29 / 36
第五章 転校生は魔王! 百合おじ最後の戦い
第29話 百合おじ驚愕! 転校生は魔王だった!
しおりを挟む
アッシェがこの学校に通って、一週間が経つ。
(あいつは、魔王じゃないか!)
オレは生徒会で、何度もそう告げようとした。
しかし、どうしたものか……。
アッシェ・シュタウプなる転校生は、魔族でありながら人間を装っている。
しかし、その実態はラスボスだ。
【灰は灰に・塵は塵に】
ラストバトルの際に、名前が判明する。
「授業は、普通に受けていたよね」
「ですよね、ディートマル様。スポーツ万能で、勉学も器用にこなしていましたね」
「ただ、誰とも交流をしようとしないんだ。誰からも慕われているが、対人関係はさっぱりしたものだったよ」
やはり、アッシェが魔王という事実は、オレしか知り得ない情報だったか。
「どうした、ユリウスくん? なにか悪いものでも食べたみたいな顔になってるよ。今日のお茶請けはゼリーなんだけど、口に合わなかったかい?」
「いや、ちゃんといただいている。柑橘が聞いていて、いい感じだ」
甘いというより、やや酸味が強い。ゼリーからわずかに伝わる甘さが、苦いコーヒーに合う。
酸っぱいオレンジと苦いコーヒーってのは、相性が悪いと思っていた。
それがどうだろう。ちゃんとお互いを引き立てている。
絶妙な甘さ加減が、味のバランスを取っているのだろう。
「そうだろ? 生徒会の二人が、アッシェくんという転校生から聞いて買ってきてくれたんだ」
二人は、生徒会で出すお茶請けに悩んでいた。
そこに通りかかったアッシェが、おすすめしてくれたという。
このゼリーを食っていると、その風景が浮かんできそうだ。
ゼリーを買う百合ップル、てぇてぇ。
しかし、ラスボスが生徒会を懐柔しているとは。
「そうか。アッシェが……」
「アッシェくん、気になるかい? ヴァンパイア族だから」
「そういうわけではない。今日は、失礼する」
生徒会の話も終わり、オレは一人もんもんと過ごした。
こんなときは、百合を満喫するか。
ティナとトマが通っているカフェに、先回りする。
「ユリウス様、どうしてみなさんにお話なさらないので? アッシェが魔王だと」
「ヴァンパイア族は一応、貴族だ。魔法科学校に通っていても、不思議ではない」
魔法科なんて通わなくても、十分に魔術知識は豊富ではあるが。
「ヘタに混乱させてもなあ」
もしオレが、「アッシェは魔王だ」と告げたところで、学校じゅうがパニックになるだけ。
「ですが、手遅れになりませんか? みんな洗脳なりをされていては、こちらに勝ち目はありません。お望みとあらば、わたしが仕留めますよ。面倒ですけど」
「いや、メンドークサ、それは待ってくれ」
テラスでクナイを出そうとしたメンドークサを、オレは止めた。
生徒が洗脳されたとか、魅了魔法を受けたとかという影響はない。純粋に、彼の人望によるものである。
今のところは、の話だが。
なにより、教師がアッシェを普通に受け入れている時点で、なにかがおかしい。
「ヤツの目的はなんだ?」
人間に化けて、というか半魔族の体を手にしてまで、人間界に降りてきた理由は?
半魔族は、魔族の中でもかなり中途半端な種族だ。
戦闘力は、下級の魔族にすら劣る。
そんな姿を取ってまで、どうして魔法科学校などに入ったのか?
しかも、人間と交流するわけでもない。かといって、人を見下している印象もなかった。生徒会に、おいしいお茶請けを提供しているくらいだし。
「んあー。わからーん。なんでだー?」
「あの、ここは空いていますか?」
後ろから、声をかけられた。
「ああ構わんぞ……って、アッシェ・シュタウプ!?」
なんと、ラスボスがオレに声をかけてきた。
(あいつは、魔王じゃないか!)
