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第三章 ドラゴンサウナ
ヒャッハー魔族にサウナを実体験してもらおう
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「敵の気配なんて、わかるんですね」
「我と上のドラゴンは、意識も共有しておるからな」
向こうで寝ているドラゴンに見えている景色や状況は、リムさんにも把握できるという。
外に出ると、黒い影がドラゴンと睨み合っていた。
「ヒャッハーッ!」
財宝を狙う輩が、大空から舞い降りる。
思っていた以上に大きいな。
二メートル以上ある巨漢なら、ボクも冒険者ギルドで見慣れたけれど。
「ここがレッドドラゴンのアジトか。しけてやがんな。オレ様がまとめて財宝を独り占めしてやんよ!」
羽の生えたマッチョの大男が、ポーズを決める。
レッドドラゴン相手でも、物怖じしない。
突き出た下の牙が、得意げに光った。
「レッサーデーモンだな。軽くひねり潰してくれよう」
あれで、下級なのか。
「人間体で、戦うんですか?」
「うむ。ハンデだ」
リムさんの敵ではないらしい。
「へん! 後悔しても知らんぜ」
手加減してやると言われて、デーモンが腹を立てる。
「どちらのことを言うておる?」
そのひと言が、戦闘開始の合図となった。
レッサーデーモンが、手に暗黒物質を作り出す。みるみる膨れあがり、人一人なら軽く黒焦げになりそうな巨大火球へと膨張する。
「げはは! 炭になりやがれ!」
野球のアンダースローの如く、魔族は黒い火炎をリムさんに投げつけた。
秒で、シッポの一撃により打ち返される。
「あぎゃああ!」
哀れデーモンは、自分の技で自滅した。
「さて、お家に帰るんだな。それとも、地獄へ送り返してご覧に入れようか?」
「ひいいい!」
さっきまで威勢のよかったデーモンが、手の平を返して怯えきっている。
「いいえ。ここはボクに任せていただけませんか?」
「ふむ。まあ無駄な殺生は我も好まん」
ボクがお願いすると、リムさんがこぶしを引っ込めた。
デーモンが胸をなで下ろす。
「ケガをしていますし、ここはひとつ、回復の泉の出番と言うことで。あなたもそれでいいですね?」
ボクが尋ねると、デーモンは従った。
相手もただのイキリみたいだ。血を見に来たわけではないだろう。
「一緒に一風呂どうですか?」
「風呂だと?」
「あなたには、ウチが開発したサウナのモニターになっていただきたい」
まず、デーモンには回復の泉を飲ませた。
回復効果を持たせるように、前もって女神に安置認定してもらってある。
「おお、傷がスッキリした」
「驚くのは、まだ早いですよ。サウナに入っていってください」
ここからが本番だ。
「はい撮影スタート」
『どうも、今回はなんと、ドラゴンのねぐらをサウナにしちゃおうという企画です。早速入ってみましょう!』
「うお、あっちい」と、レッサーデーモンがつぶやく。
放置されていた分、蒸気が十分に行き渡っている。
「あー、なんか気持ちいいですね」
シズクちゃんが、ヘナヘナになってイスに腰掛けた。
「小窓だけ開けましょう。酸欠になりそうなので」
蒸気が満ちたことで、サウナが完成する。
「どう、シズクちゃん?」
「なんだか、頭がボーッとしてきました。でも、イヤな気分じゃないですね」
肌をさすりながら、シズクちゃんはサウナを堪能していた。
わずかに肌が汗ばんできている。
ボクも、身体がジットリとしてきた。
服が重くなってきたので脱ぐ。
「なんのためらいもなく脱いだのう?」
「ドラゴンサウナなんて、秘湯マニア垂涎ですから。ハダカで感じないと失礼かなと」
リムさんだって、服はウロコに過ぎない。
つまりは、生まれたままの姿なのだ。
「あっ、そうだ。羽根をパタパタさせてみませんか?」
大きなウチワで仰ぐことで、サウナの効果は増す。
「やってみようぞ。そこの魔族も手伝え」
「ええ~」と、最初は魔族も拒絶していた。
しかし、ドラゴンに圧倒されて渋々の様子で手伝う。
「うわー。これはすごい!」
「最高だね」
シズクちゃんと共に、熱風を全身に感じ取る。
熱風を送り込む従業員をサウナ神と呼ぶけど、サウナ魔族だね。
「でも、ちょっとガマンできないかも」
「そうだね。一旦出ようか」
ボクたちは、サウナ室から外に出る。
「わう、夜風が気持ちいい」
熱々の室内から出た開放感から、シズクちゃんが背伸びをした。
「水の中に入って」
「え? うわ、冷たい!」
流水に足を付けると、シズクちゃんが飛び上がる。
「そーっとだよ。そーっと」
冷えに耐えながら、足を水につけた。
そこからゆっくりと、腰から肩まで。
「よくそんな大胆な行為ができますね」
「我は問題ないぞ」
冷水が恋しかったのか、リムさんはすでに頭まで潜っていた。
「はーあ。なんだか、サウナとやらにいたときより頭がフワフワしておる」
「それが、整うって状態らしいですね」
サウナ好きの友人が言うには、この状態が一番気持ちいいらしい。
身体を冷ました後、ボクはもう一度サウナに入っては水に浸かる。
『えっと、秘湯ライターのカズユキさん、新陳代謝がおかしくなりませんか?』
「オンオフを繰り返すことによって、身体がむしろ整っていくんです」
血管のポンプ作用が、活性化されるからだそうだ。
「見事なり、人の子よ。このような施設を建てて。これなら、我らドラゴンでも管理できようぞ」
「喜んでいただけたなら、なによりです。ありがとうございます」
「そこでどうじゃろう」
「なんでしょう?」
身体ごとこちらに傾かせて、リムさんは告げる。
「ここに、根を張らぬか?」
「我と上のドラゴンは、意識も共有しておるからな」
向こうで寝ているドラゴンに見えている景色や状況は、リムさんにも把握できるという。
外に出ると、黒い影がドラゴンと睨み合っていた。
「ヒャッハーッ!」
財宝を狙う輩が、大空から舞い降りる。
思っていた以上に大きいな。
二メートル以上ある巨漢なら、ボクも冒険者ギルドで見慣れたけれど。
「ここがレッドドラゴンのアジトか。しけてやがんな。オレ様がまとめて財宝を独り占めしてやんよ!」
羽の生えたマッチョの大男が、ポーズを決める。
レッドドラゴン相手でも、物怖じしない。
突き出た下の牙が、得意げに光った。
「レッサーデーモンだな。軽くひねり潰してくれよう」
あれで、下級なのか。
「人間体で、戦うんですか?」
「うむ。ハンデだ」
リムさんの敵ではないらしい。
「へん! 後悔しても知らんぜ」
手加減してやると言われて、デーモンが腹を立てる。
「どちらのことを言うておる?」
そのひと言が、戦闘開始の合図となった。
レッサーデーモンが、手に暗黒物質を作り出す。みるみる膨れあがり、人一人なら軽く黒焦げになりそうな巨大火球へと膨張する。
「げはは! 炭になりやがれ!」
野球のアンダースローの如く、魔族は黒い火炎をリムさんに投げつけた。
秒で、シッポの一撃により打ち返される。
「あぎゃああ!」
哀れデーモンは、自分の技で自滅した。
「さて、お家に帰るんだな。それとも、地獄へ送り返してご覧に入れようか?」
「ひいいい!」
さっきまで威勢のよかったデーモンが、手の平を返して怯えきっている。
「いいえ。ここはボクに任せていただけませんか?」
「ふむ。まあ無駄な殺生は我も好まん」
