フリーター、魔王候補の集まる女子寮の大家になる

椎名 富比路

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第六章 フリーター、地球人魔王と文化祭を満喫する

第39話 今日は、お手伝い禁止

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 強引に、オレはフィーラを連れ出す。

「どういうことでしょう、カズヤさん。デートだなんて」

「実は、シノブに頼まれてな。お前さんの相談に乗ってやってほしいと」

「わたし、悩みなんて」

「お前だけなんだよ。ダンジョンの目星がついていないのは」

 フィーラが、立ち止まる。

「わたしは、みんなのお役に立てれば。自分のことなんて」

「それだと、余計にユーニャさんを心配させてしまう!」

「……っ」

 やはりフィーラも、心得ているようだ。自分がはっきり目標を掲げないせいで、ユーニャさんが気をもんでいることを。

「だがそうはいっても、すぐには決められないだろ? 相談に、うってつけのやつがいる。会いに行こう」

 オレはフィーラを連れて、アンネローゼがいる二年生のクラスへ。

「あと、今日はお手伝い禁止な」

「はい」

「人のことは、人に任せるんだ」

 アンネローゼのクラスは、【サムライ茶屋】という催しをしていた。武士やニンジャの格好をした、給仕がいる。

「いらっしゃいませでござるですわ、ニンニン」

 ミニスカ網タイツニンジャのアンが、お茶とお菓子を持ってきてくれた。いつもはパーカーや包帯で顔を隠しているから、ニンジャ役はお手の物のようである。

「おう。ありがとうな。アン」

「いえいえニンニン。フィーラちゃん共々、楽しんでいってほしいでござるですわニンニン」

「待ってくれ。実は、相談に乗ってやって欲しいんだ」

「ニンジャはなんでもしっているでござるですわ、ニンニン」

 アンが、オレたちの席に座った。

「お前、ダンジョンというか、玄室を持っているよな?」

 オレがドナの部下として、ダンジョンの大家に着任したときのことである。アンネローゼはオレから、玄室を買った。今もそこを拠点として、自身の腕を磨いている。

「アンの観点からして、シーラにどういったダンジョンがオススメか、アドバイスしてやってもらえないか? お前の意見でいいんだ」

「まずは、フィーラちゃんがどうなさりたいのか、お聞きしたほうがいいのではないでしょうか……おっと、ニンニン」

 一瞬、アンはキャラを見失いかけていた。

「わたしですか? 自分がどうしたいのか、という質問が、一番困ります」

「それだけ、あなたが他人の顔色を伺いながら過ごしていらした、ということですわ。ニンニン」

 かなり、気に入っているな、その口グセ。

「ご自身で、よく思い起こしてみなさいな。あなたは今まで、自己決断をしたことなんて、ほぼなかったのでは? 誰かに言われるままに、動いていたかのような」

「はい。そんな気がしますね」

 さすがアンネローゼだ。よく人を観察している。ともに生徒会をしてるからか、フィーラの人となりをよく理解していた。また自立心が強いのもあって、控えめなフィーラを放っておけないのだろう。

 最初の相談相手として、適任だ。
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