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第三章 百合おじにライバル出現……と思ったら同類だった。
第21話 百合おじ、ダンジョンに挑む
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「ユリウス王子、みなさんを頼みます」
出発の際、騎士団からそう声をかけられた。
「別にオレなんか、くたばればいいと思っているんだろ? 正直に言えばどうだ?」
オレが皮肉をいうと、騎士団たちが顔を突き合わせる。
「ええ。実は、そう思っていました……以前は」
「以前は?」
今は、違うというのか?
「話によると、あなたはティナ様とディートマル殿のお二方を、何度も窮地から救ったと聞きます」
「以前のあなたからは、悪評しか聞きませんでした。しかし、今はあなたを評価する声が、あちこちで上がっています。実際に会うまで、我々の知っているユリウス殿とは別人なのではと疑っていました。ですが、今は信じることができます」
騎士たちが、口々にオレを評価する。オレの立ち居振る舞いから、どう考えてもかつて悪童だったとは想像できないそうだ。
「騎士は人を見れば、その性格が読み取れる」というが、美化し過ぎではないか?
まあいい。二人を守るべきなのは事実だ。
騎士がオレをどう評価しようと、それは関係ない。
「オレは、必要に迫られて二人を守っているに過ぎん」
今度こそ、オレはダンジョンに足を踏み入れた。
ガセート先輩を先頭に、オレとトマ王子がティナを守る。
学生服のままだが、気にしない。この制服は特殊なプロテクションがかかっており、見た目より頑丈なのだ。
オレたち魔法科学校の生徒は、【マギアーツ】という魔法と拳法を合わせた技を使う。重い装備は、かえって動きづらくなる。
ヤンもリモート使い魔で、ついてこようとした。が、魔族相手だと「外見を見た対象の精神を汚染してくる」個体もいる。危険極まりないので、辞退してもらった。
そんな魔族もいるので、精神汚染に耐性のない騎士たちには、街を警護するために外で待機してもらっている。
オレたちが選ばれた最大の理由が、それだ。精神耐性が異常に強いメンバーで、パーティを構成している。
「だが、油断をするな。普通にフィジカルが強い魔物も、いるからな。こんな風に」
レッサーデーモンと、ガセート先輩が交戦した。
足に風魔法を付与して、ボクシングのフットワークを見せる。氷属性付与で拳を固め、パンチを当てる。
「ギャギャ! ニンゲンの技なんぞ通用するか!」
顔面にパンチがめり込んでも、レッサーデーモンはピンピンしていた。
「それはどうかな?」
ガセート先輩が付与魔法に氷属性を選んだのは、ダメージを与えるためではない。氷で自分の手と相手の顔をくっつけるためだ。
レッサーデーモンの顔が、ガセート先輩の手から離れなくなった。
ガセート先輩のボディブローが、魔物の腹にめり込む。
レッサーデーモンは、あっけなく消滅した。
「おまたせ。さ、先に行こう」
先輩は何事もなかったかのように、歩を進める。
「街に現れた魔族が、あんな感じでした」
「それを軽くノシてしまうなんて」
ティナとトマが、先輩の実力に驚愕していた。
「キミが本気を出せば、もっと強い魔族も倒せるだろう」
「わたしに、そんな力があるとは思えませんが」
「できるさ。ディートマル王子といっしょなら」
先輩からそう告げられて、ティナはトマ王子と手を繋ぐ。
「あ、ごめんなさい。あなたという人がいながら」
オレの視線を感じてか、ティナがトマから手を放そうとした。
「構わん。続けるんだ」
対するオレは、繋がっている二人の手を包み込む。
「この絆は、実に尊いものだ。失ってはならぬ」
「ありがとうございます。ですが、わたしは不安になります。自分たちだけが、幸せになっていいのか」
「愛し合っている者同士がくっつくのは、自然の道理だろ。なにが間違っているんだ? 先輩だって、そう思うだろ?」
オレが話を振ると、ガセート先輩はうんうんと何度もうなずいた。やはり百合の同志は、話がわかる。
「ユリウス王子、あなたは自分の幸せすら犠牲にして、何を望むのです? あなたが手にしたいものは、なんですか?」
「さあな。それよりボスのお出ましだな」
出発の際、騎士団からそう声をかけられた。
「別にオレなんか、くたばればいいと思っているんだろ? 正直に言えばどうだ?」
オレが皮肉をいうと、騎士団たちが顔を突き合わせる。
「ええ。実は、そう思っていました……以前は」
「以前は?」
今は、違うというのか?
