49 / 49
最終章 宇宙船の宇宙温泉!? 秘湯ハンターよ永遠に!
最終話 秘湯ハンターよ、永遠に
しおりを挟む
魔王たちも空気を読んで、静観してくれている。
「シズクちゃん、ボクは、家族は一緒にいる方がいいって言った」
ボクは今まで、家族を持つのは怖いと思っていた。
温泉ハンターなんて、収入が安定しない。
女神様の加護があるといえど、ボクが本当に稼げる分は少ないだろう。
ゴハンだって、狩りで手に入れたりする。
秘湯を探す旅は、楽しいけれど過酷だ。
常に危険が伴う。
「ボクがこうして旅を続けられたのは、シズクちゃんのおかげだ。ありがとう」
「はい。こちらこそ」
てっきり、「もっと褒めてもいいんですよ」なんて言い出すかと思ったけれど。
「シズクちゃんと一緒にいた旅は、ボクに潤いをくれていた。離れてみてわかったんだ。こんなにも、シズクちゃんとの時間はかけがえのないものだったんだって」
シズクちゃんはお姫様だ。本来、近づくことさえ敵わない。
だけど、泥まみれでも楽しげに秘湯リポートをしている姿を、ボクは知っている。
それだって、ちゃんとシズクちゃんなんだ。
「ボクは、やっとわかったんだ。ボクには、シズクちゃんが必要だ。シズクちゃんと二人並んでこそ、温泉も楽しめるんだって」
音を上げることだってある。ケンカだって何度もした。
その度に、どれだけお互いが必要かを噛みしめて。
だから、ボクはもう手放さない。
「思ったんだ。ボクもシズクちゃんの家族になれないかなって」
シズクちゃんの目が、キラキラしている。
「好きです、シズクちゃん。どうか、ボクの家族になってください」
「……はい!」
◇ * ◇ * ◇ * ◇
数日後、ボクたちは月面のクレーターにこしらえた温泉に浸かっている。
『回復の泉』は関係なく、王国には酸素もちゃんとあった。
「はいどーぞ、あーん」
シズクちゃんが、お団子を摘まむ。
「あーん」
お団子を、ボクは口を開けて迎え入れた。
コーヒー牛乳を飲みながらの、入浴だ。
お月見ではなく、地球を見ながらの温泉である。
ボクとシズクちゃんは、何も身につけていない。
一糸まとわぬ状態で湯に入ったのは、これが初めてだ。
いわゆる、『初夜』というモノで。
その前に身体を清めようね、と。
あれからボクは、月の王国に呼び出されて質問攻めに遭った。
秘湯ハンターの仕事は、続けさせてもらえることになっている。
もちろん、シズクちゃんも一緒に。
結局王国は、民主化を進める方向へ向かうらしい。
申し訳ないことをしたけれど、「シズクちゃんに政治は任せられないよね」という結論に達した。
「本当に、ついてきてよかったのかい?」
月に帰れば、何不自由なく暮らせる。ボクと旅をして、危険な目に遭う必要もないのだ。
「だって、カズユキさんは私がいないと死んじゃうじゃないですか」
あっけらかんと、シズクちゃんは告げた。
「私がいなくても、月はそこにあります。でも、カズユキさんは私が見ていないと、どんどん遠くへ行ってしまうから」
「シズクちゃん……」
「ひとりぼっちで死んじゃうのは、ウサギだけじゃないんだなーって、カズユキさんを見て思いました」
シズクちゃんが、裸のままでボクに抱きつく。
「私だって、カズユキさんの側にいたいんです!」
温かい。シズクちゃんの体温が、ボクに直接伝わってくる。
ボクも、身体が熱くなった。
「ありがとう。ボクの家族になってくれて」
月も制覇したわけで。
次は、どんな温泉がボクとシズクちゃんを待っているんだろう。
今から、楽しみで仕方ない。
(完)
「シズクちゃん、ボクは、家族は一緒にいる方がいいって言った」
ボクは今まで、家族を持つのは怖いと思っていた。
温泉ハンターなんて、収入が安定しない。
女神様の加護があるといえど、ボクが本当に稼げる分は少ないだろう。
ゴハンだって、狩りで手に入れたりする。
秘湯を探す旅は、楽しいけれど過酷だ。
常に危険が伴う。
「ボクがこうして旅を続けられたのは、シズクちゃんのおかげだ。ありがとう」
「はい。こちらこそ」
てっきり、「もっと褒めてもいいんですよ」なんて言い出すかと思ったけれど。
「シズクちゃんと一緒にいた旅は、ボクに潤いをくれていた。離れてみてわかったんだ。こんなにも、シズクちゃんとの時間はかけがえのないものだったんだって」
シズクちゃんはお姫様だ。本来、近づくことさえ敵わない。
だけど、泥まみれでも楽しげに秘湯リポートをしている姿を、ボクは知っている。
それだって、ちゃんとシズクちゃんなんだ。
「ボクは、やっとわかったんだ。ボクには、シズクちゃんが必要だ。シズクちゃんと二人並んでこそ、温泉も楽しめるんだって」
音を上げることだってある。ケンカだって何度もした。
その度に、どれだけお互いが必要かを噛みしめて。
だから、ボクはもう手放さない。
「思ったんだ。ボクもシズクちゃんの家族になれないかなって」
シズクちゃんの目が、キラキラしている。
「好きです、シズクちゃん。どうか、ボクの家族になってください」
「……はい!」
◇ * ◇ * ◇ * ◇
数日後、ボクたちは月面のクレーターにこしらえた温泉に浸かっている。
『回復の泉』は関係なく、王国には酸素もちゃんとあった。
「はいどーぞ、あーん」
シズクちゃんが、お団子を摘まむ。
「あーん」
お団子を、ボクは口を開けて迎え入れた。
コーヒー牛乳を飲みながらの、入浴だ。
お月見ではなく、地球を見ながらの温泉である。
ボクとシズクちゃんは、何も身につけていない。
一糸まとわぬ状態で湯に入ったのは、これが初めてだ。
いわゆる、『初夜』というモノで。
その前に身体を清めようね、と。
あれからボクは、月の王国に呼び出されて質問攻めに遭った。
秘湯ハンターの仕事は、続けさせてもらえることになっている。
もちろん、シズクちゃんも一緒に。
結局王国は、民主化を進める方向へ向かうらしい。
申し訳ないことをしたけれど、「シズクちゃんに政治は任せられないよね」という結論に達した。
「本当に、ついてきてよかったのかい?」
月に帰れば、何不自由なく暮らせる。ボクと旅をして、危険な目に遭う必要もないのだ。
「だって、カズユキさんは私がいないと死んじゃうじゃないですか」
あっけらかんと、シズクちゃんは告げた。
「私がいなくても、月はそこにあります。でも、カズユキさんは私が見ていないと、どんどん遠くへ行ってしまうから」
「シズクちゃん……」
「ひとりぼっちで死んじゃうのは、ウサギだけじゃないんだなーって、カズユキさんを見て思いました」
シズクちゃんが、裸のままでボクに抱きつく。
「私だって、カズユキさんの側にいたいんです!」
温かい。シズクちゃんの体温が、ボクに直接伝わってくる。
ボクも、身体が熱くなった。
「ありがとう。ボクの家族になってくれて」
月も制覇したわけで。
次は、どんな温泉がボクとシズクちゃんを待っているんだろう。
今から、楽しみで仕方ない。
(完)
0
お気に入りに追加
7
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
【完結】復讐は計画的に~不貞の子を身籠った彼女と殿下の子を身籠った私
紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
公爵令嬢であるミリアは、スイッチ国王太子であるウィリアムズ殿下と婚約していた。
10年に及ぶ王太子妃教育も終え、学園卒業と同時に結婚予定であったが、卒業パーティーで婚約破棄を言い渡されてしまう。
婚約者の彼の隣にいたのは、同じ公爵令嬢であるマーガレット様。
その場で、マーガレット様との婚約と、マーガレット様が懐妊したことが公表される。
それだけでも驚くミリアだったが、追い討ちをかけるように不貞の疑いまでかけられてしまいーーーー?
【作者よりみなさまへ】
*誤字脱字多数あるかと思います。
*初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ
*ゆるふわ設定です
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております
【完結】忌み子と呼ばれた公爵令嬢
美原風香
恋愛
「ティアフレア・ローズ・フィーン嬢に使節団への同行を命じる」
かつて、忌み子と呼ばれた公爵令嬢がいた。
誰からも嫌われ、疎まれ、生まれてきたことすら祝福されなかった1人の令嬢が、王国から追放され帝国に行った。
そこで彼女はある1人の人物と出会う。
彼のおかげで冷え切った心は温められて、彼女は生まれて初めて心の底から笑みを浮かべた。
ーー蜂蜜みたい。
これは金色の瞳に魅せられた令嬢が幸せになる、そんなお話。
【完結】彼女以外、みんな思い出す。
❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。
幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる