フリーター、魔王候補の集まる女子寮の大家になる

椎名 富比路

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第六章 フリーター、地球人魔王と文化祭を満喫する

第44話 ダンス with 魔王

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 4人が着地すると、小鳥はもとの大きさに戻って、キュッリッキの肩にとまった。

「ご苦労様」

 キュッリッキに労われて、小鳥は嬉しそうにピピッと鳴いた。

「さて…ここはどのへんでしょうか」

 ブルニタルは早速地図を広げて、だいたいの位置の目星をつける。

「報告書にあったエグザイル・システムのようなものがある入口は、ここからだいぶ近いようです。恐らく見張りの兵がいる筈ですから、慎重に進みましょう」

 3人とも頷いた。

 麓にも山にも、身を隠す木々が生えていない。大きな岩もほとんど見当たらない。全てが剥き出しなので、敵味方丸見えだった。それに、まだ日中で明るく、見晴らしがいい。

「ねえ、周りの様子を確認するために、偵察出しておこっ」

 そう提案すると、キュッリッキは何もない方角を凝視する。黄緑色の瞳に散らばる虹色の光彩が、より強い光を帯びていった。

 キュッリッキが片手を前方に差し出す。そして、手招きするように掌を広げた。

「おいで」

 そう一言だけ告げると、掌の上に、無数の小さな白い綿毛が召喚された。

「タンポポの綿毛……?」

 ブルニタルはキュッリッキの肩ごしに、掌の上に揺蕩う白い綿毛を凝視した。

「この子たちに名前はないの。アルケラで名前があるのは、フェンリルみたいに神様たちだけ」

 白い綿毛たちはふわりふわりと宙を舞ながら、フェンリルを囲むようにして輪を作った。フェンリルは身じろぎせず、目だけを動かし綿毛たちを見ている。

「タンポポの綿毛よりも、ずっとずっと優秀なんだよ」

 キュッリッキはブリニタルにニヤリと笑ってみせると、しゃがみこんでフェンリルの周囲を舞う綿毛たちに告げた。

「この辺りに、アタシたちに敵対する武装した人間が居ないか、しっかり見てきてね」

 綿毛たちは輪になったままふわ~っと宙に浮き上がると、パッと羽虫のように飛んで四散した。

「確かに、綿毛はあんな飛び方はせんな」

 ガエルは面白そうに、口の端を上げて笑った。メルヴィンも感動したように頷く。

「3人とも、これを頭に乗っけてくれる?」

 キュッリッキの掌には、3つの綿毛がフカフカ浮いていた。

 首をかしげるガエルとメルヴィンと違い、ブルニタルは感極まった表情で綿毛をつまむと、頭の上にそっと乗せた。

「恐らく四散した綿毛たちの見た映像が、この綿毛を通じて、一種のテレパシーのようにして、私たちの脳裏に浮かぶんですよ。ですよね?」

「ぴんぽーん。正解」

 すぐに理解してもらえて、キュッリッキは嬉しそに微笑んだ。

「なるほど~。それは便利ですね」

 メルヴィンとガエルも、それぞれ頭に綿毛を乗せる。

「風で飛んでったりしないか? こいつは」

 ガエルは黒い頭部に、小さな糸くずのように乗っている綿毛を指す。

「だいじょーぶ。タンポポの綿毛じゃないからね。見た目はちっさくっても、ちゃんと意思があるから」

 キュッリッキは自信満々に、太鼓判を押した。
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