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第4話 適材適所
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ボクたちは、家に帰ってきた。
食事をボクが作っている間、シルヴィ先生は、お風呂に入っている。
「はあ、いい湯だった。窓から見る月も絶景だった。フィオ、感謝するぞ」
タオル一枚の姿で、先生がお風呂から上がった。どこも隠さない。
「シルヴィ先生、服を着てください」
「いいじゃないか。開放感があって」
「先生は、開放しすぎです。全開です」
「お前は、わたしを見ても興奮しないんだな」
椅子乗せを抱きしめながら、シルヴィ先生がいたずらっぽい視線を向けてくる。
「憧れの人ですから」
「推しでは、抜けないか?」
「そういう問題じゃありません。食べますよ」
「うむ。いただきます」
シルヴィ先生が、ボクの料理をひとくち食べた。
「なあ、フィオ。笑わないで、わたしの話を聞いてほしい」
「はい」
ボクが尋ねると、勇者は見たこともない顔で破顔する。
「結婚してくれ」
「はいい!?」
「こんなおいしい料理は、宿でも食べたことがないぞ。いますぐわたしの夫になって、毎日食事を作ってくれ」
「ありがとうございます。でもお断りします」
アゴが外れるくらいに、先生が口を開けた。
「わたしは妻として、ふさわしくないか?」
「そういう意味では。実に光栄ですよ」
今は冒険者になることで頭がいっぱいだと、シルヴィ先生に伝える。ありがたい言葉だけど。
「なぜだ? お前はすぐにでも、料理人になるべきだ。冒険者なんて、稼ぎも悪いし割に合わん」
それは、ボクも知っている。野盗に落ちぶれた元冒険者も多いって。
「でも、ボクは冒険者になりたいです」
「フィオは、食事を作る才能がある。冒険者以外の仕事だったら、そこそこまで行けるんじゃないのか?」
「かも知れません。みんながよく教えてくれたので。料理も、宿屋のおじさんから、教わったんです。独り身のボクに、色々と教えてくれました」
なにか事情を察したのか、シルヴィ先生の顔が曇る。
「ご両親の姿がないな。お前はまだ小さいのに、こんな広い部屋で一人で暮らしているのか」
先生が、辺りを見回す。
両親の面影は、もう写真しかない。
「はい。冒険に出て、二人とも亡くなりました」
ボクの両親は、冒険者だった。
魔王との戦いが、終わったころである。ここを終の棲家として、土地を買って家を建てた。
モンスターとの戦いでみんなを逃したときに、二人ともモンスターを相打ちになって命を落とす。
「二人とも、それほど強くない冒険者でした。それでも、ボクにとっては大切な両親です」
「なるほど。二人の意思を継ぐと」
「ソレ以外にも、理由があるんですけどね」
「教えてはくれないんだな?」
「時期が来たら、お教えします」
ゆっくりと、先生が口の中のものを飲み込む。
「なあフィオのボウヤ。悪いことは言わん。復讐なんてバカな考えを起こすんじゃない」
「いえ。復讐だなんて。父も母も、惨めに虐殺されたわけじゃない。誇り高く死にました。だから、復讐とかが動機じゃないです」
最後のひとくちを、シルヴィ先生はゆっくりと口へ運んだ。
「わたしの大キライな言葉に、【適材適所】がある」
「キライなんですか? その言葉?」
「一見きれいな言葉だが、逆に可能性を狭めるからな。それが向いているならいい。だが、『それしかやってはいけない』と言われている気がしないか?」
自分で作った料理の味を、ボクは噛みしめる。
たしかに、おいしい。だが、料理しかやってはいけないって言われたら、ボクはおそらく発狂するだろう。
「いいかフィオ。長所を伸ばすことは、成功への近道だ。それは正しい。だからといって、狂おしいほど好きだが苦手なことをやってはいけない道理にはならん。茨の道を進んでこそ、見えてくるものがある」
「はい」
「お前は、確実に正しい道を捨てて、辛い道を歩むことになる。それでもいいのか?」
「もう、決めましたから」
先生の言うことは、間違っていない。
得意な道を進めば、確実に成功できるだろう。
でも、それで何が得られるのか?
やりたいことをガマンして、何が手に入る?
自分だけ幸せになって、なにが素晴らしい人生だろう。
「よく言った。もう何も言わん。わたしのすべてを教えるから、明日からここを離れるぞ」
「準備します」
「急かすな。ますは、この最高のごちそうを食ってからだ」
シルヴィ先生が、おかわりを要求してきた。
食事をボクが作っている間、シルヴィ先生は、お風呂に入っている。
「はあ、いい湯だった。窓から見る月も絶景だった。フィオ、感謝するぞ」
タオル一枚の姿で、先生がお風呂から上がった。どこも隠さない。
「シルヴィ先生、服を着てください」
「いいじゃないか。開放感があって」
「先生は、開放しすぎです。全開です」
「お前は、わたしを見ても興奮しないんだな」
椅子乗せを抱きしめながら、シルヴィ先生がいたずらっぽい視線を向けてくる。
「憧れの人ですから」
「推しでは、抜けないか?」
「そういう問題じゃありません。食べますよ」
「うむ。いただきます」
シルヴィ先生が、ボクの料理をひとくち食べた。
「なあ、フィオ。笑わないで、わたしの話を聞いてほしい」
「はい」
ボクが尋ねると、勇者は見たこともない顔で破顔する。
「結婚してくれ」
「はいい!?」
「こんなおいしい料理は、宿でも食べたことがないぞ。いますぐわたしの夫になって、毎日食事を作ってくれ」
「ありがとうございます。でもお断りします」
アゴが外れるくらいに、先生が口を開けた。
「わたしは妻として、ふさわしくないか?」
「そういう意味では。実に光栄ですよ」
今は冒険者になることで頭がいっぱいだと、シルヴィ先生に伝える。ありがたい言葉だけど。
「なぜだ? お前はすぐにでも、料理人になるべきだ。冒険者なんて、稼ぎも悪いし割に合わん」
それは、ボクも知っている。野盗に落ちぶれた元冒険者も多いって。
「でも、ボクは冒険者になりたいです」
「フィオは、食事を作る才能がある。冒険者以外の仕事だったら、そこそこまで行けるんじゃないのか?」
「かも知れません。みんながよく教えてくれたので。料理も、宿屋のおじさんから、教わったんです。独り身のボクに、色々と教えてくれました」
なにか事情を察したのか、シルヴィ先生の顔が曇る。
「ご両親の姿がないな。お前はまだ小さいのに、こんな広い部屋で一人で暮らしているのか」
先生が、辺りを見回す。
両親の面影は、もう写真しかない。
「はい。冒険に出て、二人とも亡くなりました」
ボクの両親は、冒険者だった。
魔王との戦いが、終わったころである。ここを終の棲家として、土地を買って家を建てた。
モンスターとの戦いでみんなを逃したときに、二人ともモンスターを相打ちになって命を落とす。
「二人とも、それほど強くない冒険者でした。それでも、ボクにとっては大切な両親です」
「なるほど。二人の意思を継ぐと」
「ソレ以外にも、理由があるんですけどね」
「教えてはくれないんだな?」
「時期が来たら、お教えします」
ゆっくりと、先生が口の中のものを飲み込む。
「なあフィオのボウヤ。悪いことは言わん。復讐なんてバカな考えを起こすんじゃない」
「いえ。復讐だなんて。父も母も、惨めに虐殺されたわけじゃない。誇り高く死にました。だから、復讐とかが動機じゃないです」
最後のひとくちを、シルヴィ先生はゆっくりと口へ運んだ。
「わたしの大キライな言葉に、【適材適所】がある」
「キライなんですか? その言葉?」
「一見きれいな言葉だが、逆に可能性を狭めるからな。それが向いているならいい。だが、『それしかやってはいけない』と言われている気がしないか?」
自分で作った料理の味を、ボクは噛みしめる。
たしかに、おいしい。だが、料理しかやってはいけないって言われたら、ボクはおそらく発狂するだろう。
「いいかフィオ。長所を伸ばすことは、成功への近道だ。それは正しい。だからといって、狂おしいほど好きだが苦手なことをやってはいけない道理にはならん。茨の道を進んでこそ、見えてくるものがある」
「はい」
「お前は、確実に正しい道を捨てて、辛い道を歩むことになる。それでもいいのか?」
「もう、決めましたから」
先生の言うことは、間違っていない。
得意な道を進めば、確実に成功できるだろう。
でも、それで何が得られるのか?
やりたいことをガマンして、何が手に入る?
自分だけ幸せになって、なにが素晴らしい人生だろう。
「よく言った。もう何も言わん。わたしのすべてを教えるから、明日からここを離れるぞ」
「準備します」
「急かすな。ますは、この最高のごちそうを食ってからだ」
シルヴィ先生が、おかわりを要求してきた。
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