フリーター、魔王候補の集まる女子寮の大家になる

椎名 富比路

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第六章 フリーター、地球人魔王と文化祭を満喫する

第43話 新入社員 フィーラ

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 フィーラがドナの会社に入れば、シルヴィアたちが卒業しても交流できる。

 シノブが気をもむ必要もなくなるだろう。

「どうだ? やってみる価値はあると思うが……」

「そうですね。わたしは、魔物もなつかないので、ダンジョン運営に不安があったのです」

 教師に相談に乗ってもらっても、『実績を積むしかない』と言われたらしい。でも、どうやって実績を作ればいいのか、フィーラにはわからなかった。

「他の魔王に雇ってもらうのも、迷惑でしょうし」

 たしかに、いくら『未経験OK』といっても、結局は経験者が即戦力として採用される。たいした実績も残さずにやめていく未経験者が多い。

「だったらなおさら、ウチでモンスターともパイプを繋いで、魔王として自立していくのがいいのかなって思う」

「ですよね。魔王ドナ様とも、対話してみます」

 そう話し合っていると、フィーラの後ろにドナが現れたではないか。

「私の会社がどうしたのだ?」

「ああ。ドナ。実は相談があるんだ。この際、フィーラを雇ってみないか?」

 フィーラが魔王業で行き詰まっていることを、ドナに話してみた。

「ふむ。それで私の会社で使ってみるかと?」

「虫がよすぎるのは、わかっている。しかしこのまま魔王業務をやろうって思っても、本人の意向から考えて難しいんだよな」

「私が雇ったとしても、『虎の威を借る狐』になってしまわまないか?」

「懸念材料は、そこだよな」

 仮にフィーラがドナの下で働くとなって、モンスターが部下になったとする。けれども結局、そのモンスターは、ドナの脅威から従っているに過ぎない。

 それを、ドナは心配している。

「経験を積むのは、いい考えだ。フィーラの性格からして、どこでも成功しそうだしな。しかし、どこまでいっても自分の意思がないことになりそうだ。今のままではな」

「はい」

 フィーラも、真剣に聞いていた。自分のことだしな。

「まずは、自分で決めるんだ。何ができて、何がしたくて、何ができないのかはわかっているはずだ。甘ったれるなと、言われることもあるだろう。しかしお前たちの年齢だと、甘ったれるくらいがちょうどいいんだ。失敗からどんどん学べばいいのだ」

「ありがとうございます。魔王ドナ様」

「まあ、つべこべ言わずに、ウチで働いてみればいいだろう。バイトでいいなら、雇ってやろう」

「本当ですか?」

 だよな。フィーラなら、即戦力だぜ。

「ただし、合わないと思ったら、即辞めるんだ。大変な仕事だからな」

「わかりました。どんな仕事でも構いません」

「ウチは不動産屋だ。場合によっては、アコギな仕事もする。覚悟はいいな?」

「はい」

「気に食わないことがあったら、自分で改善してみるんだ。お前ならできるさ」

「がんばってみます」

 よかった。とりあえず、フィーラはこれでいいみたいだな。

「それはそうと、カズヤ。お前、なにか忘れていないか?」

「は?」

「私とのデートはどうした?」

 あんたもデートしたかったんかい!

「これから後夜祭で、キャンプファイヤーがある。踊るぞ」
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