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第二章 百合王子の正体がバレそうになってドキドキ!
第13話 百合おじさん・ユリウス、強さの秘密
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ヤンが、ティナとマーゴットの席を見下ろしている。
「あんたのせいで、トマ王子との逢瀬ができない状態になっちゃったの。責任取ってよね」
店の中で、ヤンが刃物を取り出した。
狼藉者の登場で、カフェの客が逃げ出す。
店番をしている冒険者が、ヤンを止めに入った。
「邪魔を、しないでよ!」
カフェのドリンクを使った衝撃波で、冒険者の武器がズタズタに。
「ひいいいい!」
屈強なはずの冒険者が、腰を抜かす。
「あたしはティナをお話をしているの。ザコは引っ込んでなさいよ!」
「待ちたまえ」
オレは席を立つ。
隠れて見守るつもりだったが、危険が及んでいるなら仕方がない。
「またアンタなの、ユリウス?」
「ザコじゃなければ、いいのだろ? 相手になろう」
「まあいいわ」
ヤンが手袋を外す。オレの方に投げ捨てた。
「決闘の仕切り直しよ。あたしが勝ったら、今度こそ邪魔しないでよね」
「承知した。お前が負けたら……」
「今のあたしが、負けるわけないでしょ? 場所を変えましょう」
オレの言葉を無視して、ヤンはさっさと店を出ていく。
「ここでいいわよね?」
街の門から出て、草原に到着した。
障害物もなにもない。
「だが、お得意のお水がないぞ」
「いや、あるぞ! メレイド湖だ!」
トマ王子が、森の奥を指差す。
メレイド湖……ティナたちがデートでよく使っていた場所だ。霧を発する魔物がいるため、目くらましにちょうどいいのである。
「死になさい! 【ミスト・ブレット】!」
ヤンは霧の水分を密集し、弾丸にして飛ばしてきた。
「これだけ細かい粒子なら、マワシウケも間に合わないわ! 炎で蒸発させたとしても……」
オレは炎魔法で、霧を蒸発させていく。しかし、高熱で腕や頬にヤケドを負った。この世界に来て、初のダメージかも。
気管に入ると、まずい。
「今のあなたは、自分でミストサウナを作っているような状態よ!」
震脚で霧の発生を止めようとしたが、振動が散ってしまう。
これは、他のヤツが力を貸しているな。
たしか、他のやつと言えば……。
「アハハ! 永遠に襲ってくる水を相手に、くたばるがいいわ!」
「それはどうかな?」
オレは、メレイド湖が見える高さまで跳躍した。
「お疲れさん」
炎で矢を作って、放つ。
ミストを形成しているナマズの魔物を、炎の矢で黙らせた。
この魔物は普段、湖の中に隠れている。だが、ヤンが魔法の発動で水を全部抜いてしまったため、丸見えなのだ。
ナマズが昏倒してしまえば、こっちのもんである。
「だがこっちには、大量の水がある。プールとは比較にならないほど」
ヤンが操る水を、オレは震脚ですべて無効化した。
水の操作が止まり、ヤンは盛大に湖の水をかぶる。
「震脚を止めていたのは、おそらくナマズだろう」
オレの震脚に合わせて、ナマズもバウンドして効果を相殺していたのだ。
そのナマズを気絶させたので、もう震脚無効は使えない。
「どうして、どうして勝てないの!? あんたの強さなんて、たいしたことなかったはずなのに! ああんたは策略家でしょ!? マギアーツだって『古臭い武術だ』って、習うことすら放棄したのに!」
腰を落として、ヤンは戦意を喪失させた。
わからないのか?
オレはこのゲーム『悪役令息は、オトコのコ♥』を、何周もしているんだよ! 全部のエンディングを制覇するために!
どれだけの苦行だったか。仕事をしつつだぞ。ない時間を削って、日常生活をすべてゲームに費やした。
このマギアーツ技術も、本来はすべて「ティナが習得したもの」である。周回して、レベリングを引き継いで、アイテムも全部引き継ぎして。
そのデータの状態で、ユリアンの姿で転生している。
「おしまいだな」
オレは、相手の懐に飛び込んだ。
ヤンが、顔をかばう。
そこで、オレは手を止めた。
「とどめを刺しなさいよ」
「お前は負けた。条件をいう。黒幕が誰かを吐け」
ヤンの眉が、ピクリと動く。
やはりか。
どうも、シナリオにズレが生じている気がしたのだ。
なにか、妙な動きがある。
「あんたのせいで、トマ王子との逢瀬ができない状態になっちゃったの。責任取ってよね」
店の中で、ヤンが刃物を取り出した。
狼藉者の登場で、カフェの客が逃げ出す。
店番をしている冒険者が、ヤンを止めに入った。
「邪魔を、しないでよ!」
カフェのドリンクを使った衝撃波で、冒険者の武器がズタズタに。
「ひいいいい!」
屈強なはずの冒険者が、腰を抜かす。
「あたしはティナをお話をしているの。ザコは引っ込んでなさいよ!」
「待ちたまえ」
オレは席を立つ。
隠れて見守るつもりだったが、危険が及んでいるなら仕方がない。
「またアンタなの、ユリウス?」
「ザコじゃなければ、いいのだろ? 相手になろう」
「まあいいわ」
ヤンが手袋を外す。オレの方に投げ捨てた。
「決闘の仕切り直しよ。あたしが勝ったら、今度こそ邪魔しないでよね」
「承知した。お前が負けたら……」
「今のあたしが、負けるわけないでしょ? 場所を変えましょう」
オレの言葉を無視して、ヤンはさっさと店を出ていく。
「ここでいいわよね?」
街の門から出て、草原に到着した。
障害物もなにもない。
「だが、お得意のお水がないぞ」
「いや、あるぞ! メレイド湖だ!」
トマ王子が、森の奥を指差す。
メレイド湖……ティナたちがデートでよく使っていた場所だ。霧を発する魔物がいるため、目くらましにちょうどいいのである。
「死になさい! 【ミスト・ブレット】!」
ヤンは霧の水分を密集し、弾丸にして飛ばしてきた。
「これだけ細かい粒子なら、マワシウケも間に合わないわ! 炎で蒸発させたとしても……」
オレは炎魔法で、霧を蒸発させていく。しかし、高熱で腕や頬にヤケドを負った。この世界に来て、初のダメージかも。
気管に入ると、まずい。
「今のあなたは、自分でミストサウナを作っているような状態よ!」
震脚で霧の発生を止めようとしたが、振動が散ってしまう。
これは、他のヤツが力を貸しているな。
たしか、他のやつと言えば……。
「アハハ! 永遠に襲ってくる水を相手に、くたばるがいいわ!」
「それはどうかな?」
オレは、メレイド湖が見える高さまで跳躍した。
「お疲れさん」
炎で矢を作って、放つ。
ミストを形成しているナマズの魔物を、炎の矢で黙らせた。
この魔物は普段、湖の中に隠れている。だが、ヤンが魔法の発動で水を全部抜いてしまったため、丸見えなのだ。
ナマズが昏倒してしまえば、こっちのもんである。
「だがこっちには、大量の水がある。プールとは比較にならないほど」
ヤンが操る水を、オレは震脚ですべて無効化した。
水の操作が止まり、ヤンは盛大に湖の水をかぶる。
「震脚を止めていたのは、おそらくナマズだろう」
オレの震脚に合わせて、ナマズもバウンドして効果を相殺していたのだ。
そのナマズを気絶させたので、もう震脚無効は使えない。
「どうして、どうして勝てないの!? あんたの強さなんて、たいしたことなかったはずなのに! ああんたは策略家でしょ!? マギアーツだって『古臭い武術だ』って、習うことすら放棄したのに!」
腰を落として、ヤンは戦意を喪失させた。
わからないのか?
オレはこのゲーム『悪役令息は、オトコのコ♥』を、何周もしているんだよ! 全部のエンディングを制覇するために!
どれだけの苦行だったか。仕事をしつつだぞ。ない時間を削って、日常生活をすべてゲームに費やした。
このマギアーツ技術も、本来はすべて「ティナが習得したもの」である。周回して、レベリングを引き継いで、アイテムも全部引き継ぎして。
そのデータの状態で、ユリアンの姿で転生している。
「おしまいだな」
オレは、相手の懐に飛び込んだ。
ヤンが、顔をかばう。
そこで、オレは手を止めた。
「とどめを刺しなさいよ」
「お前は負けた。条件をいう。黒幕が誰かを吐け」
ヤンの眉が、ピクリと動く。
やはりか。
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なにか、妙な動きがある。
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