浴衣の王子様

椎名 富比路

文字の大きさ
上 下
1 / 1

イケ女が、浴衣に着替えたら

しおりを挟む
『乱道様! 私の力を感じることができますか?』
「……何となくだがな?」

 日本刀となった我路の柄を握りしめると、腕から肩にかけて纏わりつくように、蒼い炎の様なものが絡みつき、とぐろを巻いている。

 ……これが我路のエネルギーか? 

『では私を抜刀してくれますか? 力が解放されるはずです』

 我路が刀を鞘から抜刀してくれと言う。
 刀から凄い力を感じ、俺に抜刀できるのか不安になるが、右手に力を込め、思いっきり鞘から引き抜いた。

「うおっ!?」
 
 何だこれは!? 刀身が何倍にも伸びて行く。
 これは一体どう言う原理なんだ?
 抜刀した刀は、俺の身長の三倍を超える長さまで伸びた。
 なのに……なんの重さも全く感じない。

『では乱道様? 行きますよ』

「おう!」

 次の瞬間、俺の体が勝手に動く。何だこれ!?
 我路が操っているのか?
 勢いよく向かってくるドラゴンを、ひらりと飛んで交わすと、刀はドラゴンの首を捕らえる。

「えっ?」
 
 刀がカチリっと納刀された。

 次の瞬間。

 ドラゴンの首が大きな体から離れ落ち、俺の目の前にドラゴンの顔が転がる。

 ちょっと待ってくれ!? 何をやったんだ? 
 自分の体なのに、何が起こったのか理解できていない。
 ドラゴンの突進を飛んで交わしたっと思ったら、刀が鞘に戻っていた。
 
『下等生物などに、我が力を使う程もなかったですね』

 嘘だろ? コイツの力はこんなにも強いのか?

「なあああああああああああああああああ!?」

 虚しく転がるドラゴンの頭を見て絶叫する男達。
 おいおいさっきの勢いはどこに行ったんだ?

『さぁ。もう一体も殺りますか』
 
 我路がそう言うと、瞬きをする間もない時間の間に。
 もう一体のドラゴンの頭が、ゴロンっと転がった。

「ヒィヤアアアアアアアアアアアッ!!!!」

 瞬殺されたトラゴンの死骸を見て
 偉そうに言っていた男達は、驚愕し大声で叫ぶ。

 なんせドラゴンが、ほんの数秒で倒されたんだ。
 そりゃそうなるわな。
 俺だって正直、我路が何をやったのか理解出来ていない。

『大した事なかったですね』

 我路がいつの間にがイケオジ姿に戻り、何事も無かったかのように微笑む。
 大した事あったぞ? お前の力がヤバすぎただけだ。

「おい? 俺をどうにかするんじゃ無かったのか? もうドラゴンはいねーぞ?」

 俺は震える男達を煽る。

 捕まえて、稲荷の事など聞かねーとな。
 
 俺は腰を抜かしている男達に向かって歩いていく。
 男達を捕まえようとした次の瞬間。

 また男達が現れた時と同じように、空気が揺れる。

「へ?……消えた?」

 さっきまで目の前にいた筈なのに、男達は姿を忽然と消した。


 
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

幼馴染に毎日召喚されてます

涼月
青春
 高校二年生の森川真礼(もりかわまひろ)は、幼馴染の南雲日奈子(なぐもひなこ)にじゃんけんで勝った事が無い。  それをいい事に、日奈子は理不尽(真礼的には)な提案をしてきた。  じゃんけんで負けたら、召喚獣のように従順に、勝った方の願いを聞くこと。  真礼の受難!? の日々が始まった。  全12話

僕と若葉とサッカーボール  ~4歳年下の生意気な女の子は、親友だったヤツの大切な妹~

くしなだ慎吾
青春
 四年前、十二歳の時に無二の親友を事故で亡くした神村綾彦(かみむらあやひこ)は、それ以来その亡くなった親友の妹である竹原若葉(たけはらわかば)を、自分の妹代わりのようにしてきた。  二人の歳の差は四歳。高一になった綾彦にとって、まだ小六の若葉は子供扱いをする相手。けれど若葉にとっての綾彦は少し様子が違って、兄代わり以上にある程度異性として意識をし始めている様子。物語はそんな二人の年代から始まる。 第4回ほっこり・じんわり大賞にエントリーしています。よろしければ応援お願いいたします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

