思相愛だと」

 お、おう。

「コーキさま、パロンさま、クコさま。その説は助けてくださって、ありがとうございます。大したことはできませんが、主人コーキさまに成り代わり、わたしがお店の番をします」

 ボクたちが旅をしている間、パロンのお店で働いてくれるそうだ。

「コーキさま。あなたには、こちらのアイアンゴーレムを」

 ピオナは手から水を発する。そばにあった鉄クズに、水をかけた。この鉄は、機械に改造しなかった余り物だ。
 鉄が、青白いアイアンゴーレムへと変わる。

「これは?」

「わたしとコーキさまとの、愛の結晶ですわ」

 ピオナはオホホと笑っているが、ボクたちは笑えない。
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