「話によると、あなたはティナ様とディートマル殿のお二方を、何度も窮地から救ったと聞きます」
「以前のあなたからは、悪評しか聞きませんでした。しかし、今はあなたを評価する声が、あちこちで上がっています。実際に会うまで、我々の知っているユリウス殿とは別人なのではと疑っていました。ですが、今は信じることができます」
騎士たちが、口々にオレを評価する。オレの立ち居振る舞いから、どう考えてもかつて悪童だったとは想像できないそうだ。
「騎士は人を見れば、その性格が読み取れる」というが、美化し過ぎではないか?
まあいい。二人を守るべきなのは事実だ。
騎士がオレをどう評価しようと、それは関係ない。
「オレは、必要に迫られて二人を守っているに過ぎん」
今度こそ、オレはダンジョンに足を踏み入れた。
ガセート先輩を先頭に、オレとトマ王子がティナを守る。
学生服のままだが、気にしない。この制服は特殊なプロテクションがかかっており、見た目より頑丈なのだ。
オレたち魔法科学校の生徒は、【マギアーツ】という魔法と拳法を合わせた技を使う。重い装備は、かえって動きづらくなる。
ヤンもリモート使い魔で、ついてこようとした。が、魔族相手だと「外見を見た対象の精神を汚染してくる」個体もいる。危険極まりないので、辞退してもらった。
そんな魔族もいるので、精神汚染に耐性のない騎士たちには、街を警護するために外で待機してもらっている。
オレたちが選ばれた最大の理由が、それだ。精神耐性が異常に強いメンバーで、パーティを構成している。
「だが、油断をするな。普通にフィジカルが強い魔物も、いるからな。こんな風に」
レッサーデーモンと、ガセート先輩が交戦した。
足に風魔法を付与して、ボクシングのフットワークを見せる。氷属性付与で拳を固め、パンチを当てる。
「ギャギャ! ニンゲンの技なんぞ通用するか!」
顔面にパンチがめり込んでも、レッサーデーモンはピンピンしていた。
「それはどうかな?」
ガセート先輩が付与魔法に氷属性を選んだのは、ダメージを与えるためではない。氷で自分の手と相手の顔をくっつけるためだ。
レッサーデーモンの顔が、ガセート先輩の手から離れなくなった。
ガセート先輩のボディブローが、魔物の腹にめり込む。
レッサーデーモンは、あっけなく消滅した。
「おまたせ。さ、先に行こう」
先輩は何事もなかったかのように、歩を進める。
「街に現れた魔族が、あんな感じでした」
「それを軽くノシてしまうなんて」
ティナとトマが、先輩の実力に驚愕していた。
「キミが本気を出せば、もっと強い魔族も倒せるだろう」
「わたしに、そんな力があるとは思えませんが」
「できるさ。ディートマル王子といっしょなら」
先輩からそう告げられて、ティナはトマ王子と手を繋ぐ。
「あ、ごめんなさい。あなたという人がいながら」
オレの視線を感じてか、ティナがトマから手を放そうとした。
「構わん。続けるんだ」
対するオレは、繋がっている二人の手を包み込む。
「この絆は、実に尊いものだ。失ってはならぬ」
「ありがとうございます。ですが、わたしは不安になります。自分たちだけが、幸せになっていいのか」
「愛し合っている者同士がくっつくのは、自然の道理だろ。なにが間違っているんだ? 先輩だって、そう思うだろ?」
オレが話を振ると、ガセート先輩はうんうんと何度もうなずいた。やはり百合の同志は、話がわかる。
「ユリウス王子、あなたは自分の幸せすら犠牲にして、何を望むのです? あなたが手にしたいものは、なんですか?」
「さあな。それよりボスのお出ましだな」
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