百合に挟まれて死ぬ悪役王子に転生した百合男子、百合ップルを見守ります!

椎名 富比路

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第五章 転校生は魔王! 百合おじ最後の戦い

第30話 百合おじ、ラスボスに土下座される

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「ユリウス・ランプレヒトさんで、間違いないですね?」

 オレの隣に座り、アッシェが語りかけてくる。

「ああ。たしかにな。それで」

 話しかけようとして、オレはアッシェに止められた。

「百合は、すばらしいですよね」

 オレにケンカを売ってくるのかと思いきや、いきなりティナとトマ王子に視線を向ける。

 あの二人、もう店に入っていたのか。

「女性同士の交際、素敵ですね。華があって。男女交際とは違った、趣があります」

 彼の目には、仲睦まじくパフェを楽しんでいる二人しか見えていない。

「ただ、我ら男子は入り込めない。一度踏み込んでしまえば、たちまち『百合に挟まれる男』として罵られる! その点、あなたはわきまえていらっしゃる。実に見事な立ち振舞かと」

 なんだコイツ? 急に力説し始めたぞ。
 
「百合の風景を見るのが、好きなのか?」

「我は男所帯なので。使用人まで、男性をあてがわれてしまいます。なにかといえば『さっさと結婚しろ』と、せっつかれていましたよ。最近、ヤンディーネン嬢と籍を入れました」

 魔王の一族も大変なんだろう。ましてヴァンパイア族となると、相手によっては昼夜逆転の生活になる。
 アッシェはデイウォーカーだから、昼間でも活動できるが。
 
 
「オレになんの用だ?」

「ユリウス・ランプレヒトに、というより、【あなたプレイヤー】さんに用事があるのですよ。ハヤシ 勇利ユウリ殿」

 オレは、イスを弾き飛ばすほどに立ち上がった。

 
 コイツは、オレがプレイヤーであると知っている!
 
 その上でオレに、何をさせようとしているんだ?

 取引、か? オレになんらかの頼み事をして、引き受けなければペナルティを課すと?

「要件を言え。返答次第では、ここで決着を……」

「お願いします!」

 ジャンピングする勢いで、アッシェがオレの側で土下座した。

 マジか。こんなイベント、見たことないぞ。


 
「ユリウス・ランプレヒト殿! どうか、お願いします、ボクを、あなたの弟子にしてください!」


 
「ええ……」

 魔王ともあろう人物が、オレに弟子入りを懇願してきた。

「弟子って、なんの?」

「鍛錬はもちろん、百合のいろはなども詳しく」

 トレーニングしろって言っても、コイツはラスボスじゃん。
 おまけに、百合の文化についても教えろとは。
 
「我は、百合のすばらしさを表面的にしか捉えておりません。もっと奥ゆかしい、あなたならではの支点がおありなんだろうと」 

「待て。どういうつもりなんだ? オレとお前は、天敵のはずだ!」

 オレはプレイヤーであり、アッシェはゲーム上ではラスボスに位置する。
 決して相容れない存在のはずだ。

 事情が、まったく飲み込めない。

「そもそもお前、ラスボスだろうが」

「そのことなんですが、実はもう我は、ラスボスではないのです」
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