フリーター、魔王候補の集まる女子寮の大家になる

椎名 富比路

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第六章 フリーター、地球人魔王と文化祭を満喫する

第47話 最終話 ダンジョン完成

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 ドナが建てていた、崖ダンジョンが完成した。

「ようやく、こちらのダンジョンも完成したな」

 あとは、居住者を待つばかりである。

「それに関して、オレに提案があるんだが?」

「わかったカズヤ。お前に任せようじゃないか」

「実は、アンネローゼにそのまま使ってもらおうかな、って」

 アンは元々、このダンジョンの玄室を使用していた。だから、このダンジョンの光景なら熟知している。だったら、そのまま使ってもらえばいいのでは、と考えたのだ。

 事実、アンはもう素顔を晒して玄室のボスモンスターを操っている。

「いいじゃないか。気心のしれている相手なら、ドワーフ共も喜ぶだろう」

 ドナの言う通り、ドワーフたちもオレの意見に賛成してくれた。

「それだけじゃない。他のメンバーにも扱ってもらおうかなって」

「例えば?」

「まず、地上階なんだが、ここに道の駅を置く」

 ブヒートくんの屋台を置けるスペースを、配置するのだ。

「たしか魔王は分裂できるんだよな? ここにシルヴィアの幻体を配置する」

 こうして、『旅の準備も可能なボス部屋』みたいなポジションにする。

「ふむふむ」

「さらに、崖の内部にも玄室が余っている。そこにはドロリィスの幻体などを配置する」

 となると、ボス前のいい腕試し相手として、ドロリィスがいい仕事をするのだ。

「で、シノブが開発したトラップを各所に配置して、難易度を上げるんだ」

「フィーラは、どうするのだ?」

「最終の砦として、立ちはだかったもらう」

 現在フィーラは、オレの部下になっている。そのはじめの仕事が、幻体で冒険者の行く手を遮ることとした。

 また、最初の道で右に行けばドロリィスと最初に戦い、左に行くとフィーラが腕試しの相手になる。その場合、強さは調節されるような仕組みにするのだ。

「最初に戦ったのがフィーラなら、ラスト手前の相手はドロリィスになる」

「ふむふむ」

 あれから、アンネローゼの戦闘成績は二年生の中でもトップクラスに成長した。もはや、どんな冒険者に見せても恥ずかしくない。

「ありがとうございますわ。カズヤさん」

「いや。アンはがんばっていたからな」

 その努力に報いるなにかを、してやりたかったのだ。

「でも予算は結構ぶっ飛ぶぜ。いいのか?」

「もちろんですわ。両親からお金を前借りして、この崖を買わせていただきます」

 両親は買い取ると言っていたらしい。が、アンは出世払いと、あくまで自腹を切りたがった。

「すごいのは、カズヤさんです。コンビニで幼い頃の魔王ドナを助けてから、すごい成長率ですわ」

 アンが、妙なことをいい出す。

「ん? どういうことだ?」

「ご存知ないのですか? あなたがサスマタで魔物から助けた少女こそ、幼少期の魔王ドナなのですわよ?」

 マジか。

「おいドナ。今の話は、本当なのか?」

「真実だ。だから私は、お前を自分の部下として、ずっと保護していたのだ」

 ドナのいる時空は、時間の流れが地球とはまるで違うらしい。

 まだ魔王ですらなかった頃のドナは、修学旅行先の地球で道に迷ってしまった。そこで、ドナの家を妬む魔物どもに狙われたらしい。

 そこへオレが駆けつけ、無事に助けたのだという。

「冒険者善子ヨシコを通して、お前が善子のいとこだとわかって、面倒を見ることにしたのだよ」

 そんないきさつが、あったとは。

 どうして魔王なんて高位の存在が、オレなんかを部下にしたんだろうと思っていたが。

「本当に、世話になった。お前がいなければ、私はこの地に立ってすらいなかっただろう」

 ドナが、オレに頭を下げた。

「お礼だなんて、やめてくれ。あんたらしくもない。それに、無事だったならそれでいいじゃねえか。いつもどおり、振る舞ってくれよ」

「う、うむ」

 照れ隠しのつもりか、コホンとドナが咳払いをする。

「まあ、ええ。アンちゃんのダンジョン購入記念に、なんか作ろうかのう」

 シルヴィアが、エプロンを羽織った。

 フィーラが同じように、野菜やお肉を準備し始める。

「先輩、なにをします?」

「もち、焼きラーメンじゃ」

 ドロリィスが果物をミキサーにかけ、ドリンクを作った。

 シノブが、できあがったドリンクを冷やす。

 アンネローゼは、盛りつけをした。

 みんな揃っていただきます……という矢先である。

 ヴィル女校長のベイルさんが、どこからともなく出現した。

「あの、また問題児が増えてしまって。新しい寮を見繕っていただきたいのですが」

 オレたちに頼みごとをする。

 ドナがオレの腕をヒジでつつく。視線は、ラーメンに向いたまま。

 オレが、ベイルさんの応対をしていいってことだよな?

「承りましょう!」

(おしまい)
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