百合に挟まれて死ぬ悪役王子に転生した百合男子、百合ップルを見守ります!

椎名 富比路

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第五章 転校生は魔王! 百合おじ最後の戦い

第35話 百合おじが選ばれた理由、狙われている理由

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「怖い顔しながら、マッサージしないー」

「おっと。申し訳ない」

 オレは引き続き、足つぼを押さえる。

「うーん。やっぱ耳かきも追加したくなーい?」

「そうだな。そこの聖女と男装勇者。耳かきを頼む」

 耳かき要員として、悪魔はティナを指名した。

 天使の方は、トマ王子を「女性として」指名する。

「ユリウス王子?」

「やってくれ。こいつらは世界の敵ではあるが、特に害はない。今は、だが」

 オレが諭すと、二人は耳かきを始めた。

「あ~。やっぱ女子に耳掃除してもらうのってサイコー」

「足つぼの痛みと、耳かきのくすぐったさを両方味わうってのも、なんだか甘じょっぱい菓子を食うような感覚だな」

 天使と悪魔は満足して、マッサージの時間を終える。


「じゃあお礼に、ウチらは魔王城で待ってるけど」

「すぐに飛ばしてやろう」

 唐突に、オレたちは魔王城まで飛ばされた。

 服装も、白衣から制服に戻っている。

「ここは、我の城ですね」

 アッシェが、辺りを見回す。

 たしかにアッシェが言うなら、ここは魔王城で間違いないのだろう。

「人払いは済ませてある。遠慮せずに戦うがよい」

 城が壊れても、戦闘が終わったら復元されるそうだ。

「ここなら、誰にも邪魔されないよ」

「お前たちを阻むものもいない。保護対象もいないから、存分に戦えるぞ」

 天使と悪魔が、構える。

「さあ、あんたたちの力を見せてよね」

「もっとも、我々も容赦しない」

 裏ボス二人は制服姿から、戦闘モードに変わった。

「エンジェル・ハイロゥ・大ッ・回ィ・転ッッッッッ!」
 
 天使は頭の輪っかを大型化させ、チャクラムのような武器にして投げ飛ばす。
 
「旋風・回し受け!」
 
 さっそくアッシェが、訓練したマギアーツを繰り出した。天使が投げたチャクラムを、回し受けで弾き飛ばす。

「ふーん。以前戦ったときより、やるようになったじゃん」

「あのときは、人質を取ったからな」

 とはいえ、裏ボスたちは卑怯な真似をしなくても強い。

「ならば、こちらも」

 悪魔が、背中に浮かんでいる羽状の自律平気を展開した。


「離れろ。オレに近づいてくる」

 羽根の一つが、オレを切り裂こうとする。
 もう一枚の羽根は、角状の突起物から雷撃を発した。

「バースト・ソバット!」
 
 オレは、対空型の回し蹴りで、剣型の羽根を蹴り飛ばす。魔法型の羽根にぶつけて、雷撃を防いだ。

「さっすが! 女神があんたを欲したのが、わかるわー」

「見事だ。【主人公】であるビューティナを操って、我々に何度も勝利しただけはあるな。だからこそ我々を倒す役割を与えられ、【第四の壁】を越えたか」

 こいつら、オレの存在を知っているのか?
 
「ウチらはあんたを倒して、女神の持つ【第四の壁を破る】能力がほしいんだよぉ」

「メタい!」

【第四の壁】とは、舞台と客席を隔てる壁のことだ。

 つまり天使と悪魔は、「ここがゲーム世界だ」とわかっているってことか。ヤツらは【第四の壁を破る】力を手に入れて、外に出る気なのか。自分たちの安住の地を築くために。


 まあ今のままだと、どうあがいても百合を満喫できない。世界の法則に縛られて、天使や悪魔の使命をまっとうするしかないからな。
 
「ユリウスくん、なんの話をしているのかな?」
 
「こっちの話だ。オレの評判がガラッと変わったことに、関係するかなと」


 とにかく、コイツらを倒さなければ、世界の法則が破壊される。
 
「第四の壁を越えて、我々は世界の法則を捻じ曲げる。この世界に、百合を普及させるのだ」

「そんなこと、させるか」

「なぜだ? 貴様は誰よりも、百合を愛でているではないか。世界が百合で溢れる世界こそ、貴様が最も望む楽園のはず」

「冗談ではない。強制された百合など、なにがうれしいものか!」
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