百合に挟まれて死ぬ悪役王子に転生した百合男子、百合ップルを見守ります!

椎名 富比路

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第三章 百合おじにライバル出現……と思ったら同類だった。

第22話 百合おじ VS 百合に挟まれたい魔族

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 ダンジョンの奥に、魔族らしきモンスターがいた。丸く太ったデーモンが、こちらを見て笑っている。貴金属をジャラジャラと体中にまとって、いかにも悪趣味なパリピという感じ。
 
「あれは、カコデーモン! 強欲を司る、魔族の中でも上位種だぞ!」

「ほう。ワシの姿を見ても心が壊れぬとは。さすが、魔法科学校の生徒というわけだ」

 カコデーモンが、うれしそうに笑っている。


 魔族は本来、人間界に潜り込むことはできない。魔力が高すぎて、聖女の統べる地上領域に入れないのだ。無理やり外に出れば、たちまち聖女のパワーによって消滅してしまう。
 彼らの棲家は、もっぱらダンジョンに限定される。
 中でも強力な魔力を放つ場所は、「魔王城」と呼ばれたりした。

「ダンジョン内なら、ワシの本来の力を出せる。忌々しい聖女が自ら出向いてくれるとは。実にすばらしい」

 グフフと、カコデーモンが手をワキワキさせた。 

 魔族が人間界で暮らすには、ダンジョンに引きこもるか、ニンゲンに化けて魔力をセーブして暮らすしかない。それも恒久的に。
 ダンジョンにいる魔族は、魔物に指示を送るしかないのだ。聖女さえ滅ぼせば、地上に出られる。そのため配下を使って地上を制圧するか、攻撃対象をダンジョンにおびき寄せる。
 
 ただ、コイツでさえ魔王クラスではない。 
 
「よいよい。強い人間は、実にうまそうだ。今ちょうど、高い魔力に飢えていたところだ」

 アクセだらけの指で、カコデーモンがオレたちを差す。

「指輪だらけの手だな」

「違うね、ユリウス。あれは、指から宝石が出ているのさ」

 魔法石を、自分の体で製造しているのか。

「配下を送り込んで、地上の様子をうかがっていたが、お前たちが現時点での最強種と思っていいようだ。実にすばらしい魔力量ではないか」
 
「だが、弱い部下が負けまくっているせいで、お前さんも手詰まりではないのかい?」

 ガセート先輩が、カコデーモンを挑発する。

「だから騒ぎを起こして、お前たちに出向いてもらったわけだ。貴様らさえ倒せば、地上に敵はいなくなる。世界を瘴気で満たし、支配してくれる」

 手の宝石から、カコデーモンが多種多様な魔法を撃ち出した。地水火風闇と、魔法のショッピングモールになってやがる。

「フン!」

 オレはすべての魔法を読み取って、対になる魔法を足に付与した。魔法を蹴り返す。

「ほお! その男はたいした魔力量を持っていないのに、応用が効くのか。大したセンスよ。だが、実に惜しい」

 カコデーモンの視線が、ティナとトマに移る。

 トマが、ティナをかばうようにして立っていた。
 ティナの方も、闘争心を剥き出しにしてデーモンを睨めつけている。守られる気は、さらさらないようだ。

「魔力量は、そこの百合ップルに著しく劣る」

 デーモンにも、百合がわかるやつがいたとは。

「ワシは、単に地上を支配したいわけではない。世界を百合で満たしたい! 女性は女性を愛するべきなのだ!」

 大真面目な顔になって、デーモンが百合最強説を熱弁する。
 
「そしてワシは、その間に入る! 百合サンドイッチこそ、我が安住の地!」

 ダメだ。こいつは殺すしかない。
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