上 下
73 / 92
第五章 敵の総大将が動き出しました!

第74話 またあなたですか!

しおりを挟む
「もう後がないこの国を、シングリアは立て直してやると言ったんだ! 俺の計画を邪魔しやがって!」

「救えないね」

 ギルドマスターに、無数の矢が突き刺さる。

 誰が指示を出すでもなく、自然と誰しもの手が動いていた。

 無数の矢に貫かれ、尚もギルドマスターは虚空に手を差し出す。

「俺は、クテイを救おうとし」

 もう戯れ言は聞きたくないと思ったのか、トドメを刺したのはノドへの一撃だった。

 皆が哀れなギルマスの最期を見送る中、リッコは、矢の飛んできた方角を見つめる。

 すかさず、リッコは回復魔法を唱えた。
 ギルマスの傷がみるみる癒えていく。

「こんな男を助けてなんになる?」
 
 ソランジュが呼びかけるも、リッコは答えない。
 
 

 息も絶え絶えだったギルマスの蘇生に、なんとか成功した。

 息も絶え絶えだったギルマスの蘇生に、なんとか成功した。

「す、すま……ぐおっ!?」
 直した相手の土手っ腹に、リッコは蹴りを食らわせる。
 ギルマスが壁に叩き付けられ、血を吐く。

 見ていた周囲の人々が、その光景に震え上がっていた。

「あなたを浄化します。拳で」
 リッコは制裁の手を止めない。


「聖騎士《パラディン》パーンチッ!」
「むほぉ!」
「聖騎士キッーク!」
「ぐはあ!」


 手は抜いている。
 だが、立て続けに打ち込んでいるので、歴戦のギルマスもさすがに参っているようだ。

「これでも浄化できませんか? 髪の毛まで悪に染まってらっしゃるんでしょうかね?」
 虫の息であるギルマスに、尚も拳を叩き込む。

「いいですか? パラディンは他の職業と違って、独自の神を信仰しています。たとえあなた方の神様がお許しになっても、わたしの神が許しません!」

「やめてくれ! 勘弁してくれ!」

「じゃあ、洗いざらい吐きましょう」

 リッコはギルマスの胸ぐらを掴んだ。

「今までの悪事と、あなたの手にした役得、黒幕の正体、全部です!」

 相手を脳天を地面に叩き付ける。

「楽に死ねると思ってはいけません!」
 気絶した相手に向けて、リッコは吐き捨てた。



「意外と熱い性格なんですね、リッコさん。もっとドライな方かと」
「卑劣な手段で人を傷つける輩に、人権はないからね」


 自分でトラブルを招いておきながら、なおも保身に走る男に対し、頭にきていた。それに……。
『カーッ! つっかえねえー!』


 ギルマスの口から、ウィルオウィスプのビフロンスが吐き出される。

 リッコがギルマスを痛めつけたのは、ビフロンスをギルマスの身体から追い出す必要があったからだ。

『オレが反撃に来るってよく分かったな!』
 ビフロンスは、大分小さいサイズになっていた。

「矢が飛んできた方角が、大聖堂からだったので、もしやと」

『よく見てやがるぜ。だが、ここからが本番だ! グシオン軍の中でも知将と呼ばれたこのオレを敵に回したことを後悔させ』

 腰の入ったジョーイの棍棒落としが、ビフロンスにクリーンヒットした。魔族が語っている間、ずっと廃語から忍び寄り、棍棒を振り上げていたのだ。

「おしゃべりはそれまでですよ、悪霊」

 リッコの何倍も浄化能力の高い一撃である。
 上位魔族の悪霊でさえ、ひとたまりもないだろう。

「冒険者ギルドは、即刻この男の家宅捜査と、違約金の用意を。いいですね」

 ギルドの動きは早い。

「内政の段階で、完全にやられているワケではなさそうだ」

「だといいのですが」

 リッコの不安が、ジョーイの一言で的中する。

「そういえば、お屋敷は?」


「しまった!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

邪竜転生 ~異世界いっても俺は俺~

瀬戸メグル
ファンタジー
日本で社畜をやっていた名も無き男は、ある日情けなく事故死した。しかし目を覚ませば異世界で邪竜になっていた。男は思う。「あれ、これ働かなくていいんじゃね?」 数年の時が過ぎた。男は中身は人間のまま、気ままな邪竜ライフを送っていた。しょっちゅうウザい冒険者どもがやってくるが邪竜は強いので問題ない。と思っていたのだが、ある日調子に乗りまくったやつらが森にやってきて――

追放された最強令嬢は、新たな人生を自由に生きる

灯乃
ファンタジー
旧題:魔眼の守護者 ~用なし令嬢は踊らない~ 幼い頃から、スウィングラー辺境伯家の後継者として厳しい教育を受けてきたアレクシア。だがある日、両親の離縁と再婚により、後継者の地位を腹違いの兄に奪われる。彼女は、たったひとりの従者とともに、追い出されるように家を出た。 「……っ、自由だーーーーーーっっ!!」 「そうですね、アレクシアさま。とりあえずあなたは、世間の一般常識を身につけるところからはじめましょうか」 最高の淑女教育と最強の兵士教育を施されたアレクシアと、そんな彼女の従者兼護衛として育てられたウィルフレッド。ふたりにとって、『学校』というのは思いもよらない刺激に満ちた場所のようで……?

退屈な人生を歩んでいたおっさんが異世界に飛ばされるも無自覚チートで無双しながらネットショッピングしたり奴隷を買ったりする話

菊池 快晴
ファンタジー
無難に生きて、真面目に勉強して、最悪なブラック企業に就職した男、君内志賀(45歳)。 そんな人生を歩んできたおっさんだったが、異世界に転生してチートを授かる。 超成熟、四大魔法、召喚術、剣術、魔力、どれをとっても異世界最高峰。 極めつけは異世界にいながら元の世界の『ネットショッピング』まで。 生真面目で不器用、そんなおっさんが、奴隷幼女を即購入!? これは、無自覚チートで無双する真面目なおっさんが、元の世界のネットショッピングを楽しみつつ、奴隷少女と異世界をマイペースに旅するほんわか物語です。

処理中です...