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第二章 百合王子の正体がバレそうになってドキドキ!

第9話 百合には、ぬくもりを。ヤンデレには、男女平等パンチを

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 ヤンディーネンとの、試合が始まった。

 ヤンがさっそく、プールの水でサーペントを作り出す。
 
「ユリウスごときが、あたしに勝てるわけないでしょ!? 一度だって、あたしに勝てたことがないじゃない!」

「それはどうかな? ごたくはいい。かかってこいよ」

 オレは手招きをして、ヤンを挑発した。

「大した自信ね。その鼻っ柱をへし折ってあげるわ!」

 プールの水で作ったサーペントを、オレに向けて放つ。

「【氷河落とし】! ホアチョ!」

 氷属性の魔法を施した足で、サーペントに「かかと落とし」を浴びせた。
 
 サーペントが突っ伏し、プールサイドにへばりつく。
 
「やるじゃない。でも、これで勝った気にならないことね!」

 サーペントの胴体から、水でできた衝撃波が飛んできた。

 プールサイドの床や壁を切り裂いて、すべての衝撃波がオレに向かってくる。

 オレは相撲のシコを踏むように、小さくジャンプして大地に振動を与えた。【震脚】という稽古法だ。同時に、火炎属性魔法を両手に施す。
 
「【熱波・炎烈拳】! ホアタ!」

 両腕を伸ばして、そのままグルグルその場を回った。

 手の炎が、衝撃波を蒸発させていく。

「マワシウケですって!? そんな高等技術、あんたに使えたの!? 訓練嫌いだったあなたが!?」

「人っていうのはな、進化していくもんなんだよ!」

「バカね! マギアーツなんて、武器がなかった時代の格闘術じゃない! そんな古い武術に、あたしの召喚魔法が負けるわけがない!」

 その発想を、覆してやるよ。

 オレは、ヤンに殴りかかる。

「もう一度サーペントを……」

 ヤンは再び、プールの水でサーペントを作ろうとした。

「フン!」
 
 オレがさらに大きく、震脚をする。

「なんですって!?」

 召喚された瞬間に、サーペントは霧散してしまう。地面の振動で、崩れたのだ。

「どういうことなの!?」

「お前の召喚術など、土魔法を施したオレの震脚で砕ける程度のもろさだってことさ」

「だったら!」

 また、水を衝撃波に変える。

 面積が薄いため、震脚でも消えない。

「だが、甘いな」

 今度は、オレは自分に【身体強化】の魔法を施す。

 水のカッターなんぞ、当たらなければどうということはない。スイスイ避ける。

「くっ!?」
 
「これは、痛いぞ!」

 オレは、ヤンの頬に拳をめり込ませた。いわゆる、男女平等パンチというやつだ。

 拳を頬で抱きしめ、ヤンの身体が吹っ飛んでいった。

「そこまで。Winner、ユリウス!」

 先生が、オレの腕を掴んで上げる。

 生徒たちからも、拍手が湧いた。

「なんてやつなの!? 女の顔を殴るなんて!」

 たしかに、一部の生徒からも不快感をあらわにした言葉が飛び出す。

「黙れ。これは、決闘だぞ。お前は戦場でも、同じことをいうのか?」

 先生が、生徒たちを黙らせる。

「顔だけで、よかったな」

 核心を突かれて、ヤンがビクッとなった。

 魔物相手なら、ヤンは首が吹っ飛んでいただろう。
 
 それに、傷つけられる箇所が『女の尊厳』であった場合は最悪だ。ヤンは一生心に傷を持ったまま、生きねばならん。

 ここが学校だったから、そんな目に遭わずに済んだ。

 それがわかっているから、ヤンも女子生徒も反論してこない。

「許可なく生徒たちにケガを負わせた、ヤンの罪は重い。謹慎か、退学で処理を願う」

 オレたちは「決闘」という大義名分があったから、多少の覚悟はあった。
 
 しかし、ティナへの不意打ちは、やりすぎだ。先生の言うように、「戦場だったら」といういいわけは通用しない。決闘だったら、よかっただろう。

 担任が、数名の教師たちと話し合った。
 決闘という非常事態になったため、立会人である担任の他に数名の教師が監視に来ているのである。
 
「職員会議で、話がついた。ヤンディーネン・クーセラ。お前には、自宅謹慎を言い渡す。今後、登校を控えるように」
 
 一応授業はリモートで聞けるが、学校には二度と通えない。学校行事も、すべて欠席扱いとなる。

 ただ、出ていく前にひとつ、聞いておかないと。

 オレは、ヤンのそばに立った。

「昨日、ティナとトマを襲うように野盗へ指示を出したのは、お前だな?」

「そうよ。よく知ってるじゃない」

 頬をおさえながら、ふてくされたように吐き捨てる。
 
 そのこともあって、オレは怒っていた。

 ヤンは殴られても、文句を言えない。

 プールを退場するヤンを見つめながら、「もう一発、殴っておけばよかったか?」とも思った。

 まあいい。一発殴ればいいだろう。

 そんなことより、百合だろ!

 さっそく医務室へGO!

「どこへいく、ユリウス!」

 先生が、走り去ろうとするオレを呼び戻す。

「さっきの戦闘でちょっとケガをしました。医務室へレッツゴーしてきますね!」

 オレはそそくさと、医務室へ向かう。

 トマ王子のときと違って、オレに手を差し伸べてくるヤツらはいない。
 嫌われ者ってのは、そういうものさ。
 
「あら~」

 医務室では、さっそくティナとトマが抱き合っていた。
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