美術部俺達

緋色刹那
青春
・第7回ライト文芸大賞エントリー中 ・完結済み。番外編「First Grade」は過去話。 〈あらすじ〉  自由ノ星(じゆうのほし)高校美術部には三人の男子がいる。  創作レクリエーションマニア、成宮創介(なるみやそうすけ)。  アニメと漫画大好き、大城太志(おおしろたいし)。  マイナーアイドル狂い、音来響(おとぎきょう)。  三人は美術部でありながら絵を描かず、毎日ゆるっと創作レクリエーションに明け暮れていた。  そんな美術部に、廃部の危機が! マネージャーとして新たに加わった女子部員、麻根路屋 乙女(まねじや おとめ)の指導のもと、美術部らしい活動を仕方なくスタート。  が、彼らには自由に創作できない理由(トラウマ)があった。さらに、マネージャーにもある秘密が……。  バカバカしくも苦しみを抱えた、高校生達による青春コメディ。  バカでいいじゃない? 若人だもの。 〈補足〉 ツイッターの「#創作試験問題」の解答をもとに、長編化したものです。元になった解答(ショートショート)はカクヨムにて掲載中(https://kakuyomu.jp/works/1177354054888660025)。

彗星と遭う

皆川大輔
青春
【✨青春カテゴリ最高4位✨】 中学野球世界大会で〝世界一〟という称号を手にした。 その時、投手だった空野彗は中学生ながら152キロを記録し、怪物と呼ばれた。 その時、捕手だった武山一星は全試合でマスクを被ってリードを、打っては四番とマルチの才能を発揮し、天才と呼ばれた。 突出した実力を持っていながら世界一という実績をも手に入れた二人は、瞬く間にお茶の間を賑わせる存在となった。 もちろん、新しいスターを常に欲している強豪校がその卵たる二人を放っておく訳もなく。 二人の元には、多数の高校からオファーが届いた――しかし二人が選んだのは、地元埼玉の県立高校、彩星高校だった。 部員数は70名弱だが、その実は三年連続一回戦負けの弱小校一歩手前な崖っぷち中堅高校。 怪物は、ある困難を乗り越えるためにその高校へ。 天才は、ある理由で野球を諦めるためにその高校へ入学した。 各々の別の意思を持って選んだ高校で、本来会うはずのなかった運命が交差する。 衝突もしながら協力もし、共に高校野球の頂へ挑む二人。 圧倒的な実績と衝撃的な結果で、二人は〝彗星バッテリー〟と呼ばれるようになり、高校野球だけではなく野球界を賑わせることとなる。 彗星――怪しげな尾と共に現れるそれは、ある人には願いを叶える吉兆となり、ある人には夢を奪う凶兆となる。 この物語は、そんな彗星と呼ばれた二人の少年と、人を惑わす光と遭ってしまった人達の物語。        ☆ 第一部表紙絵制作者様→紫苑*Shion様《https://pixiv.net/users/43889070》 第二部表紙絵制作者様→和輝こころ様《https://twitter.com/honeybanana1》 第三部表紙絵制作者様→NYAZU様《https://skima.jp/profile?id=156412》 登場人物集です→https://jiechuandazhu.webnode.jp/%e5%bd%97%e6%98%9f%e3%81%a8%e9%81%ad%e3%81%86%e3%80%90%e7%99%bb%e5%a0%b4%e4%ba%ba%e7%89%a9%e3%80%91/

どうしてもモテない俺に天使が降りてきた件について

塀流 通留
青春
ラブコメな青春に憧れる高校生――茂手太陽(もて たいよう)。 好きな女の子と過ごす楽しい青春を送るため、彼はひたすら努力を繰り返したのだが――モテなかった。 それはもうモテなかった。 何をどうやってもモテなかった。 呪われてるんじゃないかというくらいモテなかった。 そんな青春負け組説濃厚な彼の元に、ボクッ娘美少女天使が現れて―― モテない高校生とボクッ娘天使が送る青春ラブコメ……に見せかけた何か!? 最後の最後のどんでん返しであなたは知るだろう。 これはラブコメじゃない!――と <追記> 本作品は私がデビュー前に書いた新人賞投稿策を改訂したものです。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

処理中です...