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第二章 ウッドゴーレム、土地開拓を開始

第8話 種まき

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 魔物との戦闘に地下水を利用したことで、水源は確保できた。これでボクも賢人クコも、干からびなくて済む。
 果実の枝を枯れ木に接ぎ木して、酒の原料になるブドウを育てる。今はクコしか飲まないから、一本でいい。クコも枯れ木から【ソーンバインド】を喚び出して、光合成の足しにする。

「コーキよ。これからどうするのじゃ?」

「井戸水を拠点に、家を建てようかなって」

 自分の身体から伸びてきた苗木を折って、地面に刺す。

「これで、丸太の素材になる木材が育つらしいけど」

 ボクが世界樹でできていると言っても、いきなり丸太レベルの木を生やせるわけじゃない。最初は小さい苗木しか作れないようだ。

「最初はボロ小屋で、雨風をしのごう」

 かろうじて残っていたボロボロの小屋を、仮拠点にさせてもらう。土壁はクコが魔法で補強し、辺りにもう一本ダルマ落としトーテムを設置した。

「喝!」

 いきなり、ダルマが火の玉を吐く。

「うわ、なんだ?」

「魔物が襲ってきたのじゃ」

 黒焦げになった魔物が、家の近くに横たわっていた。
 素材を剥ぎ取って、死体は苗木の肥料にする。

「戦闘はトーテムに任せて、ボクは地面を耕そう」

 ボクたちは道中、訪ねた村から傷んで使えなくなった農具をもらっていた。パロンの錬金術で、高級品並の切れ味にしている。

「すごい。硬い地面がザクザク掘れるよ」

「うむ」

 ボクが掘った土に、クコが野菜の種を植えた。

「酒の材料ならええんじゃがのう」

「ワインでガマンして」

「何を言う? ワインはガマンできんぞ」

「それもそうか」

 二人で談笑しながら、種まきをする。

 反対の荒野には、薬草を植えておいた。

「村から、ミミズももらってきたよ。放すね」

 生き物はアイテムボックスに入れられない。だから、ボクが自分の足回りに飼っておいた。ようやく、放す時が来たか。
 ミミズを足で育てるなんて、気持ち悪いかもしれない。だが、ボクはウッドゴーレムだから、まったく気にならなかった。この生き物は、土をよくしてくれる存在だからね。
 畑から離れた土地にも、ミミズを放つ。こちらは、モンスターの死体処理場だ。

「ほう、ちゃんと考えておるな?」

「ミミズが大量にいる場所なら土がいい、ってわけじゃないからね」

 土がよくなると、エサである土壌内の有機物がなくなり、ミミズの数は減っていく。ミミズが大量にいる場合は、それだけ有機物が含まれている。そんな土地はカビが発生しやすく、畑にはいい環境ではない。土そのものをよくするためにだけ、働いてもらおう。

 だるま落としトーテムは、最終的に四本設置した。畑、薬草エリア、拠点、井戸にそれぞれ四箇所、置いてある。

「あとは、素材がどうなるかかなあ」

 素材たちには一応、多少の魔力を込めておいた。
 他の枯れ木にも、果物の接ぎ木をしてある。鳥や虫類が、戻ってくればいいんだけど。

「石をなんとかしたいね。石材もほしい」

 岩石を砕ける道具を手に入れたい。鉱石を掘れる人も雇いたかった。あの岩山って、有効活用ができそうなんだけどなあ。

「こんなもんかな?」

 夜になったので、小屋へ戻った。

 魔力が切れてきたので、一旦休む。体力的にはまだできそうだけど、農具の使用に魔力を使っていた。ウッドゴーレムって疲れを知らないって思っていたけど、ボクの魂が疲弊しちゃうみたい。トーテムが絶賛活動中だし。ダルマたちが攻撃するときのみ、ボクの魔力は消耗するようだ。
 食事は不要だけど、睡眠は必要みたい。寝ている間に大地から魔力を吸って、回復するようだ。

 明日に備えて、今日は寝ることにする。
 ゴザをかけて、床に直接ワラを敷いて寝た。ボクはゴーレムだから、疲れも痛みも感じない。しかし、人間らしい生活とは、程遠いね。
 部屋の雰囲気も、さみしい。雨風をしのげる程度の、最低限の設備しかなかった。
 家具があれば、少しは人間らしくなるかな。



「おーい。ただいまー。うわなんだこりゃあ!」

 一週間後、パロンの声が小屋まで聞こえてきた。戻ってきたようである。

「うわあ、えらいことになっちゃったね!」

 畑や果樹園が、一週間でとんでもないことになっていた。
 野菜や果実が、もう実っている。ニンジンもダイコンも。ワイン用のブドウまで。
 それだけじゃない。

「鳥だ」

 小鳥が、木に止まっている。場所からしてツリーイェン、ボクたちが最初に訪れた街から来たようだ。

「お主がワインまみれになって、ニオイを大量に落としたからのう。その香りを追って、鳥たちがここまできたようじゃな」

 ボクの旅も、ムダではなかったみたいだね。

 パロンはボクの小屋の隣に、自分の店を出す。簡易小屋を設置し、大量の道具を出した。

「お客さん、来るかな?」

「来るかもね? 一応、通り道の魔物は排除したし、道を整備できれば」

 道路か。たしかに必要かも。何もない荒野だと、道に迷う危険もあるからね。

 最後にパロンは、看板を立てる。『パロンの錬金小屋、アプレンテス支店』と書かれていた。

「あと、ツリーイェンで追加の依頼がないか見てきたよ」

 ボクが受けられそうな依頼を、何枚かもらってきたらしい。

「じゃあ、ツリーイェンのギルドに依頼の品を届けつつ、道を整備していこう」

「その前に、ここで作られた作物から、なにか作れないかチェックさせて」

「どんどん見ていってね」
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