オレは生徒会で、何度もそう告げようとした。
しかし、どうしたものか……。
アッシェ・シュタウプなる転校生は、魔族でありながら人間を装っている。
しかし、その実態はラスボスだ。
【灰は灰に・塵は塵に】
ラストバトルの際に、名前が判明する。
「授業は、普通に受けていたよね」
「ですよね、ディートマル様。スポーツ万能で、勉学も器用にこなしていましたね」
「ただ、誰とも交流をしようとしないんだ。誰からも慕われているが、対人関係はさっぱりしたものだったよ」
やはり、アッシェが魔王という事実は、オレしか知り得ない情報だったか。
「どうした、ユリウスくん? なにか悪いものでも食べたみたいな顔になってるよ。今日のお茶請けはゼリーなんだけど、口に合わなかったかい?」
「いや、ちゃんといただいている。柑橘が聞いていて、いい感じだ」
甘いというより、やや酸味が強い。ゼリーからわずかに伝わる甘さが、苦いコーヒーに合う。
酸っぱいオレンジと苦いコーヒーってのは、相性が悪いと思っていた。
それがどうだろう。ちゃんとお互いを引き立てている。
絶妙な甘さ加減が、味のバランスを取っているのだろう。
「そうだろ? 生徒会の二人が、アッシェくんという転校生から聞いて買ってきてくれたんだ」
二人は、生徒会で出すお茶請けに悩んでいた。
そこに通りかかったアッシェが、おすすめしてくれたという。
このゼリーを食っていると、その風景が浮かんできそうだ。
ゼリーを買う百合ップル、てぇてぇ。
しかし、ラスボスが生徒会を懐柔しているとは。
「そうか。アッシェが……」
「アッシェくん、気になるかい? ヴァンパイア族だから」
「そういうわけではない。今日は、失礼する」
生徒会の話も終わり、オレは一人もんもんと過ごした。
こんなときは、百合を満喫するか。
ティナとトマが通っているカフェに、先回りする。
「ユリウス様、どうしてみなさんにお話なさらないので? アッシェが魔王だと」
「ヴァンパイア族は一応、貴族だ。魔法科学校に通っていても、不思議ではない」
魔法科なんて通わなくても、十分に魔術知識は豊富ではあるが。
「ヘタに混乱させてもなあ」
もしオレが、「アッシェは魔王だ」と告げたところで、学校じゅうがパニックになるだけ。
「ですが、手遅れになりませんか? みんな洗脳なりをされていては、こちらに勝ち目はありません。お望みとあらば、わたしが仕留めますよ。面倒ですけど」
「いや、メンドークサ、それは待ってくれ」
テラスでクナイを出そうとしたメンドークサを、オレは止めた。
生徒が洗脳されたとか、魅了魔法を受けたとかという影響はない。純粋に、彼の人望によるものである。
今のところは、の話だが。
なにより、教師がアッシェを普通に受け入れている時点で、なにかがおかしい。
「ヤツの目的はなんだ?」
人間に化けて、というか半魔族の体を手にしてまで、人間界に降りてきた理由は?
半魔族は、魔族の中でもかなり中途半端な種族だ。
戦闘力は、下級の魔族にすら劣る。
そんな姿を取ってまで、どうして魔法科学校などに入ったのか?
しかも、人間と交流するわけでもない。かといって、人を見下している印象もなかった。生徒会に、おいしいお茶請けを提供しているくらいだし。
「んあー。わからーん。なんでだー?」
「あの、ここは空いていますか?」
後ろから、声をかけられた。
「ああ構わんぞ……って、アッシェ・シュタウプ!?」
なんと、ラスボスがオレに声をかけてきた。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
俺だけ2つスキルを持っていたので異端認定されました
七鳳
ファンタジー
いいね&お気に入り登録&感想頂けると励みになります。
世界には生まれた瞬間に 「1人1つのオリジナルスキル」 が与えられる。
それが、この世界の 絶対のルール だった。
そんな中で主人公だけがスキルを2つ持ってしまっていた。
異端認定された主人公は様々な苦難を乗り越えながら、世界に復讐を決意する。
※1話毎の文字数少なめで、不定期で更新の予定です。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
強奪系触手おじさん
兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
農民レベル99 天候と大地を操り世界最強
九頭七尾
ファンタジー
【農民】という天職を授かり、憧れていた戦士の夢を断念した少年ルイス。
仕方なく故郷の村で農業に従事し、十二年が経ったある日のこと、新しく就任したばかりの代官が訊ねてきて――
「何だあの巨大な大根は? 一体どうやって収穫するのだ?」
「片手で抜けますけど? こんな感じで」
「200キロはありそうな大根を片手で……?」
「小麦の方も収穫しますね。えい」
「一帯の小麦が一瞬で刈り取られた!? 何をしたのだ!?」
「手刀で真空波を起こしただけですけど?」
その代官の勧めで、ルイスは冒険者になることに。
日々の農作業(?)を通し、最強の戦士に成長していた彼は、最年長ルーキーとして次々と規格外の戦果を挙げていくのだった。
「これは投擲用大根だ」
「「「投擲用大根???」」」
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる