上 下
48 / 49
最終章 宇宙船の宇宙温泉!? 秘湯ハンターよ永遠に!

大切な人へ

しおりを挟む
「ちょっと待って!」

 ボクは、宇宙船を止めようとした。
 宇宙船は、今にも飛び立とうとしている。

 周りには、オルタ及び騎士団のみなさん、大魔王やラジューナちゃんたちやドルパさんたちもいる。

 しかし、無情にも宇宙船は飛んでいってしまった。
 

 月へ帰って行く宇宙船を見上げて、ボクは呆然となる。
 

 ボクに何も告げず、行ってしまうなんて。

 きっとシズクちゃんは、ボクに愛想を尽かしたんだ。

 ハッキリしないボクを見捨てたんだろう。

「ちくしょう、ちくしょう! ボクは大バカヤロウだ! いなくなってから、大切な人の存在に気づくなんて!」

 膝を突き、地面を叩く。

「シズクちゃんは、待っていてくれるだろうとか、ボクが立派になったらちゃんと話そうとか、悠長なことを考えている間に、シズクちゃんは自立の道を進んでいたんだ!」


「自覚はあったんじゃのう」と、ラジューナちゃんが呆れた口調で言った。
「今となっては遅いがな」とは、リムさんの弁だ。


「それをわかろうともしないで! ボクは自分の都合を優先した!」

「そうだな」と、オケアノスさんがため息をつく。


「ちょっとでも、シズクちゃんに『キレイだね』とか、『かわいいよ』とか、言ってあげればよかった!」


 ボクの言葉に、シャンパさんやオルタも「そうねえ」「そうッスね」と相槌を打つ。


「どうしてもっと、大切にできなかったんだろう? 大事な人はすぐ目の前にいたのに!」

「そうですね。カズユキさんはもっと、私をいたわるべきです」

「もっと伝えるべきだった! 大好きなんだって! ボクには……シズクちゃんしかいないんだって!」

「わかってるんだったら、さっさと伝えればよかったじゃないですか」

「なんだよ、さっきからうるさいよシズクちゃん! ってえええシズクちゃん!?」


 ボクの横でツッコミを入れていたのは、シズクちゃんだった。

「あれ、宇宙船に乗ったんじゃ?」


「私が生存していることを、母が父に報告しに言っただけですよ」


 シズクちゃんも、どうかと誘われたが、ボクを放っていけないと断ったらしい。


「キミは、シズクちゃん……だよね?」

 目の前にいるシズクちゃんを見て、ボクは息を呑む。

 シズクちゃんは真っ白いドレスを着て、ティアラを付けていた。この格好を見ると、本当にお姫様だったんだって思い知らされる。


「それでも、今話さないと、二度と口に出せない気がしたんだ。シズクちゃん、聞いてくれますか?」

「いいですよ」

 黙ってシズクちゃんが、ボクの言葉を待つ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

【完結】私の見る目がない?えーっと…神眼持ってるんですけど、彼の良さがわからないんですか?じゃあ、家を出ていきます。

西東友一
ファンタジー
えっ、彼との結婚がダメ? なぜです、お父様? 彼はイケメンで、知性があって、性格もいい?のに。 「じゃあ、家を出ていきます」

夫は魅了されてしまったようです

杉本凪咲
恋愛
パーティー会場で唐突に叫ばれた離婚宣言。 どうやら私の夫は、華やかな男爵令嬢に魅了されてしまったらしい。 散々私を侮辱する二人に返したのは、淡々とした言葉。 本当に離婚でよろしいのですね?

何でも奪っていく妹が森まで押しかけてきた ~今更私の言ったことを理解しても、もう遅い~

秋鷺 照
ファンタジー
「お姉さま、それちょうだい!」  妹のアリアにそう言われ奪われ続け、果ては婚約者まで奪われたロメリアは、首でも吊ろうかと思いながら森の奥深くへ歩いて行く。そうしてたどり着いてしまった森の深層には屋敷があった。  ロメリアは屋敷の主に見初められ、捕らえられてしまう。  どうやって逃げ出そう……悩んでいるところに、妹が押しかけてきた。

処理中です...