ボクがお願いすると、リムさんがこぶしを引っ込めた。
デーモンが胸をなで下ろす。
「ケガをしていますし、ここはひとつ、回復の泉の出番と言うことで。あなたもそれでいいですね?」
ボクが尋ねると、デーモンは従った。
相手もただのイキリみたいだ。血を見に来たわけではないだろう。
「一緒に一風呂どうですか?」
「風呂だと?」
「あなたには、ウチが開発したサウナのモニターになっていただきたい」
まず、デーモンには回復の泉を飲ませた。
回復効果を持たせるように、前もって女神に安置認定してもらってある。
「おお、傷がスッキリした」
「驚くのは、まだ早いですよ。サウナに入っていってください」
ここからが本番だ。
「はい撮影スタート」
『どうも、今回はなんと、ドラゴンのねぐらをサウナにしちゃおうという企画です。早速入ってみましょう!』
「うお、あっちい」と、レッサーデーモンがつぶやく。
放置されていた分、蒸気が十分に行き渡っている。
「あー、なんか気持ちいいですね」
シズクちゃんが、ヘナヘナになってイスに腰掛けた。
「小窓だけ開けましょう。酸欠になりそうなので」
蒸気が満ちたことで、サウナが完成する。
「どう、シズクちゃん?」
「なんだか、頭がボーッとしてきました。でも、イヤな気分じゃないですね」
肌をさすりながら、シズクちゃんはサウナを堪能していた。
わずかに肌が汗ばんできている。
ボクも、身体がジットリとしてきた。
服が重くなってきたので脱ぐ。
「なんのためらいもなく脱いだのう?」
「ドラゴンサウナなんて、秘湯マニア垂涎ですから。ハダカで感じないと失礼かなと」
リムさんだって、服はウロコに過ぎない。
つまりは、生まれたままの姿なのだ。
「あっ、そうだ。羽根をパタパタさせてみませんか?」
大きなウチワで仰ぐことで、サウナの効果は増す。
「やってみようぞ。そこの魔族も手伝え」
「ええ~」と、最初は魔族も拒絶していた。
しかし、ドラゴンに圧倒されて渋々の様子で手伝う。
「うわー。これはすごい!」
「最高だね」
シズクちゃんと共に、熱風を全身に感じ取る。
熱風を送り込む従業員をサウナ神と呼ぶけど、サウナ魔族だね。
「でも、ちょっとガマンできないかも」
「そうだね。一旦出ようか」
ボクたちは、サウナ室から外に出る。
「わう、夜風が気持ちいい」
熱々の室内から出た開放感から、シズクちゃんが背伸びをした。
「水の中に入って」
「え? うわ、冷たい!」
流水に足を付けると、シズクちゃんが飛び上がる。
「そーっとだよ。そーっと」
冷えに耐えながら、足を水につけた。
そこからゆっくりと、腰から肩まで。
「よくそんな大胆な行為ができますね」
「我は問題ないぞ」
冷水が恋しかったのか、リムさんはすでに頭まで潜っていた。
「はーあ。なんだか、サウナとやらにいたときより頭がフワフワしておる」
「それが、整うって状態らしいですね」
サウナ好きの友人が言うには、この状態が一番気持ちいいらしい。
身体を冷ました後、ボクはもう一度サウナに入っては水に浸かる。
『えっと、秘湯ライターのカズユキさん、新陳代謝がおかしくなりませんか?』
「オンオフを繰り返すことによって、身体がむしろ整っていくんです」
血管のポンプ作用が、活性化されるからだそうだ。
「見事なり、人の子よ。このような施設を建てて。これなら、我らドラゴンでも管理できようぞ」
「喜んでいただけたなら、なによりです。ありがとうございます」
「そこでどうじゃろう」
「なんでしょう?」
身体ごとこちらに傾かせて、リムさんは告げる。
「ここに、根を張らぬか?」
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