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第二章 百合王子の正体がバレそうになってドキドキ!

第10話 マーゴットとして生きればいいじゃない

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「さっきは、ありがとう。ユリウス」

「いや。ティナとトマが無事ならそれでいい」

「それはそうと、ちょっと席を外していただけないか」

「おっと、そうだった」

 オレは、カーテンの向こうへ引っ込む。

 なんたって、トマの爆乳ナイスバディを拝んでしまったから。
【認識阻害】をかけた状態でお邪魔したから、究極形態までは見ていない。それでも、超絶豊満であるバストの形までは隠せないのだから。

 世の男子諸君なら、たまらず脳内に永久保存することだろう。

 まあ、オレは気にしないわけだが。

 どちらかというと、ティナに熱心に看病してもらう、トマが尊すぎる。
 あのトマ王子の、弱りきった表情ときたら! 普段から毅然とした態度で凛々しくあり続けているだけに、ぐったりした姿は背徳感を覚える。
 好きな相手だけに見せる弱み! これぞ百合!
 あら~。
 てぇてぇ。
 カーテン越しの影ですら、もう尊い。もう優勝に近かった。
 色々捗ってしまう。

「待たせたな」

 カーテンが開くと、いつものトマ王子に戻っていた。

「今日もデートするのか?」

「あ、ああ。キミには悪いんだけど」

「オレに遠慮なんてするな。むしろお前たちの仲睦まじい光景を見ることこそが、オレに癒やしをくれる」

「どういう性癖なのか、わからないよ」

 トマ王子が引いていた。

 さすがに、煩悩を垂れ流しすぎたか。

「そこで、デートなのだが」

「ああ。なにか不満があるなら言ってくれ」

「そもそも、お前って学校の外でも男装する意味ってあるの?」

 オレが言うと、トマ王子はハッとした顔に。

「言っている意味がよくわからないね」

「つまりだな。お前って学校で人にバレないといいんだろ? 外で普通に女性の格好をしていれば、バレなくね?」

 ぶっちゃけ、トマ王子は男装の麗人のときと女性のままでいるときとで、顔立ちがまったく違う。違いすぎて、王子であるかどうかなんて判別できないほどに。

「化粧に関しては、オレのメイドが詳しい。女性のままでティナとデートがしたいなら、いつでも言ってくれて構わないぞ」

 それこそ、「謎の町娘・マーゴット」とか名乗ればいいじゃない。
「むしろ名乗ってくれ」って、言いたいぞ。

「ありがとう。助かるよ。ボクの召使は老執事だから、化粧となると難しくてね」

 ひとまず、トマ王子に関してはこれでいいか。

「ティナも、それでOK?」

「わたしは、トマ様がどんなお姿であっても、お慕いしています」

 そこまでいって、ティナはオレの顔を見上げた。
 
「ユリウス王子。わたしの本当の思いを、もう包み隠さなくてもいいのでしょう?」

「いいとも。キミが誰を好きだろうと、キミの自由だ。ティナ」

 もし二人の仲を裂こうとする者が現れたら、オレがやっつける。
 さっきのヤン王女のように。
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