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第二章 ウッドゴーレム、土地開拓を開始

第12話 クレキシュ渓谷郡

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「コーキとはこの姿で会うのは、初めてだな! オレはブナ! 今はクコに代わって、森の管理をしている」

「人間になれたんですね?」

 言葉も話せるとは。

「この体型は、しんどいんだけどな。イノシシが街を歩くわけにはいかん」

「クコがいなくなって、森はどうですか?」

「ああ。大盛況さ。一応、クコには報告していたんだ。鳥が飛んできただろ?」

 たしかに。

「あれは、シドの森からオレがつかわせた連絡係だ。ところがそいつがよお、この地帯にいついちまった」

 仕事を放り出して、ボクが植えた果物に夢中になっちゃったらしい。

「いつまで経っても帰ってこねえから、オレが直接で向いたんだ。で、今クコと飲んでる」

 老人とレスラー中年が、お酒を酌み交わしている。元はリスとイノシシだけど。

「あの鳥どもは、こっちで見ていてくれ。巣まで作っちまったから、もう森には帰ってこねえだろう」

「そうですね」

「そうそう。いい忘れていた。川を引いてきてやったぜ」

 よく見ると、うちの近くに水が流れている。細い川だが、これで井戸水だけに頼ることもない。水をたどって、魚や動物たちも戻ってくるかも。

「なにより、水が必要だと思ってな」

「ありがとうございます!」

「じゃあ、オレは森に帰るぜ」

 立ち上がって、ブナさんが「ありがとよ」と頭を下げる。

「ありがとうございました」

「いいってことよ。こちらも、うまい酒をありがとよ」

 ブナさんは、帰っていった。

「こっちも準備しよう」

 木材で家を立て、家具を設置していく。といっても、ボクはアイテムを整理するくらいだけど。

「楽器類は、どうしようか?」

「店の前に、置いておくよ」

 イスに、ウッドゴーレムの手を添えつけた。演奏するだけなら、腕だけでいいからね。
 ゴーレムチェアが、演奏を始める。ああ、いいね。絵面はともかく、癒される。

 余った家具類は、樹木の素材にした。川に沿って、植えていくことにする。ゴールは、魔物の死体を集めている腐葉土地点にした。そこへ大きな苗木植えて、養分になってもらおう。

「コーキ、その木は?」

「大きな木を植えて、目印にしようかなって」

 道路にも、溝を掘っていった。

「人工の貯め池を作るのも、いいかも」

「池なら、今から作ってあげるよ」

 木もかなりの量が育ってきたので、ゴーレムを大量に増やす。腐葉土に植えた大木の、周囲を掘ることにした。動物が飲みに来やすいように、広く浅く掘り進む。彫り作業はウッドゴーレムが、石ころで池周辺を固めるのはクレイゴーレム、つまり泥のゴーレムに任せた。ゴーレムたちの動力は、モンスターの落とした魔法石である。

「いいのかな?」

「広い荒野だからね。ため池くらい作ったって問題ないよ」

 魔物が水を飲みに来ても、すべてのモンスターが凶暴なわけじゃない。

「あとは、彼らに任せよう。その間にワタシたちは、ダンジョン巡りだ」

「ダンジョン、とな」

 賢人クコにダンジョン探索すると告げた。

「というわけなんだ」

「うむ。クレキシュ渓谷郡か。あそこには、太古の遺跡もあるそうじゃ」

「大昔、あそこには人が住んでいたの?」

「詳しいことは、ワシにもわからぬ。よし、ワシも共に行こう」

 クコが、ボクの肩に乗る。

「とかいって、お酒が飲みたいだけじゃん」

「なにをいうか。ワシは酒のために生きておるのだ」

「賢人として、あるまじき発言だね」

「悟ったのじゃ。あらゆる生き物は、欲望に忠実に生きることで喜びを得るのだと」

 まったく悪びれることなく、クコは断言した。

 クコの言葉は深いようで、浅い。

「ごまかしたってムダだよ。よくそんな生き方で、今まで賢人としてやってこれたよね?」

「清貧や極度につましい生き方など、限度があるというわけじゃ。欲望を開放せずして、何が生きがいか。注意すべきは単に、度が過ぎる浪費なのじゃ」

 たしかにね。ミニマリストって生き方もあるけど、節約が好きな人がやればいい。

「まあ、否定はしないけど」

 パロンは、辺りを見回す。

「まだワタシにも、ここの生態系がわかっていないんだ。どんな薬草が育ち、どれだけ数が増やせるのかわかってから、本格的に栽培をしたいね」

 そのためにも、ダンジョンの素材が気になるらしい。行商人の安全も、確保したいからね。

「じゃあ、池の水も、渓谷まで引いていこうよ。岩だらけで、きっと干からびているよ」

「いいね。生態系に問題なければ、引っ張ってこよう」

 見張りだけ立てて、パロンの店は休業にした。


 渓谷郡へ向かいつつ、溝を掘っていく。

「コーキさあ、めっちゃレベル上がってない?」

「うん。トーテムのレベルが、勝手に上がってるんだ」

 トーテムは、ツリーイェンの街までにも立てている。そのダルマたちが戦ってくれているから、ボクのレベルもかなり増えた。プラス五くらいは上がっているかな。

「スキル振りをする?」

「うん。ボクも、自分でゴーレムを作れるようになるといいかなって」

「いいと思うよ」

「作ってみたいものがあるんだ」

 ボクは枯れ木に触れて、【木馬】を作成した。ボクの魔力を注ぎ込み、樹木を活性化させてから、木馬へと変形させる。

「これで、馬も自由にできるよ」

「いいね。じゃあ、今連れている馬は放してもいいね」

 今まで水をあげつつ大事にしていたけど、渓谷が危険だと言うなら馬は連れていけない。

「うん。行っておいで!」

 お世話になった馬に、別れを告げた。自由になった馬は、アプレンテスの小屋へ戻っていく。

「じゃあ、スピードを上げるよ!」

 木馬に魔法を注ぎ込み、ボクは渓谷へと急いだ。

(第二章 完)
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