2 / 36
第一章 百合に挟まれて死ぬ王子に転生したおっさん
第2話 「百合に挟まれる」というタブー
しおりを挟む
「ユリウス王子、ごきげんよう」
清々しい笑顔で、ディートマル王子がオレに話しかけてくる。だが、放つ魔力は敵意剥き出しだ。
「ごきげんよう。ディートマル王子。相変わらずモテモテだね」
ちょっと、嫌味だっただろうか。でも、正直うらやましい。いくら相手が、男装の麗人とはいえ。
一方、オレの方には女性陣の誰も近寄ろうとしない。ぶっちゃけ、嫌われキャラだもんな。オレ。
「ボクよりもっと頼もしい男子なんて、いくらでもいるのにね」
さらっと、返答してくる。さすが王子様だ。こういう嫌味には、慣れているのだろう。
「ご気分を害したなら、申し訳ない。ささ、それよりティナにごあいさつをして。オレは離れようじゃないか」
「……?」
フフフ。いつもと「ユリウス」の雰囲気が違うから、戸惑っているな。
ちょっとは、意趣返しできたようだ。
まあ、意地悪はこのくらいにして、ガチでくっつけお前ら。
「遠慮するな。確かに彼女はオレの婚約者だ。とはいえ、日常会話をしているだけの仲に嫉妬するような小物ではないさ」
実はコイツ、超絶小物なんだよなあ。男子が少し会話に割り込んだ程度で、ブチ切れるようなヤツなのである。めんどくさい。「ヤロウのメンヘラは、八方からウケが悪い」って、親から学ばなかったとは。
オレは違う。どんと来いだ。むしろ二人とも、そのまま逃避行せよ。
「ごきげんよう、ティナ王女」
「ご、ごきげんようっ。ディートマル様」
あーもう、ティナ王女の声が弾んじゃってるよ。てえてえッ! 朝から、てえてえが過ぎる! おじさん壊れちゃう!
「課題で、難しいところはなかったかい?」
「はい。ダンジョン作成において、玄室の続く箇所にトラップを置くのと、モンスターを配置するので迷いました。どちらが有効なのか、最後までわからなくて」
「ボクは、回転床を配置したよ。正しいルートを進めば、ご褒美の宝箱部屋にありつける仕組みにしてみた。他のルートを選ぶと、魔物のいる玄室に入ってしまうか、強制退去になる」
「いいですね! お得感があります」
二人は他愛もない会話を続けた。
他の女子生徒も、ティナ姫とディートマル王子の恋仲を応援している。
いいのだ。そういうゲームだから、これ。
この世界で、オレはトコトン嫌われている。サブの男キャラどころか、モブにすら相手にされていない。ゲームにおいての、圧倒的な異物感が、半端なかった。
開発陣いわく、「百合に挟まれる男は死ね」というヘイトを、一手に引き受けるキャラとして作ったらしい。
「実に愛らしい。これこそ、楽園というものだ」
後方で腕を組みながら、オレは二人の会話に耳を傾け続けた。
「お楽しみのところ済まないが、もうそろそろ学校が始まってしまう。では、またお昼休みにでも」
予鈴に会話を中断させられ、女子生徒たちが残念がった。
オレ自身が一番、ガッカリしているよー。もっと見ていたいー。
「ああ。楽しい時間になった。ありがとう、ユリウス殿」
「なあに。気が向いたら、いつでもティナに声をかけてあげてくれ。学校の中では、ティナはオレだけのものじゃない」
学校の外ですら、ティナはオレのものではなくていい。
ディートマルよ。本当の意味で、ティナを幸せにしてやってくれ。
だが唐突に、シナリオが牙を剥き始めた。
清々しい笑顔で、ディートマル王子がオレに話しかけてくる。だが、放つ魔力は敵意剥き出しだ。
「ごきげんよう。ディートマル王子。相変わらずモテモテだね」
ちょっと、嫌味だっただろうか。でも、正直うらやましい。いくら相手が、男装の麗人とはいえ。
一方、オレの方には女性陣の誰も近寄ろうとしない。ぶっちゃけ、嫌われキャラだもんな。オレ。
「ボクよりもっと頼もしい男子なんて、いくらでもいるのにね」
さらっと、返答してくる。さすが王子様だ。こういう嫌味には、慣れているのだろう。
「ご気分を害したなら、申し訳ない。ささ、それよりティナにごあいさつをして。オレは離れようじゃないか」
「……?」
フフフ。いつもと「ユリウス」の雰囲気が違うから、戸惑っているな。
ちょっとは、意趣返しできたようだ。
まあ、意地悪はこのくらいにして、ガチでくっつけお前ら。
「遠慮するな。確かに彼女はオレの婚約者だ。とはいえ、日常会話をしているだけの仲に嫉妬するような小物ではないさ」
実はコイツ、超絶小物なんだよなあ。男子が少し会話に割り込んだ程度で、ブチ切れるようなヤツなのである。めんどくさい。「ヤロウのメンヘラは、八方からウケが悪い」って、親から学ばなかったとは。
オレは違う。どんと来いだ。むしろ二人とも、そのまま逃避行せよ。
「ごきげんよう、ティナ王女」
「ご、ごきげんようっ。ディートマル様」
あーもう、ティナ王女の声が弾んじゃってるよ。てえてえッ! 朝から、てえてえが過ぎる! おじさん壊れちゃう!
「課題で、難しいところはなかったかい?」
「はい。ダンジョン作成において、玄室の続く箇所にトラップを置くのと、モンスターを配置するので迷いました。どちらが有効なのか、最後までわからなくて」
「ボクは、回転床を配置したよ。正しいルートを進めば、ご褒美の宝箱部屋にありつける仕組みにしてみた。他のルートを選ぶと、魔物のいる玄室に入ってしまうか、強制退去になる」
「いいですね! お得感があります」
二人は他愛もない会話を続けた。
他の女子生徒も、ティナ姫とディートマル王子の恋仲を応援している。
いいのだ。そういうゲームだから、これ。
この世界で、オレはトコトン嫌われている。サブの男キャラどころか、モブにすら相手にされていない。ゲームにおいての、圧倒的な異物感が、半端なかった。
開発陣いわく、「百合に挟まれる男は死ね」というヘイトを、一手に引き受けるキャラとして作ったらしい。
「実に愛らしい。これこそ、楽園というものだ」
後方で腕を組みながら、オレは二人の会話に耳を傾け続けた。
「お楽しみのところ済まないが、もうそろそろ学校が始まってしまう。では、またお昼休みにでも」
予鈴に会話を中断させられ、女子生徒たちが残念がった。
オレ自身が一番、ガッカリしているよー。もっと見ていたいー。
「ああ。楽しい時間になった。ありがとう、ユリウス殿」
「なあに。気が向いたら、いつでもティナに声をかけてあげてくれ。学校の中では、ティナはオレだけのものじゃない」
学校の外ですら、ティナはオレのものではなくていい。
ディートマルよ。本当の意味で、ティナを幸せにしてやってくれ。
だが唐突に、シナリオが牙を剥き始めた。
10
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる