百合に挟まれて死ぬ悪役王子に転生した百合男子、百合ップルを見守ります!

椎名 富比路

文字の大きさ
上 下
16 / 36
第三章 百合おじにライバル出現……と思ったら同類だった。

第16話 百合おじは、自分のハッピーエンドを望まない

しおりを挟む
「わたしは、魔族に狙われています。必ず生徒会にご迷惑をおかけしてしまうので」

 日頃から魔族と戦っているティナは、部活にも生徒会にも入らない。

 心を開く相手は、トマ王子くらいである。

 優しいトマ王子は、ティナを度々助けて、またティナも、トマ王子を助けていた。
 お互い同性がスキ、ってのもあるかもしれんがな。

「魔族ごときが、この生徒会を潰せるものか。そんな心配より、生徒会に入って、この学園の安全をもっと盤石なものにするつもりは」

「結構です。わたしは、自分のことで手一杯なので」

 生徒会の一人が、「あなた!」とテーブルをバンと叩いて立ち上がった。

 他の学食利用者が、何事か? とこちらの様子を伺ってくる。

 しかし、ティナの意思は固い。頑として、生徒会の話を聞こうとはしなかった。


 まあ、そうだろう。
 生徒会に入るとなれば、二人きりの時間はなくなってしまう。
 せっかく、「オレユリウス」という障害がなくなったのに。

「実に残念だよ、ティナ王女。だが、生徒会はいつでもキミを歓迎する。気が変わったら、声をかけてくれたま……」

 ガセート先輩が話している間に、ティナは立ち上がる。もう話すことはないとばかりに。

「ほお」

 さすがに、ガセート先輩も笑顔を引きつらせる。
 
 だがティナは、動じない。食べ終わった食器のトレーを、トマ王子といっしょに片付けに行った。

 ガセート先輩は、二人の後ろ姿を見ながらフフンと満足げに笑う。

「いやあ、いいねえ。気が強い女性というのは、かくもすばらしいものだよ。それにあの二人、恋人って感じがどうもしないのだ。まるで、同性同士のウフフ的な感覚を覚えないか?」

「そうだな」

 そっけなく答え、オレは席を立つ。

「あんなコを入れるんですか?」と、生徒会の一人が話し合っている。

「あんなコだから、ほしいのさ」

 ガセート先輩は、あきらめていないらしい。


「何も覚えてらっしゃらないんですね?」

 トレーを片付け終えたオレに、メンドークサが語りかける。
 
「男キャラは覚えない主義でね」

 正直、コイツの話には興味がない。

「それに、ああいったタイプは実にロクでもないタイプだ」

 ゆえに、オレはDLCシナリオも適当にこなした。

「かなり距離をおかれてらっしゃいましたね?」

「だって、オレはあの生徒会シナリオの途中で雷に打たれて死んだからなぁ」

 何が起きるか予測ができない以上、深く詮索するべきではない。

 それにしても、さっきのガセート先輩の反応はなんだ?
 百合百合に対して、なにか思うところがあるというのか?

 あのガセートとかいう男、一体何者だ?

「それはそうと、一つお伺いしても?」

「なんだよ? メンドークサ?」

「あなたは、自分が助かりたいから、女神の要求を飲んだと思っていました」

「ああ、それな」

 たいていの【ゲーム転生】ってのは、目的が「破滅エンド回避」になるはずだ。すべてのゲーム転生を読んでいるわけじゃないから、断定はできないが。

「なのにあなたは、自分に恋愛フラグが立っても、まるで活用しようとしません。なぜです? 今のあなたは好感度がかなり高まっています。多くの生徒から、注目されているんですよ?」

「まあ普通、元不良が更生したら、好感度バク上がりだよな」
 
 オレでも、そう思う。

 しかし、オレは自分の幸せに興味がない。
 ティナとトマが幸せになってくれるなら、オレはいっそ死んでも構わないのだ。
 女神はオレに、死ぬなというが。

「人のために殉じる、というのですか? あなたらしくもない。そこまで社会貢献をなさるような方だったとは」

「いや。オレはいつだって自分勝手だよ。自分勝手に、二人を守るんだ」

 そのためなら、オレはいつだって死んでやる。

「ただ、あなたに死なれては困りますので」

「オレが死ぬと、どうなるんだ?」

「シナリオ展開上、二人が破滅します」

 そういう仕様らしい。

 オレが悪党だろうと、活躍している英雄だろうと、結果は同じなんだそうで。 

「別にオレは、死ぬつもりはないさ。それより生徒会長だ。先が読めない以上、かかわらないほうが身のためだな」

 オレは、そう思っていた。

 だが生徒会側は、オレたちを放っておいてくれない。

 緊急の呼び出しなんぞ、してきやがって。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

処理中です...